18 御守り
失踪した事は勿論祖母の耳にも入っているだろう
だけど何も触れず 布団に頭を押し付ける俺の頭を撫でてくれた
「橋下さん家を飛び出して 今はどうしているんだい?」
「ミヤコんところでお世話になってる!」
「そうかい……」
婆ちゃんはミヤコをじっと見やる
ミヤコはミヤコで何も言わずに待っていてくれた
他愛も無い雑談
俺と婆ちゃんが二人暮らししている時の会話と同じ
「何処でどうしていようとお前が元気ならそれいいけどねぇ
……学校は楽しくなかったかい?」
「……」
学校ってワードが出るだけで息が詰まる
だけど何も返せないのはそれが答えで
「牧人君…… だっけ?
さっき謝りに来たのよ」
「えっ?」
「クラスでイジメ調査が行われてね
興味が湧いたのは牧人君が自ら手を挙げたって話じゃない」
「……」
「あの子に何をされたの?」
「……黒板を扉に挟んで真っ白にされた
あとは机に日曜の酢飯レンジャーの落書きもされた
せっかく婆ちゃんの似顔絵描いた画用紙も破かれた
体育の授業では一人だけ綱登りさせられた
先生の目を盗んで 出来ない俺は周りに笑われていたんだ」
「そう…… それは辛かったねぇ
でも大勢見てる中で正直に名乗り出る牧人君は
お婆ちゃん偉いと思う!!
性根腐ってるクソガキと比べたら……
一度腹を割って話し合ってみるのもいいと思うねぇ」
「……無理だよ もうアイツとは会わないし 会えない」
ソッポを向く俺に婆ちゃんはそれ以上何も言わない
代わりに隣の棚から色褪せた巾着袋を取り出した
「はい御守り」
「……」
神社のとは違う
いつも婆ちゃんが小銭を入れている布巾着
「中身は見ちゃダメ 御利益が逃げるからね 肌身離さず持ってなさい」
「……うん ありがとう!」
「ミヤコさん うちの孫をよろしくお願いします」