29 ダンジョンの入り口
川の水から伝って 全身に電撃を食らった巨熊
とミヤコは数秒間静止していた
ちなみに自分自身も川に浸かってた為
他と比べて身体が弱い俺は気絶しながら流されていた
目が覚めるとミヤコが
お馴染みのキャンプ一式をセッティングしている
全身が麻痺しているのか起き上がることは出来なかったが
辺りを見回せば とても落ち着いてはいられない
『おっ!! 心晴が起きたぞ!!』
一匹の子分熊が周囲に知らせた
ミヤコはシチューを持ってこちらに歩み寄ってくる
「僕…… アイツを倒せたの?」
「う~~ん…… 現実はそう上手く行かないかなぁ」
木の匙でフゥフゥ冷ましてくれる彼女は
丁寧に俺の口へと運んでくれていた
そんなご褒美を与えられている中
割って入ってくるKYな熊野郎はアイツだった
『元気そうでなによりだぜぇ!!!!
さぁリベンジマッチだぁ!!!!』
「うるさい!」
殴りかかる巨熊の爪先を
ミヤコは木の匙で軽くいなし
ワンピースのスカートを手で上げ
強靱な素足で後ろ蹴りをかました
『『『『『 お……! 親分~~!!!! 』』』』』
その質量で宙を舞う巨熊
身を案じる子分達は落下する彼の下敷きに
「邪魔……
はいお兄ちゃん! あーん!」
「っ……!!」
圧倒的な巨体を前にして何も出来なかったあの熊を
一撃で仕留められてのびている情けない姿に絶句していた
顔が固まる俺の頬を匙で突っつくミヤコは
口に合わなかったのかなと不安がっている
今日は祝杯だった
なにせもう 気付けば森の外でキャンプしてたのだから
これ以上興奮を覚えるキャンプは無い
ゴールを目前にして飲むホットミルクの美味さときたら
汗水垂らして飲むものとはまた別格だった
良い夢を見れる 身をもって確信を得られる
この時の自分は成長したんだと
この森の名は【ヌコの森】
小さな国の郊外に位置する人は近寄らぬ険しい場所だ
俺は今 その入り口にいる
改めて見る大きな樹木は朝日すら隠して
暗くジメジメとした湿地で 大きなキノコに乗って行き先を確認
ミヤコが巨熊に求婚を迫られている中で地図を広げ
行き先をしっかり自分で確認する
「さ! 町へ行きましょお兄ちゃん!!」
「この…… 【エレクトリシティー】ってところ?」
「そう! ここら一帯では唯一の!
フェルスキア共和国の【ブラン領城下町】だよ!」
「巨熊はどうしたの?」
「ハッ倒してきたから大丈夫!!」