2 観察は何を学ぶ
宿題で一番苦手だったのは絵日記だった
五教科の問題集は最悪答えを写せば何とかなる
親戚のおじさんやおばさんにバレては こっぴどく叱られていた
だけど日記となればそうもいかない
誰かのを写したとしても すぐに先生にバレて叱られるからだ
そんな俺が急にやる気を出したのは この世界に来て間もないこと
「……ミヤコは猫と人を合体したようなもの
絶対に…… 絶対に猫の仕草をする筈!!」
補足すると俺は猫好きだった
あるあるかも知れないが 学校でハブられていると
大体友達は人間以外だったりする
野良の黒猫を懐かせては 使い魔が出来たと喜んでいた
「ミヤコを使い魔に…… そしたらどうしようかな」
大人になればあれやこれやと妄想は豊かになる
だがこの頃の俺は12才だ
「料理してもらう…… 買い出しに行ってしてもらう……
掃除してもらう…… 膝枕してもらう……
……駄目だ! 全部常にミヤコにやってもらってる!!」
未発達で切り開けない想像は苦でもある
そんな頭を抱えているとき
洗濯物を干していたミヤコの額には一滴の雨粒が
「ウソ~~ せっかく物干し竿に干し終わったのに~~
あっお兄ちゃん! 濡れるから早く中に入って!」
慌てて屋内に避難する
俺を優先して後回しに入って来たミヤコはずぶ濡れだ
そのチャンスを俺は見逃さなかった
「ハァ…… 急に降るんだもんな~~ 今タオル持ってくるから」
水滴が残る手の甲をペロペロと舐めていた
ミヤコの舌は猫のように細長かった のはどうでもよくて
胸辺りの透け具合が 自分の目を釘付けにしていたのだった
「え…… エロ……」
生まれて初めて 道端に落ちている薄い本の
エロという真の意味を理解した瞬間だった