出現魔王軍幹部
しばらく森を進むと人影が見えた。
「襲われている方はさっきギルドにいた奴らだ。襲っている奴らは魔王軍幹部か......」
絶望的なオーラを感じる。ミカとセリカは凍りついたように震えているのが分った。
「ミカとセリカはここで待っていてくれ。」
俺は1人で近づいた。しばらく進み隠れられそうなところで様子見をすることにした。
しばらく考えた。俺はこっちの世界にきてから戦闘をあまりしていない。
攻撃術式を使えば幹部と戦えるかもしれないが、おそらく襲われている奴らも巻き添えになる。
そうこう考えているうちに空から人が飛んできた。
「君たち!大丈夫か!ここは僕に任せろ!」
空から飛んできた少年は俺よりも少し若そうだった。
身長も俺よりも小さそうだし、鍛えているとはとても言えないような体つきだった。
鎧は他の冒険者よりも良いものを使用しているように見えるが彼は強いのだろうか?
そんな華奢な体の腰にさしている剣を抜いた。
剣を見る限りあんまり強い装備ではなさそうだが。
「スキル装備鑑定!」
表示されたのはただのロングソードか......それを見る限りただの弱い武器のようだ。
「仕方ない加勢するか。」
そう言って動き出そうとしたところ、空から飛んできた少年が叫んだ。
「スキル聖器錬成!!」
剣が光りだした。装備鑑定の結果が変化していくロングソードが聖剣と表示されステータスが圧倒的に増加した。
「この剣の一振りは山をも切り裂く!!」
そう言って剣を一振りした。あたりにいた魔王軍の雑魚魔獣がほとんど消え去った。
「ほう......なかなかやるな小僧。」
ここにいる魔王軍の中で最も強そうな将軍風の男がそう吐き捨てた。
「魔剣を用意しろ。」
そばに控えていた魔族の1人が剣を用意した。そしてその剣を引き抜き、
「魔王軍幹部ゴモラの力見せてやろう。」
すさまじいスピードで少年に近づき剣を振るった。少年も剣で一瞬止めた。
がしかしすぐに手に持っていたロングソードを砕き、そのまま剣圧で吹き飛ばされた。
「まずい......」
このままでは少年が殺されてしまいかねない。俺は森から飛び出て少年の前に立った。
「攻撃術式(火)はチャージ中か......スキル攻撃術式(氷)!!」
術式があたりに展開されそこにいたすべての魔王軍を凍らせた。
「よし!」
なんとかうまくいった。ゴモラを倒した......いやだめだ。
ゴモラはその氷を砕いて出てきた。
「ほう......これほどの強者に日に2度も会うことになるとは。」
さっきの一撃で倒せなかったのは痛いな......さすがは魔王軍幹部か。
「スキル転送ゲート!!」
ゴモラに向けてゲートを展開した。
「何だこれは......」
ゴモラが光り始めて体が消えた。
「ふう......何とかなったか。」
いったん危機はしのいだので気が抜けた。
「助かった......!!」
さっきまで倒れていた少年やギルドにいた人たちが声を合わせてそう言った。
少年が近付いて来て、
「ありがとう。僕は勇者ヨウタだ。さっきはありがとう。」
あっさり勇者が見つかってしまった。と同時にステータスボードが表示された。[名前:ヨウタ 職業:勇者]
「俺の名前はスグル。こっちはミカとセリカだ。よろしく。」
ヨウタと握手をして2人の紹介をした。
ギルドにいた人たちもけがをしているみたいだがそれほど重症でもなさそうでよかった。
「ヨウタ、悪いんだけど俺たち勇者ギルドまで連れて来て欲しいと頼まれているんだ。だからできればついて来てもらえないか。」
「ああ、いいよ。彼らもけがをしているみたいだしまずは街に戻るべきだろう。」
とりあえず俺たちはもう一度街に戻ることにした。
まずは彼らは医療施設に向かうことにした。
中にはかなり重症になっている者もいるようだ。
「これで頼めるか。」
俺は持っていた金貨4枚を手渡して彼らに十分な治療をお願いした。
そしてヨウタと俺たちはギルドへ向かった。
「おう。まさかこんなに早く勇者を見つけてくれるなんてな。」
ギルドに入ったところでギルドマスターが迎えてくれた。
「それと勇者さんへの伝言だ。海の街カルミーラに魔王軍幹部ラキアを見たものがいるらしい。幸い街を襲ったといった被害は出ていないが、どうやら勇者を探しているらしいということだ。」
「僕はさっき魔王軍幹部に負けてしまいました。」
「何だって!?魔王軍幹部は勇者でも敵わない相手なのか。」
ギルドマスターが驚いていた。
「安心してください。僕がこのあたりに来たのには理由があります。賢者エミリア様に会いに来ました。」
「なるほど......彼女ならあるいは。」
「その賢者......っていったい?」
「兄貴!!賢者様は50年前の戦いで大英雄と言われた人なんですよ!!」
50年前の英雄ってことはばばあじゃん......
「ヨウタ俺もついていっていいか?」
「もちろんさ。ついて来てくれ!!」
早速賢者様に会いに行くことにした。