31 大人のお店
ミヤコ曰く ここは二番街と言われる場所らしい
俺達が行くべき場所はその隣のもうちょっと明るい場所 俗に言うメインストリートだ
名前の響きからしても 早くそこへ行きたいと
駄々をこね気味に俺は足を踏み込んで ミヤコを前に前に押し出していた
「……」
「着いたけど…… そろそろ休憩にする?」
「……うん」
そう言われて連れて行かれた場所は
外からでも聞こえるワイワイ賑わう木造の大きな建物
淡く輝く青白い光を纏う黄金の龍がシンボルなのか
棒の天辺や通行人が目に入る看板には大きくそれが描かれていた
「ここで休むの?」
「人が多い方が楽しいでしょ?」
意外な返答だった
あんな辺鄙な森の奥に住んでいるのだから
てっきり静かな場所を好んでいるのかと
「いらっしゃぁせ~~~!!」
「二名で!」
「二名様ですね! こちらへどうぞ!!」
ここはギルドという場所らしいが
昔漫画で読んだような楽しそうなところには見えなかった
自分達を気にも留めずに昼間からドンチャン騒ぎしている連中もいれば
睨みを利かせているのか 森の怪物達と同様 自分達の縄張りを守る目が光っていた
カウンター席に案内されると
ミヤコは熟れた振る舞いでバーのマスターに注文を促すと
貰ったおしぼりを俺にも渡してくれた
どうやら俺が緊張しているのはお見通しらしい
「こういうお店は苦手? お兄ちゃん?」
「……べ 別に! 初めて来たから慣れてないだけだよ」
「フフフ…… ちょっと意地悪しちゃったなぁ……」
ちょっとムッとしてしまった
子供扱いされるのは嫌い の筈なのだが
カウンターの椅子に座るミヤコの姿はなんと言うか
いつもよりも大人の女性って感じがした
自分が知らない彼女の一面 というよりは店の雰囲気なのだろうか
「……ミヤコはいつもここに来るのか?」
「うん…… たまには人との交流も大事だからね
森の中でずっと一人でいると いざというときに会話出来なくなっちゃうからさ
自給自足なら何の問題も無いんだけど ほら畑を作れる場所でもないじゃん?」
「……一応僕が居るようになったし
前よりは賑やかになったと思うんだけどなぁ」
「そうだねぇ! 人一人が増えるだけで毎日がイベントみたい……
私のもとへ来てくれて嬉しかったよお兄ちゃん!」
「……う うん」
特に気にすることでも無いのに
変に確認を取っている自分が女々しくて腹が立っていた
勿論こういう場での女性との会話なんて俺は知らない
正解を考えても恥ずかしい言葉しか思い浮かばないだろう
しかしそれは俺自身が俺自身を子供と認識してるからであって
取り敢えずテーブルに出されているジュースにすら怒りを覚え
自棄になってガブ飲みする俺の姿を
相当喉が渇いていたんだろうなくらいしか見ていないミヤコにも
つまり全てに於いて連鎖的にイライラが溜っていた