1 親の心、他人は知る筈も無い
俺は少女をミヤコと呼んでいるが
ミヤコは俺をお兄ちゃんと呼ぶ
身長もミヤコの方が高い どれくらい高いかというと
不意に抱きつこうとすると 丁度良く胸に顔が押し付けられるくらいだ
不思議とミヤコは嫌がらずに頭を撫でてくれて それで済ましてくれる
口調も大人びていて落ち着いている
一人で留守番の時に 薪に引火させてボヤ騒ぎになっても
彼女はしっかりと叱ってくれた
もう母親ではないかと思うレベルだ
「お兄ちゃんはヤンチャなんだね……」
「……年も背丈も僕より上だろ なんでお兄ちゃん呼びなんだよ?」
「私は一人暮らしだったでしょ?
もし家族で一番欲しいのは誰かと考えたら
頼りになる兄が欲しいと願ったからよ」
「ふ~ん…… 試しにだけど
僕がお姉ちゃんって呼んだらミヤコは怒る?」
「怒らないけど…… ちょっと寂しくなるかな……」
「え……?」
「あれに似てるかも!
母親も知らぬ間に子供が成長していて寂しくなるやーつ!」
「……」
やっぱり母親の方がしっくりくる
当時の俺はミヤコを母代わりと思っていた筈だ
でも今思うと少し違う
他人であって そして年上の女性に対して
少なからず恥じらいを見せていてギクシャクしていたのを覚えている
「さぁ! 今日はもう遅いし寝ましょ!」
「……ぼっ! 僕は床で寝るから!」
「ベッドは一つしか無いから…… 我慢して寝て頂戴……」
そういうことではなかったんだよな
密着していれば至福の就寝を味わえたが
無理矢理にでも思春期が発動するような
大人の体験をしている気持ちだった
率直に言って 枕よりも柔らかく
気を許してまともな愚行に走る自分を包み込んでくれる
そんなミヤコと毎日寝れることが堪らなく好きになっていた