第9話 魔法の特性
サボりすぎぃ!
魔力欠乏による死にかけ事件から1年と少しが経ち季節は夏になった。
俺は3歳になり、身体も少し大きくなり子どもの成長の速さを感じる。あれから毎日掃除魔法を使っていたら、だんだん使えるようになってきて今では1日に何回使っても余裕だ。
どうやら、魔法を使えば使うほど魔力量は増えていくらしい。
あの後、母さんに話したら。
「死なないからどんどんやって大丈夫よ~」
としか言われなかった。
確かに死ななかったし良いのだが……、死にそうになる恐怖というものはある。
トラウマになったらどうしてくれるのだろう。
そして、掃除の他にも花壇の管理が増えた。水やりは魔法でできるが、土をいじった後に魔法で洗えないのがめんどくさい。
自分が発動した魔法は、自分に影響を与えない。
火や水の魔法を使うときは都合のいいシステムだと思っていたが、そうでもないことがわかった。
夏の暑さに耐えかねて一人で水浴びをしようとしても、できないのだ。その時は結局、レナータと魔法で水のかけあいをすることで解決した。途中からレナータが熱くなって、大量の水を出したり大きな水球をぶつけて来たりしていたがあれは楽しかった。
前世でいうと水鉄砲で遊ぶ感覚だ。
そして部屋の中では水が使えないので、風を起こしてみたりしたが自分は感じないので意味がなかった。
この魔法の性質はなかなか扱いづらい。
そう考え、今日も魔法の研究をした。
氷を生み出しても、触れると冷たくないのだ。なんの意味があるのかと虚しくなった。
しかし、汲んできた水を凍らせて触ると、しっかり冷たいのだ。
おそらく完全に魔法で生み出すと意味がないが、魔法を間接的に使えばよいのだろう。
初めて使った魔法陣、あれも手は火傷しなかったがその上に乗せたフライパンの熱は感じることができた。
そのことを夕食の時に両親に伝えると、
「ママが教えてないのに自分でそのことに気づいたの?本当にエドはおりこうさんね~」
「魔法もどんどん使えるようになってるし、もうすぐパパと一緒に狩りに出ても大丈夫そうだな」
「あら、さすがにそれはだめよ~。3歳に山歩きなんて危険だわ~。でも、エドガーなら大丈夫かもしれないわね~」
「まぁそのうちだな。そのうち」
と好意的に受け入れられた。
いや、知っていたのなら教えてくれよとも思ったが、子どもの自主性を育てる教育方針なのだろうと納得した。
絶対違うだろうけど。
まぁそれはそれとして、この話で気になったのは狩りだ。俺は3歳ということもあり、家から基本的に出ない。外に出たとしても動き回るのが許されているのは家の周りだけで、近くの村や森にはまだ行ったことがない。
だからとても気になっている。
この世界には何があるのだろう、魔法のほかに面白いことはあるのだろうか?それを確かめるためにも、ぜひとも外に出たい。魔法があればそんなに危なくもないだろうし、行きたいアピールをしておこう。
「ぼくいきたい!パパといっしょに!」
それを聞いた父はだらしなく顔を緩ませた。
「そうかそうか、エドガーはパパと一緒がいいか! だってさレナ。そんなに深く入らなければ大丈夫じゃないか?」
スープを飲み込んだ母が考える仕草をする。
「そうねぇ……。でもやっぱり準備は必要よ~。ちゃんと装備を買わなくちゃ~」
「確かにそれもそうだ。じゃあそのうち買いに行くか」
「やったー! パパ、ママありがとう!」
「でも! エドガーにはいくつか魔法を覚えてもらうわ~。装備を買いに行くのはそれができるようになってからよ~。いい?」
「うん!」
「レナは厳しいなぁ。俺がいるから大丈夫だよ」
フランクがそう言うが、母は首を左右に振る。
「いいえ、フランクはエドにかっこいい所を見せようとしてきっと暴走してしまうわ~」
「うっ……」
どうやら図星らしい。本当に大丈夫だろうか。
それにしても、新しい魔法か。いったいどのような魔法だろう?
俺は新しい魔法に胸を膨らませながら、フォークを野菜に突き刺した。