25 母性本能
『…………』
「あっ…… こんばんわです……」
『…………』
「あっあの! 実は僕…… 道に迷ったんですけど……」
膠着状態
だけど言葉は通じているようだ
不思議と思ったのは何故か安心感
無駄な恐怖だと知ったのは
浅い溜息を吐く怪鳥 いや母鳥だった
「縄張りと縄張りの境目まで行きたいんですが……」
『…………付いておいで』
鳥の足は見れば見るほど逞しい
母鳥の羽毛の影に隠れながら
目の前が見えない中で歩き続けて気が付けば
「あら……?」
焚き火に魚を炙らせ
寝床の準備をしていたミヤコは驚く
「ミケちゃ~~ん!!!!」
『ミヤちゃ~~ん!!!!』
「『 久しぶり~~!!!! 』」
小さな両腕と大きな翼を広げ合い
おそらく俺がやれば圧死するであろう熱いハグが交わされた
「産休に入ったんだよねぇ~!?
暫く会えなかったけど子育て順調~??」
『ホント手が掛かって安眠出来ないわ~~
四つ子よ四つ子!? ヤンチャな娘達で毎日がてんやわんや!!』
「子供の名前は確か……
アエロー オーキュペテー ケライノー ポダルゲー
皆生まれ立ての頃よりは大きくなってるんでしょうね~~」
『もうホント巣から落ちた時には肝が冷えたわ~~
次落ちたら助けませんよと怒鳴り散らしたのが良い思い出ね!』
「あっ…… そういえば蛇の領地に侵攻する件
ごめんなさいね~~ 色々事情があってさ~~」
『大丈夫大丈夫!! ウチが身動き取れないのを良いことに
下のバカ共が勝手にしたことだからさぁ~~
お灸据えられて得だと思わせといたわよ!』
「あっ…… あの~~……」
肩身狭く焼き魚をモシャモシャ食べている俺を
蚊帳の外にしていたミヤコはハッと気付いた感じで謝ってきた
「紹介するねミケちゃん! こちら雲雀心晴君!
私のところで一緒に住んでるの!」
『ミヤちゃんとこの子なのねぇ
家に持って帰って自分の子供にしようと思ってたわ!!
先に拾われていたのね醜いアヒルちゃん』
「そしてお兄ちゃん! こちらが〝ミーケバード〟のミケちゃん!
ここら一帯を縄張りに持つ怪鳥達の雌長
今子育てしてて本能とストレスで凶暴になってるから気を付けようね!!」
『やっだ~~んミヤちゃん脅さないの!
これでも気品溢れる霊鳥の頂点で通ってるんだからねぇ
ウチの娘達に近付かない限り無惨に食い殺したりしないわよ~~!!』
「『 アッハハハハハハ!!!! 』」
「ハハ…… ハ……」
年上のお姉さん方がトークに熱を生み始めたら
俺みたいな奴は置いてきぼりにされるんだなと悟った