14 来客
ミヤコが煙突掃除するらしいので 昼食を早めに済ませた
周りが見えない真っ暗な場所に向かうので
可笑しな話だが俺に留守番を頼んできたのだ
「怪しい人が来たら教えてね」
「……誰も来たこと無いじゃん」
玄関先の石段で座りながら 雷を出せるか練習していると
夢中になっている最中で気付かなかったが
森の奥から人影が揺らめいていた
先を見越すと不運だと思ってしまう その人物は現れる
「こん…… にち…… は!!」
「……!!?」
足音一つ立てずに俺に影を伸ばす
ブラックドレスに茶色柄のカーディガン
ミヤコお手製の質素なメイド服とは真逆の嫌な感じ
それは見た目から感じるものだけではなかった
「誰…… ですか……?」
「フフフ! 怯えちゃって可愛い!!」
「……!!」
この感じはミヤコと似ている
正確にはマタタビで酔っていた時のミヤコにだが
「一人暮らしかと思っていたら…… ペットを飼っていたのね」
「誰がペットだ!」
「……お・す・わ・り」
鞄から取り出した猫じゃらしの先端を俺の眼球スレスレで止めた
石段に崩れ落ちる俺に大した興味を示さず 女性は家の中へと
「お久しぶり~~!! あれいない…… 飼い主は何処?」
「え…… えと……」
教えるべきか 多分ミヤコはまだ煙突の中
この人の声は届いていないのだろう
「で…… 出掛けてるよ…… 俺は留守番中なんだ!」
「ふーん 嘘を吐くなら君を殺さない優しいお姉さんを選ばないとね」
椅子を片足でトンと蹴り上げて
一回転したかと思えばこっちに勢いよくシュート
「?!!」
玄関のドアは一人分 奇跡的に死角に避けることは出来た
だが人の攻撃を躱すと気持ちよくなってしまい
そこを突かれて 呆気なく首を掴まれ吊り上げられてしまった
「うっ……!」
「番犬にしては心許ないわね~~」
そのとき何かを察してくれたのか
暖炉の灰の溜まり場に大きな音が鳴り響く
何かが落ちてきた音だ
「私のお兄ちゃんに何してるのよ?!!」
「こわ~~い! その殺気は健在なのね」
蔓延する灰の中を素早く動き
台所の火打ち石で火花を散らす
ダメージに程遠い粉塵爆発だったが
反動で女性が手放した俺を庭先でキャッチしてくれた
「フゥ…… 私達の穏やかな生活を荒らさないでくれます貌さん?」
「様子見に来ただけよ~~
かつての仕事仲間だけどお変わりないようで安心したわ貓ちゃん」
ーー……今 聴き取れなかった箇所があったような