第3話 新たな人生
とりあえず今日はここまで。
この物語はフィクションなので、某光学機器メーカーとは関係ないです。
ただ、ツァイスってかっこいいよね。物語には関係ないけど。
「思い……出した……」
俺はベッドに寝て天井を見ながらそうつぶやいた。
「俺は……死んだんだ。あの事故で……」
死んだにもかかわらず、こうしてつぶやいているのはなぜか。
それは、おそらく転生したからだ。
事故に遭った時に30歳だったはずの俺は、今は2歳にも満たない子どもだ。
きっとこれが転生というものではないだろうか。
無宗教だったし、あまり詳しくないが。
それにしてもだ。
「クソっ!思い出したら腹が立ってきた。あの野郎絶対許さねぇ」
運転手が見えたわけではないので女性ドライバーの可能性もあるが、そんなのはどうでもいい。
せっかくあれだけの金をかけたにもかかわらす、性能を発揮できないまま廃車になってしまった。
しかも死んでいるのだから、怒らない方がおかしいというものだ。
しかし、もうどうしようもない。
もう、あの出来事は前世の出来事なのだ。
「俺は佐藤健一だったが、今はエドガー・ツァイスか……」
おそらく海外のどこかの国なのだろう。
名前が日本のものではないし、両親が話している言葉も日本語ではない。
「両親の人種も、言葉も明らかに日本とは違う。ここはどこなんだろう……」
話していることはきちんと理解できるので問題はないし、とりあえずは気にしなくてよいだろう。
身体を起こしてベッドから降りて歩こうとしたが、バランスが取りづらく歩きにくい。
俺が歩く練習をしていると、異常な眠気を感じてベッドに戻る。
子どもがいつも寝ているのはこの眠気のせいか。
そしてそのまま欲求に任せて寝ようとしていたところに、床が軋む足音が聞こえてくる。
誰か来たみたいだ。
部屋のドアが開き一人の女性が入ってくる。
「エドガー?ちゃんと寝ていますか~?」
その女性は、美しい金色の髪を後頭部で一つに結び、透き通るような青い瞳で俺を見つめてくる。
この女性が今の俺の母、レナータ・ツァイスである。
かなりの美人で、ハリウッドで有名な女優と言われても俺は疑いもせず信じるだろう。
「すんすん……あら?今日はうんちしても泣かなかったのですね~えらいえらい」
そういいながらレナータは俺の頭をぽんぽんと撫でて部屋を出ていく。
おそらく、おむつを変える準備をしに行ったのだろう。
どうやら俺は漏らしていたらしい。
前世のトラック運転手への怒りで、俺の状態を把握できていなかったようだ。
レナータが戻り、俺汚れたおむつを外して尻をぬぐっていく。
(恥ずかしい!この状況は恥ずかしすぎる!)
今の俺は2歳弱だが、前世では30歳だ。
頭では当たり前だと理解していても、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。
「うんちをしたくなったら、ママかパパに言ってトイレに行きましょうね。そろそろおしめも卒業しましょう」
まだ2歳にもなってないのに、大丈夫だろうか?
前世で子どもが生まれた同僚は、3歳くらいでやっとおむつを卒業したと言っていたが。
「最近、おしめを交換するのが面倒になっちゃいました~。だからママのために頑張ってね?」
おい!そんな理由かよ!
確かに子育てというのは大変だろうが、それを本人に言うだろうか?
しかし、子育てというのは大変なものだ。
他にやることもないし、美人な母親の手間を減らすのもいいだろう。
俺は子どもらしく、わざと舌足らずな雰囲気を出しながら返事をした。
「はーい!」
すると、レナータはとてもうれしそうな顔をして、俺の腹に頬ずりをしだした。
「えらいわね~!ママ、エドのこととっても大好きよ!」
親バカだな……。
俺は美人に褒められて悪い気はせず、抵抗せずにしばらく身を委ねることにした。