12 食うか食われるか
「大事なのはコミュニケーションです
独自の伝達能力においては種別の会話がありますからね」
「……仲良くしろってことだろ?」
言葉で話せる相手は 通じない相手よりも楽だった
だけど実際は容易に穏便に済ますのは可能ではなく
『なんやボクちゃん…… まだなんか用かいなぁ?』
『餌をチラつかせられたら我慢出来んくなるの 人間と同じやろぉ?』
「……」
まず手始めに俺は頭を下げる
「君達の母ちゃんのことだけど…… 本当にごめんなさい!!」
『……まぁしゃーないわなぁ
丸焦げの母ちゃんは美味かったしなぁ妹よ!』
「本当にごめ…… 母ちゃんを食った?」
『せや! この森一帯の怪物の子は親の血肉をも取り入れて成長するんやで!
ワテらにとっては時期が早かっただけってことなんやで~~?』
「……お腹痛めて産んでくれたのに」
『逆に出来損ないは食われてまうんや……
人生なんてケースバイケースやで~~』
怒りを感じている俺の頭を 優しく撫でてくれたのはミヤコだった
「彼らにとっては そういう本質的な生態なのです
例えば母蛇の血肉を腐敗させてしまい 食べられずに子孫も残せずに死んでしまえば
この森は他の群れに侵攻されてしまうんですよ?」
「そうなったら?」
「私達の生活にも影響が出てきます 今まで食えた魚や木の実が貪られて
自分達は住処があるからと ここ一帯は荒らされ放題になるかもしれません」
「……」
「睨み合いが続いているからこそ
均衡は保たれ 巨大生物が巣くおうとも
生き物が暮らしていける自然が維持されているのです」
ミヤコはさらっとこの森についても教えてくれていた
獣音波ケモノトーンは身につけるのは簡単だった
だけど目的は 大きな生き物相手でもちゃんと言葉を交わせるかどうか
ずっとこの森で暮らそうならば 必要最低限のスキルだったのかもしれない
夕暮れには子蛇達に別れを告げて 俺とミヤコは家に帰る
帰宅中にした会話は 少し意味深で怖かったのを覚えている
「僕もミヤコを食わなきゃいけなくなるのか?」
「そうなったらとても嬉しいことよね~~」
「……逆にミヤコは 僕を食おうとはしないよね? ね?」
「それはどうかしらぁウフフフ♡」
「……??? ……!!???」