第52話 ブリノフ学院の加護〜精霊降臨祭編〜part5
前回のあらすじ
アスモデウスは合成獣の中で人間をベースにした新成獣をソシロア領全体に解き放った。
解き放ったというよりはアスモデウスが誘拐して行方不明になっていた人間を新成獣に改良し、街に戻していたのが真実であった。
第3主都・ラウジーミルには20体の新成獣が出現し暴れ回り、多くの血が流れていた。
精霊団も出撃するが返り討ちにあってしまう。
そんな中アレクサンドルやリンが1体ずつ撃退するも、新成獣の正体を知り驚愕し心を痛めることになる。
※※※※※※
ブリノフ学院通り__。
ソフィアとアンナは精霊団と合流して住人や観光人をブリノフ学院方面へ誘導していた。
しかし学院付近で避難者たちが騒ぎ始めたのだ。
そう、ここにも別の防壁が張られていた。
中ではシエルとレヴィアタンが闘っているのだが、それは誰も知らない。
「これ以上いけないだと!?」
「慌てないでください。ここで待っていてください」
精霊団の人がイヴァンと連絡を取り合っているときに大きな地響きが聞こえると共にアエーシュマが現れた。
1チームを壊滅させてここまで来たのだろう。
「魔物だ。魔物がここまで追ってきやがった!」
ここでジッとなどしていられなかった。
しかしここまでの道のりは一本道だ。逃げようとするならアエーシュマの餌食になるのは確実だ。
数名は精霊団の指示を無視してアエーシュマがいる方面へ走って逃げようとしたが、踏み潰される者もいれば、食べられてしまう者もいた。
その場にいたソフィアとアンナは震えていた。
「イヤなの!死にたくないの!?まだ私は死にたくないの!」
ソフィアは泣き叫んだ。いやソフィアだけではない。避難しているみんなが次々に声を上げ始めるのだ。
アンナは2つ歳上のお姉さんとして、そして王族を守る使命として立ち上がる。
その足はもうガクガクで立つことで精一杯であるが、なんとかしなければいけない使命感があった。
「大丈夫です。ソフィア様は私が必ずお守りします!」
とは言っても治癒士であるアンナに闘う術などない。
癒す能力に長けた水の加護では、大した攻撃にはならない。
それでも抗うしかなかった。
「ソフィア様はここで街のみんなといて下さい。精霊団の皆さん!ここは私たちで凌ぐしかありません!」
アンナと複数の精霊団はアエーシュマに立ち向かっていったが…その強さは桁違いである。
1チームが壊滅しているのだ。
もっと大人数で闘わないと勝てる相手ではない。
残りの精霊団も参戦して21名で挑むことになったが、次々に倒れていく光景を見て街の人たちは絶望していた。
アンナも決死の覚悟で挑んでいた。
もうここが自分の墓場であるそんな気もしていた。
そして…大きな傷を受けることになる。
「みんなごめん…お父さん、お母さん、ごめんなさい。ダメな娘で…ここで死ぬかも」
血が流れ出るが自分を癒す力も残っていない。
意識が遠退く中で優しい光が見える。
そこにいたのは涙目なりながらアンナを癒すソフィアの姿であった。
「アンナ様死んじゃダメなの!」
「ソフィア様…」
アンナは手を握りながら意識を失った。
とりあえず血は止めたが、災悪な状況は変わらない。
しかし寵愛者であるソフィアにはまだ闘う術がある。
「4大精霊様…私に力を貸して欲しいの。皆を守る力をどうか…どうか貸してほしいの!」
その声は震えていた。
しかし精霊の加護があることを糧に自分を奮い立たせてアエーシュマに立ち向かった。
「ガァー!」
アエーシュマの口から火の息が吐き出されるとソフィアは風の加護で火の息を防ぐ。
毒蛇の尻尾の攻撃も大地の加護で防御する。
一方的な攻撃を様々な加護を使い分けて防いでいく。
これが寵愛者と呼ばれる強みである。
更にこれだけではない。
「岩壁なの!」
ドンドンと音を立てながら岩壁がアエーシュマを囲い封じると更にソフィアは立て続けて魔法を放つ。
少し開けた隙間に火の魔法を放つ。
「烈火なの!」
火の逃げ場ない中で焼き殺す作戦に出たのだが、この程度は死なないようだ。
アエーシュマは岩壁を破壊して中から出てくる。
それでもソフィアは攻撃を止めることはなかった。
「まだまだですの!」
ソフィアは右手に風魔法を左手に火魔法を作り出す。
「旋風、そして烈火を組み合わせてできる魔法!火災旋風なの!」
ソフィアは魔力量が多くないため強い魔法が出せるワケではないが、魔法を組み合わせて高威力にしている。
これもまた寵愛者だからできる芸当でもある。
天井高く伸びる赤い火の渦がアエーシュマの飲み込む。
「これで...これで倒れて欲しいの!」
火災旋風が止むとアエーシュマの身体は黒く焦げてボロボロになってはいるが、倒れることはなかった。
多種多様な生命を混ぜてできる新成獣は強さが向上するのではなく、桁違いの生命力も持ち合わせているということだ。
「これでも倒れないなの!?」
全身全霊を持って挑んだが、まだソフィアの手におえる相手ではなかったということだ。
それからはアエーシュマの攻撃を防御するので必死だった。
尻尾の攻撃に火の息、大きな足で踏みつけるなど、相手も多くの攻撃を持っている。
時間をかければかけるほど、ソフィアが不利になるのは確実だ。
魔力が尽きれば...そんなことばかり考えてしまう。
そんな余計なことを考えていると攻撃の隙を与えてしまった。
「グガァァァァ!!!」
アエーシュマの鋭い爪がソフィアを襲う。
この切り裂きが当たれば頭と同体が離れてしまう。
ゆっくりと爪が自分に近づいてくるのが見える。
これが死に前に訪れる現象なのか?
「真・烈火!」
真っ赤に燃え盛る火の魔法がアエーシュマに当たると大きな音を立てながら地面に倒れこんだ。
この声にこの技は…彼女しかいない。
ずっとソフィアをライバルと見て魔力コントロールの向上に努力と研鑽を積み重ねたツンデレ王女…
そうルイーダだ。
「ソフィア!こんなところで死ぬつもり?」
「ルイーダ様…どうしてここになの?」
「ここに避難するように指示されて来たの。でもこの状況はよくない。お兄様もまだ見つけれてないのに」
「良かったなの…私…私もうダメかと思ったなのー!」
ソフィアは再び泣き出した。
「ふ…ふふ…そ、ソフィアもこれぐらいで泣くなんてまだまだね」
「ルイーダ様ー」
しがみつくソフィアを見て、自分の方が優位に立てていること、そしてライバルが自分を頼ってくれていることに満足していた。
だがそれも束の間…
アエーシュマは再び起き上がる。
激昂していた。
「そ…そんななの…いつになったら倒れてくれるなの?」
「ソフィア!今こそ私たちの好敵手である友情を見せつけるのよ」
前にも言ったが、別にソフィアはルイーダのことを好敵手などという感覚では見てはいない。
これも全てルイーダの勝手な押し付けである。
「私たちが揃えば無敵よ。友情のパワーに勝るものはない。それが好敵手関係なら尚更ね」
もう妄想癖が止まらない。
「でもどうやって倒すなの?」
「決まってるじゃない!さっきの火災旋風を作るのよ!」
「でも私にはそんな魔力残ってないの…」
「馬鹿ね。さっきから言ってるでしょ!友情パワーよ。私の真・烈火はソフィアより強い火力だからソフィアは旋風だけで十分よ」
言われるがままにソフィアは残ってる魔力で旋風を放つ。
そこにルイーダの真・烈火が加わると火災旋風が完成するが、その威力はソフィアが作り上げた火災旋風より強い。
「これが私とソフィアの友情パワー!絶大な威力でしょ!」
ルイーダは興奮していた。
火災旋風が止むとアエーシュマの姿はなかった。
消し炭にしたのだろう。
「倒したなの...」
ソフィアは全身の力が抜けてしまいヘタれこんでしまった。
魔物を倒したことで歓喜の声が上がる。
「ソフィア様ー!」
「やっぱり天使だ!いや女神だ!」
男どものソフィアコールが響く。
この声は防壁の中にいたシエルとレヴィアタンにも聞こえるのであった。
「なんでソフィアだけなの?私の力があったからでしょ!?」
ソフィアだけ評価されたことにルイーダは不服だった。
「ルイーダ様ありがとうなの!」
そこへアレスとリンがやってくる。
「おーい!」
「アレス様とリン様なの!」
「ここで2回も大きな炎の渦が見えたから急いで来たんだけど...」
「もう倒してるから。私とソフィアの友情パワーで!」
「何のことかよくわからないけど、来るのが遅かったのか」
「それよりアンナ様や精霊団のみんなを治療しないとだめなの!急ぐなの!」
こうしてアエーシュマを退けたが、被害は大きかった。
アンナは最悪の状況を逃れたが数名手遅れの者もいた。
ブリノフ学院の敷地内には入れないが、1本道であるここで防衛線を張るしかなかった。
「一体何が起こってるわけ?まだ兄様も見つけられていないのに...」
「でも今はウロウロするよりここで待機してるほうがいいよ。新成獣は生命力は半端じゃないから」
「アレスはまだ何もしてないアルけどね」
リンの一言が心に突き刺さる。
「別に逃げてたわけじゃないから!」
「はいはい。わかったアルから」
「もう!それにしてもシー兄やルミ姉はどうしてるんだろ?」
「レイお姉様も気になりますの。スワモには王族嫌いの方々が多いと聞いてるの」
ソフィアの感は命中する。
貧民街と救世教は癒着していたのだ。
そして遂に反乱が起きるのであった。
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