15 不穏の足音
家は何事も無かったかのように片付けられた
ミヤコのメイド術の賜物だろう
色々と省いた言い方だけど 取り敢えず魔法はすごいってこと
「それにしてもどういう心境の変化なの?」
「……何がです?」
「てっきり交友関係を断絶して
孤独に生きていくのかと思っていたけど……
随分と可愛い野良犬を拾ったじゃない」
「森で迷子になっていたのを保護しただけです
それに私がどういうスローライフを送ろうと関係無いじゃないですか」
「バリバリ現役の癖に隠居してる物言いね……」
マグカップにヒビが入りそうな
そんな殺伐としたチクチクする空気の中でも
蚊帳の外に追いやられている俺は引かなかった
「ミヤコ…… この人は誰なの?」
「それは~~……」
「自己紹介がまだだったわね~~ ボク~~
私は〝レポティッツァ・セイクリッド〟
特別にお姉様と呼ばせて上げる!」
軽くウインクされて悪寒が走った
服に見合う美しい容姿なのだが苦手だ
日本の婆ちゃんを基準とするならば
こいつが如何にヤバいかすぐに判断がつく
「……偽名ですか」
「お互い様にね♪」
「それで用件はなんです?
行動力お化けの貴女が様子見だけなんて信じられません」
「実は~~ 次のお仕事で協力が必要なんだよね~~」
「お断りします 他をアテにして下さい」
「私が友達少ないの知ってるでしょ~~??
お願い!! 今回だけ!!!!」
「答えを変える気は無いので」
ミヤコの一蹴にレポナントカさんは酷く落胆していた
余程ミヤコをアテにしていたのだろうか
その同情してしまいそうな表情に俺は我慢できなかった
「ミヤコも意地悪しないで少しは助けになってやろうよ!」
「心晴…… 口を挟まないで」
「っ……」
なんだろう
名前で呼ばれる時は何故か心が寒くなる
「そうよね~~!! 偉いわ~~ボク~~!!
困ってたら助け合わないとね~~……?!!」
腕を引っ張り
レポナントカさんは俺の顔を自分の胸に押し付けた
窒息してしまいそうな楽園
ではなく何故かミヤコの顔色を心配して気が気ではない
「っ…… 分かりました…… いつここを発てば?」
「やってくれるのね!!? 一ヶ月後!!!!
場所は【ギクナド山麓】に集合ね!!」
レポナントカさんは承諾を確認するなり颯爽と森の中へ消えた
俺があの人に捕まって 渋々頷いたミヤコには申し訳ないと思っていたが
後で聞いた話 レポナントカは俺のうなじに刃物を突きつけていたらしい