第3話 力の加護
「では、失った精霊の加護を今一度戻しますので、暫く目を瞑っていて下さい」
シエルとルミエールは、アグライアの言うとおりに目を瞑った。
「汝ら、光の加護を授かりし魂。光は闇を切り裂く希望なり!」
アグライアが、詠唱を始めると強い光が2人を包み込む。
「神聖加護!」
不思議な力が全身を駆け巡る。
「終わりましたよ。目を開けて大丈夫です」
目を開け、自分を体を見渡してみたが、特に変化はない。
「特に何の変わりないじゃん...」
「外見が変わるものではありません。内側にその力が宿っているのです」
「そもそも加護って何なの?」
「加護とは私たち精霊の力のことです。ではここで力の特性、使用条件、種類を説明しましょう。
そう言ってアグライアは、精霊の加護についての説明を始めた。
【精霊の加護】
精霊の力のこと。
この星を育み続け、今も尚この世界を加護の力で守護し続けている。
万物にはこの加護の恩恵を与えられている。そして恩恵を与えているのが四大精霊である。
四大精霊とは火、水、風、大地の4つである。
アグライアは規格外の存在で、万物に恩恵を与えていないため、光の加護を持つものは存在しない。
次に加護の特性について説明してくれた。
【光の加護】
シエルとルミエールだけが使える力。
闇を払う唯一の力であるが、その力の詳細は謎が多い。
【火の加護】
四大精霊の加護の中で、1番火力が高く攻撃に向いた力を持っているのが最大の特性。
【水の加護】
四大精霊の加護の中で、唯一回復の効果を持つ力があるのが最大の特性。
【風の加護】
四大精霊の加護の中で、武器の軽量化や素早さを上がるといった能力向上魔法が使えるのが最大の特性。
【大地の加護】
四大精霊の加護の中で、高い防御魔法が使えるのが最大の特性。
次いで加護者の名称を説明した。
【加護者】
1つの加護を扱う人間のこと。
加護の力は1つ使えるだけでも重宝され、珍しい存在である。
【特有者】
2つの加護を扱う人間のこと。
ごく稀に存在するエリート。
【奇跡者】
3つの加護を扱う人間のこと。
超スーパーエリート。
精霊の加護を使う人間の中で2%も満たない存在。
【寵愛者】
4つの加護を扱う人間のこと。
存在自体が嘘だとされている神的存在。
【代行者】
精霊から直接力を与えられた人間のこと。
世界には6名しか存在しない。
精霊装飾が使える。
と言っても加護を扱う人間は多くは存在していない。それには理由があった。
加護を使う際には内的要因である魔力量と外的要因である寵愛が必要になる。
ではそれぞれの要因について説明する。
【魔力量】
加護の力を使う際に必要となるエネルギーの名称。
この魔力量は生まれながら全人類は保有しているのだが、その量は人それぞれで異なる。莫大な量を持つ者もいれば、少量しか持たない者もいる。魔力量は生涯増えることはない。そのため少量しか持ち得ない人間は、加護の力を積極的に使うことができない。
【寵愛】
精霊に愛された存在か否か。
精霊に愛された存在でない限り、そもそも加護の力を使用することは不可能である。
「このように寵愛を受けてないと、加護の力を使えないのです。シエルやルミは代行者であるので、無条件で力を使えます」
「それで代行者だけが使える精霊装飾ってなんなんだ?」
「精霊装飾とは精霊の姿になれる特殊な技のことです。あなた達が代行者と呼ばれるのは、精霊装飾が使えるからです。しかし、精霊装飾は簡単ではありません。使えるようになるまでには、それなりの時間と力が必要になります。そして精霊装飾を施して使う力のことを霊力と呼びます」
【霊力】
精霊本来の力。
精霊の代行者だけが使える不思議な力。
「最後に覚えておかなければいけないのが、代行者としての代償です」
代行者は唯一無二の力を使える代償として他精霊の加護の力は使えなくなる。加護者とは精霊の分身という認識でいなければならない。
「では、早速ではありますが魔法を使ってみましょう!」
「魔法って急に使えるものなの?」
「おいおいこれって、いきなり強い魔法が使えたりするパターンじゃねぇのか!」
「残念ですが蛍光という簡単な魔法を使ってみますよ」
「蛍光?」
「敵の目を眩ませる技として使えます。まずはこれから習得しましょう!身体に宿る力を感じとるのです。では早速やってみましょうか!」
2人は集中して身体に宿る魔力を感じ取る。
「蛍光!!」
呪文を唱えると淡い光が一瞬光る。
初めて魔法というものを使ったことで2人は感動したのか、少し興奮気味だった。
「では光芒という攻撃魔法を使ってみましょう。光を凝縮して小さな光球で、ダメージを与える技です」
2人は再び身体に宿る魔力を感じ取り、呪文を唱えると小さな光の球体が勢いよく飛び出して、木を貫通すると直径10㎝程の穴を開けた。
「これが加護の力なのか…?」
「いいですね。このままもう少し色んな技を試して見ましょうか。そこの木の棒を持って下さい」
シエルとルミエールはアグライアの言われた通りに近くに落ちていた木の棒を拾った。
「これに光の加護の力を纏わせる技、光輝剣を使ってみましょう!」
「纏わせるってどうやって?」
「木の棒に魔力の流すのです。その後に光の加護に変換させると完成します」
「簡単に言うけど出来るのかよ?」
「まぁまぁとりあえずやってみましょうよ」
ルミエールと共にシエルは集中して木の棒に魔力を流し込んだ。徐々に魔力を纏い始める。そして光の加護に変換させると淡い光を放つ木の棒へと変化した。
「ではそれで、この丸太を斬ってみてください」
その太さは倍どころではない。
明らかに女性の腕力でも簡単に折れる棒で斬るなんて出来るはずがない。こっちが折れる。
「斬れるわけないだろ。こんな丸太…」
シエルはぶつぶつ言いながら、木の棒を振りかざした。
バキバッキバキバキッ__。
斬れ味はよくないが丸太はささくれを残して半分に斬れてしまった。
「えっ…?」
驚いた表情をしたシエルは、次の瞬間フラッとして地面に倒れてしまった。
ドサッ__。
「えっ?」
ルミエールとアグライアはシエルが倒れたことに驚いた表情を見せた。
倒れたままこちらを見ているシエルもきょとんとした顔で見つめている。
「ど、どうしたの?」
「いや力が入らない…」
「力が入らない?10分しか経ってませんよ?魔力が切れたのですか!?」
アグライアは驚いていた。
代行者であるシエルがこんなに早く魔力切れするはずないと。
それには理由があったのだが、アグライアは分かっていなかった。
「何がどうなったの?」
「魔力が枯渇したのです。魔力が枯渇すると倦怠感と共に動けなくなるのです」
「えっ…ウソ…ダッサ…」
「おい!うるせぇぞルミ!なんでなんだよ!?」
「仕方ありません。シエルに加護の力を制限させるしかありませんね。剣術や身のこなしでカバー出来る力をつけるしかないですね。しばらくは修行するとしましょうか」
「直ぐに旅立たないのかよ!?」
「死にますよ」
「それは…嫌よ」
「そっか...外に出れるとワクワクしてたけど、魔物がいるんだよな…」
「世界の状況はまた話します。今は、1日も無駄には出来ません。とにかく強くなることだけを考えましょう」
アグライアの言葉にシエルとルミエールは、頷き覚悟を決めた。
旅に出るまでの2年間でどこまで力をつけることができるのだろうか。
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