24 第二関門
怪鳥の巣は主に山の上
高い所に住処を置いては外敵から小鳥を守っている
大蛇を撒いた俺の次なる試練は〝隠密〟が試された
地上を歩くだけの二人にとって 空の襲撃者からは格好の餌食
故に足音を立てないというのはこちらが敵だと教えているもの
ぶっちゃけて言えばナメられているのだ
「うぅ~~?」
「足のペースを上げないと置いて行くよお兄ちゃん」
「視線がいっぱい…… あちこちから見られている気がする……」
「見られてますよ」
「っ……!」
矢の如く巨大な眼光が 雨の様に突き刺さる視線に
物理的な重みが加えられている様で
息が詰まり 一歩一歩進む足は普段以上の重石に感じる
ミヤコはというと 周りに流されない人間の如く
軽やかに されど静かにスタスタと先に進んでいた
「待ってよミヤコ!」
「リタイアってこと?」
「違う…… 違うけど……」
「ほらもう少しで次なる森の境だよお兄ちゃん!!」
涼しい顔で応援はしてくれるものの
行動はまさに鬼畜の所業
声は優しいのに それ以外はけして甘やかさないという
確固たる滅私 忠実なるそれは俺を鍛え上げる為だろう
自分が町へ行きたいという願望を 彼女は真摯に向き合ってくれている証拠だ
だがしかし 迷った 迷ってしまった
ゴール間近になって分かったことは
一つの怪物達の縄張りを越えるのに一日を要するということ
ここで驚くのはミヤコは一日で森を抜けて帰って来たという事実
こんな事もあろうかと ミヤコからは予め特殊なコンパスを受け取っていた
普通の物とは違って このコンパスはミヤコがいる場所を指し示している
名付けて〝唾を塗られた者〟らしい
磁石とはまた違う 異世界独特のアイテムなのだろう
これを頼りにもう一踏ん張り
時間制限が無い分 一歩でも確実に進めばミヤコも褒めるだろうと思っていた矢先
餌調達に地上を降りていた 大蛇とスケールが変わらぬ怪鳥が
いつの間にか腰を抜かして地ベタに這いつくばる俺を凝視していた
「あっ…… ど…… どうも……」
「クェ~~~~~~~……」
目を逸らしたら食べられてしまうとミヤコに教わった
だからどれだけ怖くても瞼を閉じてはならない
荒い呼吸を落ち着かせて精神を安定させる
駄目で元々のギリギリの試練だ
やるだけやらなきゃと頑なに固めた気持ちを前面に押し出して
「ハァハァ…… ケモノトーンで…… 話くらい聞こう……」