26 最終関門
母鳥は挨拶を済ませて帰っていく
『子供ちゃんの試練に水を差して悪かったわね!』
「大丈夫だよ~ むしろ本番はこれからだし!」
『……そうね 実質この森で最強だし〝アイツ〟』
地面を突く様に頭を下げて巣に戻る母鳥を見送るミヤコ
彼女が自分の方を向けば さっそく反省会のはじまりはじまり
「本来なら失格なんだけどぉ~~? 続けたい?」
「……うん!」
「ふん~~ まぁいいでしょう 大目に見ます!」
「ぃよし!!」
「でも忘れないこと!!
出合頭がミケちゃんじゃなければ一瞬でお兄ちゃんは……
巣の子供達の餌になっていたんだからね!?」
「……そんときはミヤコが助けてくれたの?」
「…………」
「??」
「試験終わるまで言~わない!!
お兄ちゃんに危機感無くなったら困るもん!!」
一足先にお布団で寝るミヤコ
身体能力は獣レベルだし 普通猫は夜行性だ
彼女が寝る時は彼女なりの気遣いなのだろう
ミヤコは心配してくれている
気が気ではないのが伝わってくる
何故かといえば 俺のお腹に回して眠るミヤコの手が
少しばかり震えていたからだ
朝になればいよいよ最終試練だ
三つ目の怪物が領土を守っているこの森を外壁と言っても良い
だけどこの時の俺は 正直死ぬかもしれないと思っただろう
『外界の子供が迷い込んだぞぉ!!!!』
『柔らかい肉じゃぁ!!!! 俺のもんやでぇ!!!!』
『早いもん勝ちじゃボケァ!!!!』
木を揺らし 手を激しく叩いて出迎えるはここの住民達
しかしそれはけして歓迎されているとは思え辛い
挑発に挑発を重ねて獲物を煽る まさに刑務所の囚人の如く
『どけてめぇら……』
自分が恐怖を感じていた大熊達を一振りで薙ぎ払い
その数倍のデカさを誇る巨熊が棍棒を肩に掛けて現れた
『……おぅ 誰かと思えばミヤコじゃねぇか?』
「……」
『どうだ? 俺の女になる気になったか?』
「種が違うでしょ? 冗談は図体だけにして下さらない?」
『そっか…… 割と本気だったんだがなぁ……
お前程の猛者となれば 俺の夜の相手が務まると思ったんだがなぁ~』
棍棒で辺りの木々を一掃し 見晴らしの良いフィールドが出来る
質量に見合わないジャンプで宙を舞う巨熊は
尻を着く俺とミヤコの目の前に落下して見せて
分かり易い威嚇を放ってきた
『この女の相手は俺だ!!! 連敗記録を今日こそは塗り替えてやる!!!!
ガキはてめぇらの好きにしろ 掟通り早いもん勝ちだぁ!!!!』
『『『『『 グォォォォオオオオ!!!! 』』』』』