第五十二話 チート魔法とチートアイテム
※大変申し訳ないのですが、しばらく休載とさせていただきます。
詳しくは活動報告をご覧いただけると幸いです。
「作品の迷走」が主な理由となります。
■■クロノの視点■■
ミシュラにトラップを突破された時は驚いたが、あらかじめ念には念を入れておいたのが功を奏す結果となった。
俺の編成は、良く見れば「スピーカーラビット」意外にもおかしな魔物の存在に気づく。
それは「ゴブリンロード」というディフェンスタイプの魔物であった。
3本の通路をそれぞれ守る役割を考えるのならば、少しでも戦闘向きの「アタッカータイプ」の魔物を選ぶべきなのである。
攻撃力をわざわざ下げて、ここであえて「ゴブリンロード」を選んだ理由はその特性にあったのだ。
その特性とは「無数にゴブリンを呼び出す能力」というものである。
アタッカー二枚は最終的に探索者パーティを壊滅させるために必要であることは自明だが、「ゴブリンロード」はなんのために存在するのかは、「無数にゴブリンを呼び出す能力」の他にトラップを用いた作戦の要である「スピーカーラビット」の特性もあわせて考えれば分かる。
ゴール部屋の中で待機させている「スピーカーラビット」は、部屋に入ってきた探索者を見て他の魔物を呼び寄せる役割を持っているのだが、もしもパーティがすぐにトラップを抜け出して転送装置へと走っていった場合どうなるか?
戦闘能力のない「スピーカーラビット」だけでは、探索者たちを止めることはできないので、易々とミシュラに勝利を譲る結果になってしまう。
なので、俺は「ゴブリンロード」のもつ「仲間呼び」の特性を利用することにしたのだ。
ゴール部屋に大量の「ゴブリン」を敷き詰めておいて、探索者達相手に時間稼ぎをするのである。
これによって、数秒間移動が制限される探索者達のもとにケルベロス達が駆けつけることで、探索者達を撃破しようという算段であった。
「作戦通り上手いこと決まってくれたわけだ」
こうして、トラップを用いた作戦は鮮やかに決まり、「魔物サイド」の俺は「探索者サイド」のミシュラに勝利したのだった。
引き続き攻守を交代して「迷宮戦争」を繰り返す。
お互い後一歩といったところまで詰めるのであったが、なかなか「探索者サイド」で勝つことはできないのであった。
結局、昼も食べずに夕食時まで遊んでいたのだが、どちらも勝つことができないままゲームは終わりを迎える。
「そろそろ夕ご飯の時間ですね」と隣に座っていたエイレネから声をかけられた。
外で訓練していた二人も、家の中に入ってきたところで俺達は夕飯の準備をすることになる。
とりあえず、俺達はキッチンとテーブルのあるキャンプへと向かうことになった。
俺は「食品加工」によって調理した料理をテーブルに並べていく。
訓練で体力を使ったルーク達は特にお腹がすいているようで、食事の開始と同時に食べ始めるのであった。
「師匠!見てくださいよこれ!」
夕食もそこそこに食べ終わる頃に、隣の席に座っていたエイレネがなにやら丸っこいものを手に持って俺に話しかける。
アンデルスと共に裁縫をしていたエイレネは、両手に収まる程度の大きさのぬいぐるみを作ったようである。
彼女は中に綿が入ったウサギのようなぬいぐるみを抱えて、俺にその出来栄えを自慢してきた。
良く見ると、迷宮に現れる魔物である「ラビット」を模した作品であることが分かる。
ただ、凶暴そうな見た目はしておらず、ぬいぐるみとして可愛くデフォルメされていた。
「可愛いですね!」
エイレネの向かいに座っていたミシュラが、エイレネの作ったぬいぐるみを見て喜ぶ。
ラズメリノも「あら、可愛らしいですわ」と頬に手を当てて呟く。
一方、アンデルスが作ったぬいぐるみはエイレネの作ったウサギとは少し毛色が違った。
「これはね、僕のお姉ちゃんなんだ」
アンデルスと同じ水色の髪をした女の子のぬいぐるみを手に持つアンデルス。
嬉しそうにぬいぐるみの頭をなでている彼を見た一同は「流石シスコンだぜ……」と若干戸惑う。
夕食を食べ終えた俺達は、「キャンプ設置改」によって家を作った時から気になっていた風呂に入ることにした。
「遂にお風呂ですね!!」と喜ぶ女子達。
そして、大き目のお風呂に入り終えた俺達は再びリビングに集まり明日からの活動について話すことになった。
迷宮嵐が始まった4日目であったが、5日目になるといよいよ嵐も本格的になるという話を俺達は聞かされている。
「明日は起きてすぐに転送装置に乗ることにしよう」
雨風が強烈になる明日は、この階層で出来ることなどないので、さっさと次の階層へ行こうというわけである。
明日の行動予定をさくっと決めた一同は、また思い思いの夜を過ごそうと自分の部屋に向かおうとする。
しかし、皆が席を離れる前に、ある提案を俺がすることによって一同の足は止まる。
「そろそろ「時空魔法」を覚えてみようと思うんだが」
現代の定義でいくと「時間魔法」と呼ぶのが一般的なのだが、迷宮内に限っては「時空魔法」という表記が為されているのでそう呼んだ。
以前、迷宮内で各自のステータスを確認した際に「パーティークロック」という魔法が俺の習得技能リストにあったことを皆が思い出す。
「パーティークロック」の習得に必要なスキルポイントは確か 10000 であったので、大規模狩りに成功した今ならば楽に覚えることが出来るはずなのである。
「別に問題ないと思うのですが、いったいどんな魔法なんですか?」
俺だけが覚えられる特殊な技能のようなので、恐らくレアスキルにありがちな「チート」系の魔法であることが予想される。
しかし、俺達はあまりに習得必要ポイントが大きかったので、碌に魔法の説明も読んでいなかったのだった。
ミシュラに言われて、習得可能リストから「パーティークロック」の魔法を参照する俺達。
習得可能リストに書いてあった魔法の説明は以下のようであった。
・パーティークロック:下級時空魔法。パーティーメンバーに流れる時を操る魔法。操れる時のスケールは使用者の「魔力」に依存する。クールタイムは存在しない。
魔法の説明を読んだ一同に流れる空気が凍る。
下級時空魔法と説明に書いてある「パーティークロック」であるが、そのぶっ壊れた性能はもはや今までの戦闘を「過去」にするほどのものであった。
操れる時というのが、いったいどれほどのものであるかは習得してみるまで分からないが、少なくとも覚えてみる価値はありそうである。
本来、迷宮攻略にかかる時間が減れば減るほど俺達にとっては都合が良いので、パーティメンバーも皆「習得しましょう!」と言う。
「それじゃあ覚えるぞ」
下級時空魔法「パーティークロック」を覚えた俺は、早速パーティー全体を高速化してみることにした。
「パーティークロック!」と決め台詞を叫び、覚えたての魔法を唱える俺。
隣で「出ました!師匠の時間魔法です!!」と俺の妙なテンションに合わせるエイレネ。
しかし、魔法の発動時に時計の針が動くような音がした以外に何も起こらない。
その場でポーズを決める俺と、拳を握って目を輝かせるエイレネをパーティーメンバーが生暖かい目で見守るという状況が発生しただけだった。
「それで、何が変わったのかな?」
アンデルスが絶妙に効く言葉を俺に向かって言う。
彼に悪気は無いのだろうが、時空魔法への期待が大きかった分だけ胸に響く。
「まさか、魔力が足り無さすぎるのか!?」と落胆して俯いた俺をエイレネが励ます。
「カチカチという音が聞こえましたし、魔法は発動しているみたいですが……」
「パーティークロック」の発動時に音が聞こえましたと言うミシュラ。
たしかに俺の耳にも時計の針の音が聞こえた以上、なにかしらの効果は発動しているはずであった。
さっきの時計の針の音は魔法の発動音だよなと考えていた時に、ルークがポンと手を打って凄いことを言い出す。
「もしかして、俺達全員が均等に高速化しているから何も起こっていないように感じるんじゃないか?」
彼の言葉にその場にいた全員が「あっ」と変な声が出る。
思いも寄らぬことを言われた俺達一同は「良く考えればそうですね」と納得した。
何気なく腕に巻かれた「クロノスの時計」を見てみると、確かに時計の針が動くスピードが明らかに遅くなっているのを見つける。
「みんな!これを見てくれ!」
俺のしてる腕時計をメンバーに見せたところ、アンデルスが「本当だ……」と声を漏らす。
秒針が動くのをじっと見つめ、どれくらいの感覚で針が動くかを見守る一同。
どうやら、秒針が動くのに約5秒程度かかったことから、体感時間が約5倍程度に跳ね上がっていることが分かった。
「とんでもない魔法ですね……」
下級時空魔法「パーティークロック」の凄まじさを確認して、俺達は解散ということになった。
各自の部屋に戻った俺達は、少しして就寝することになる。
部屋に備え付けられた窓を叩きつける雨風の音で起こされた俺達は、コテージのリビングに集合する。
「昨夜は外の音が凄かったですわ」と眠たそうにラズメリノが言う。
朝食を取ってすぐに次の階層へ行こうということになったので、俺はキャンプにあるキッチンへと移動し朝食を作り始める。
相変わらずの料理を食べ終えた一同は、防水マントを身に着けて転送装置へと向かう。
「すぐ近くで待機しておいて良かったですね」
外に出て風に飛ばされそうになっているミシュラが言う。
迷宮「嵐」というくらいだから、凄い風と雨なのだろうと思っていたのだが、これは予想以上である。
俺達は風に煽られながら、キャンプのすぐ近くに設置されている転送装置へとたどり着く。
1階層で乗ったものと変わらない様子の転送陣に乗り込んだ俺達は、システムメッセージが視界に流れた後、「教室程度の広さの白い空間」へと飛ばされることになった。
「相変わらず変な場所だな」
白一色で構成されている空間に対しての感想を述べるルーク。
他のメンバーもこの空間には同意見であったらしく、ミシュラなんかは「頭がおかしくなりそうですね」と言っていた。
「宝箱を開けましょう!」
前回と同様に宝箱に興味を示すエイレネ。
今回はどんなアイテムが出るのかとワクワクしながら一同は箱を空ける。
箱を開けたエイレネは中に入っていたものを見て「剣ですか?」と声をあげた。
豪奢な宝箱を開けて出てきたものは真っ黒い刀身の剣である。
ファイターであるラズメリノがその剣を手に取ったのだが、その瞬間に真っ黒い刀身に紫色の光が宿った。
「驚きましたわ」
いきなり刀身が怪しく光り始めたのを見て驚く一同。
入手したアイテムの説明を見ると次のように書かれていた。
・タナトスの牙 (片手剣) (SSランク)[合成印][猛毒]:
魔王クロノスの忠臣であるタナトスの毒牙を加工して作った剣。
彼が変身した際に有している鋭い牙には、古代の魔法でも治療できない強烈な毒が存在したらしい。
「攻撃力+1255」「猛毒効果を付与」
アイテムの説明を見た俺達は「なんだこれ?」と揃って間抜けな顔を晒していた。




