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異世界に転生して時間魔法しか使えない俺  作者: けろ
第二章 迷宮都市編
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第四十九話 迷宮での休日


迷宮嵐に遭遇した俺達は特にフィールド上でやれることも無いので、2階層4日目の活動は休止し、今日一日を休暇としたのだった。

キャンプ内で朝食を取り終えた一同は、それぞれ午後から何をするか予定を考えている様子である。

メニューの中から「PvP」と書かれた対人模擬戦闘モードを発見したルークとラズメリノは、防水マントを装着して外へと出て行き、お互いの実力を試し合うようである。

戦闘技術に関して熱心な二人にとって、トレーニングモードのような設定で訓練できる環境はありがたいらしい。

本来であれば、戦闘経験がパーティの中でも少ない俺やミシュラのような人間が率先して訓練に参加するべきなのだろう。

しかし、キャンプの前の草原で繰り広げられている剣と盾の激しいぶつかり合いを見ていると、とてもじゃないが「俺も入れて~」なんていう軽い雰囲気で顔を出すことはできない。


「師匠!アンデルス君と一緒にアイテム購入リストを見てたのですが……」


俺とミシュラが窓の外を見ながら「あれは無理だな」と話しているところに、エイレネから声がかかる。

彼女はアンデルスと一緒に「アイテム購入」の商品リストを見ていたらしく、その中にある「手芸セット」と「手芸材料」が欲しいということだった。

それらの商品は特別高いわけでもなく、コネクトに余裕がある状況であったので俺とミシュラは「いいんじゃないの?」といった感じで軽く了承する。

しかし、パーティでのアイテム購入には「メンバー全員の同意」が必要であるので、外にいる二人にも声をかけなければならない。

何度も彼らの模擬戦を邪魔するのも悪いので、他に必要なものが無いか確認してからルークたちに相談することになった。


「先生、この「迷宮戦争」っていうゲームを買いましょうよ!」


横でアイテム購入の商品リストを見ていたミシュラが俺に話しかける。

ミシュラに言われた「迷宮戦争」というゲームの説明を読んでみたところ、どうやらこれは対人戦形式のボードゲームのようなものであることが分かった。

イメージ的には将棋と人生ゲームを混ぜたようなものである。

「迷宮戦争」は俺達の潜る迷宮にちなんで作られているらしく、プレイヤーは「探索者サイド」と「魔物サイド」に分かれてゲームが行われるという。

「探索者サイド」のプレイヤーは6人のキャラクターを操って迷宮を攻略していき、「魔物サイド」は迷宮内にトラップや魔物を設置して探索者の迷宮攻略を阻止するといった遊び方である。

アンデルスやエイレネも交えてゲームの説明文を読んでみたところ、「なかなか面白そうであり良い暇潰しの種になりそう」という結論がでた。


「それじゃあ、これも一緒に購入するか」


「手芸セット」「手芸材料」「迷宮戦争」の3点の購入が決まったので、外にいるルークとラズメリノの元へと向かう俺達。

防水マントを着用して、彼らのいるキャンプの外へと出るために、俺達は玄関の扉を開ける。

焚き火の燃え盛るキャンプ内を通り過ぎて、外に出た俺達に彼らが気づく。


「あれ?皆さんどうなさったのかしら?」


戦闘を中断して二人が此方へとやってくる。

彼女達にアイテムを幾つか購入しようとしていることを伝えると「構いませんわ」と返事が返ってきた。

逆にラズメリノ達も「訓練用装備セット」というPvPモード専用のアイテムが欲しいらしい。

「訓練用装備セット」は迷宮内で使用できる様々な武器防具の「練習用」に設計されたモデルがたくさん詰まっているものらしい。

この中に入っているアイテムは、自分達で攻撃力や防御力の数値をある程度変更できるらしく、強敵を想定した訓練や特殊な状況設定を作るのに最適だという。


ラズメリノ達が欲しいと言う「訓練用装備セット」も買うことになり、ひとまず俺達はキャンプの入り口で雨を避けながらアイテムを買う。

外で訓練をする二人に購入した装備セットを渡し、俺達はコテージの中へと戻っていく。

リビングに設置されたソファーに腰掛けて、先ほど買った3点のアイテムをソファーの間に置かれた机の上に出す。


「なんだかワクワクしてきましたね!」


俺の向かいに座っているミシュラが「迷宮戦争」の箱を見てはしゃぐ。

隣に座るエイレネと、エイレネの向かいに座るアンデルスも「手芸セット」に含まれている裁縫ツールを手にとって楽しそうにしている。

横でボードゲームをやっているとエイレネ達の手芸の邪魔になるのではと思ったが、彼女とアンデルスは「大丈夫だよ」というので、そのままソファーに座ったまま「迷宮戦争」を始めることにした。


「なんだこれ?」


早速箱を開けてみたのだが、箱の中には小さな水晶のようなものが1つと指輪のようなものが6つ入っているだけであった。

一体これでどうやって遊ぶのだろうとミシュラと二人で困惑していると、横で裁縫をしながらその様子を見ていたエイレネが「箱に何か書いていますよ?」と指摘する。

「あっ!」と思わず声を出す俺とミシュラは、箱に書いてある説明を読む。


「指輪をはめると近くにある水晶からゲームデータを受信することができますって書いてあるな」


将棋板と駒のようなものをイメージしていた俺は、迷宮遊戯の近代的システムに驚かされる。

チェスのような駒をイメージしていたミシュラも同様に驚いていた。

箱に書かれている説明はそれだけであったので、恐らく指輪をはめると何かしらのチュートリアル的な項目があるのだろうと踏んで、俺達は早速指示通りにゲームを始める。


机の上に水晶を置いて、それぞれ指輪をはめた俺とミシュラの視界にシステムメッセージと映像のようなものが映し出される。

その様子を見て「なんだかテレビゲームみたいだな」と俺は思った。

ミシュラも「先生、この説明みたいやつを見ればいいんですよね?」と俺に同意を求めてくる。

俺は彼女と同時に「初めての方へ」のメッセージを選び、このゲームの説明をシステムから受けることにした。


「古代魔法具の魔法水晶みたいですね!」


目の前に現れた映像に興奮した様子のミシュラ。

まあ、この「迷宮戦争」のゲーム自体が「アンティークアイテム」であるのだから、古代魔法具みたいという彼女の感想も的を射たものである。

それからゲームの簡単な説明を受けた俺達は早速ゲームを開始することにした。


「プレイヤーサイドの選択か。とりあえず初めてだしダイスで決めるか」


「迷宮戦争」はまず陣営選択から始まった。

先攻が「探索者」で後攻が「魔物」を操ることになる。

ダイスロールの結果、俺が先攻でミシュラが後攻となった。


「すごい!目の前にマップと立体図が映し出されています!!」


プレイ領域となる30×35のマス目に沿って、壁と部屋が自動で作られたのを見てミシュラは驚く。

「探索者プレイヤー」には、基本的にパーティの周囲の壁とオートマッピングされていく地図しか情報は無い。

一方「魔物プレイヤー」はフロアの構造とトラップ、ゴールの位置を把握でき、フロアを徘徊する強力なモンスターの設置も行える。

なので、俺には6人の探索者キャラクターが迷宮内の小さな部屋にいる様子しか分からない。


このゲームは開幕での所持情報が多いことからも「魔物サイド」の方が有利なので、基本的には魔物が勝つようになっているという。

なので探索者が魔物側に負けるとサイドを交代してゲームを続けていくらしい。

そんな状況の中、先に探索者サイドで勝ったほうが勝ちということである。


システムによるゲームフィールドの作成が完了し、俺達はそれぞれ「ゲーム準備」をすることになった。

「ゲーム準備」とは、探索者サイドは6人の「ロール」を決め、魔物サイドは4体の「魔物」を選んで設置する時間である。


「ロールは自分で選べるんだな」


俺達が迷宮に入ってすぐにロール選択をした時と同じような感じである。

俺は今までの迷宮での経験とを生かして探索者たちのロールを選ぶことに。

その6人の担当するロールは、


・メイン盾である「ナイト」

・回避盾である「ウォーリア」

・迷宮内のトラップ解除を担当する「スカウト」

・魔法アタッカーである「メイジ」

・回復魔法を使う「プリースト」

・迷宮情報を操る「トラバドール」


であった。

俺が選んだロール情報は、現時点ではミシュラには伝わっていない。

準備段階で「魔物サイド」に「探索者サイド」のパーティ構成が発覚すると、その構成に対応するための魔物を配置されてしまうからだ。

なので、彼女は準備段階である程度俺が選ぶであろうロールを予想する必要がある。

このへんの読み合いが「探索者サイド」で「迷宮戦争」で勝つためには必要になってくるのだろう。


「先生、こちらは準備できましたよ」


視界に「相手プレイヤーの準備が整いました」と表示される。

俺もロールを選び終えたので、すぐに「準備完了」の項目を選択した。

お互いに準備が完了すると「GAME START!」と表示される。

俺が選んだロール情報と、ミシュラが選んだエネミーの情報がお互い確認できるようになった。


「トラバドールですか……」


俺の構成を見て、その中にトラバドールを発見した彼女は「戦闘向きではないですよね」と零す。

俺も彼女が選んだ「フェアリークイーン」という魔物を見て似たようなこと感想を持つ。

「妖精の女の子」といった容姿の可愛らしいキャラクターであり、とてもじゃないが他の極悪そうな魔物たちと肩を並べるような雰囲気ではない。

俺のパーティを打倒すべくミシュラが選んだ4体の魔物は次のようであった。


・ケルベロス:三つ首の巨大な狼。3つの頭がそれぞれ独立した思考をしており、凶悪な物理攻撃の他、魔法攻撃も同時に行ってくる。アタッカータイプの魔物。

・ドリルワーム:フィールド上の壁を破壊して探索者に奇襲をかけることが出来る。奇襲に成功すると、そのまま探索者を撃破することが出来る。ディフェンスタイプの魔物。

・ジャイアントラッド:巨大なネズミ型の魔物。迷宮内の通路一杯に広がる巨体は、探索者たちの迷宮探索の邪魔である。タンクタイプの魔物。

・フェアリークイーン:迷宮内を素早く移動することが出来、戦闘中の魔物の元へ駆けつけて回復魔法を扱うことで他の魔物を援護する。ヒーラータイプの魔物。


よくよく説明を見てみると、意外と彼女の選んだ魔物のうちの一体である「フェアリークイーン」がなかなか厄介そうであり、俺は先ほどの考えを改める。

というか、どれも超恐ろしそうなモンスターばかりであり、実際に迷宮内で出会ったら苦戦しそうな奴らだった。


「それじゃあ始めましょうか!」


お互いの情報が出揃ったところで、いよいお俺達の迷宮戦争が始まった。

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