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異世界に転生して時間魔法しか使えない俺  作者: けろ
第二章 迷宮都市編
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第四十八話 ジャガイモのちから



ポイントを消費して「キャンプ設置改」を習得した俺達は、早速外に出て技能を使う。

スキルを使用すると、今まであったキャンプが消えて、デカイ倉庫とコテージのようなものが誕生した。

目の前で起きた瞬間建造に驚きつつも、俺達は倉庫の中へと入っていく。


「すごい広いですね!!」


天井も高く、工場のような見た目の建物に興奮した様子のミシュラは、中央に焚き火がある大きなテーブルの周りを走り回っている。

迷宮での彼女は学院での物静かなイメージとは違い、天真爛漫な少女のような振る舞いを多々見せるのだ。

アンデルスと俺は、建物の壁際に設置された「ワークスペース」を見つけて沸き立つ。


「作業台があるぞ!!」


主に野営と生産を担当する俺達は、今まではキャンプの端に作ったお手製の土と金属の台の上でいろいろと作業をしていたのだ。

だが、この改良型キャンプには鉄製の頑丈な机と椅子が設置されているのである。

キッチンなどもあった屋内キャンプの中を一通り見回した俺達は、キャンプの建物内にある扉を開けて室内へと入っていく。


「うわあ!普通のおうちみたいですね!」


ドアを開けて最初にコテージ内に入ったミシュラが感想を漏らす。

彼女に続いて中へと入っていった一同も似たような言葉を述べる。

玄関から入ってすぐの短い廊下を歩くと、向かい合わせになった3人がけのソファーが設置されたリビングへと俺達は通された。

天井には蝋燭がたくさん刺さったシャンデリアのようなものが設置されている。

壁際には窓も設置されており、もちろんカーテンもついているので夜は外から見られることもない。


「すごいですね、リビングですら私が住んでいる部屋よりも明らかに広いです……」


エイレネがエルメリア国内に借りている部屋よりも圧倒的に広いですと言う。

どうやらもともと孤児院出身のエイレネは俺と同じ庶民的な感覚を持ってるらしく「こんな大きい家に住めるのですか……」と迷宮効果に驚いている。

反対にグレート金持ちのラズメリノとアンデルスは「まあ、小さめの別荘くらいですわね」と感想を述べる。

たしかラズメリノとアンデルスは大貴族の生まれなので、実家がお屋敷の可能性が高い。

そんな彼らからすると、これくらいの規模では驚かないのかもしれない。

ミシュラとルークの実家は商人と中流貴族なので「実家よりは小さいですね」と言っている。

日本人の俺の感想としては「6LDK」程度の一戸建てを思い浮かべてしまうので「豪邸じゃねえか……」とエイレネと似たような感想を持つことになる。

俺もエイレネと同様に宿屋の手狭な部屋暮らしが長かったので、迷宮効果にただただ驚くばかりであった。


軽く家の中を見てまわった俺達は、当初の目的であるジャガイモの様子を見に行くことにする。

雨を凌ぐために人数分の防水マントを購入した一同は、キャンプの外へと出て農場へと向かう。

農場とは言っても小さな畑があるだけなので、キャンプのすぐ側にジャガイモが生息していることになる。

雨が打ちつける土の上を少し歩き、俺達は農場設置で作った畑にやってきた。


「この伸びた植物がジャガイモですかね?」


地面から伸びる茎を手で引っ張っているミシュラ。

たしかに俺が植えた種の辺りから伸びているから、恐らくこれがジャガイモであるだろう。

パーティメンバーで次々と生えているジャガイモを引っ張っていくと、特に抵抗を感じることも無く「アイテム」としてジャガイモが収穫されていく。

普通は芋掘りをしなければいけないが、迷宮内ではそのようなことをする必要はないらしい。

ジャガイモの種6人分で126個というとんでもない数のジャガイモが収穫できたので、俺達は再びキャンプの中へと帰ることにする。


「この迷宮の一人前の基準が良く分からなくなってくるな……」


確かにこれほどの量が収穫できるのであれば、あの強気な値段設定にも頷ける。

ジャガイモの量に驚いた俺達は、少し雨に当たりながらも工場のようなキャンプ地へと戻ってきた。

防水マントでガードできる雨は6割程度らしく、少し髪に水気を帯びている一同。

中央に設置された焚き火の周りにあるテーブルに着き、体を温めることになる。

そもそも、背中につけたマントで頭上から降り注ぐ雨粒を無効化できる理屈も分からないが、便利なのであまり気にしないことにする。


キャンプ内に足を運んだ俺達は、早速今取れたジャガイモと干し肉を使って料理を作ることにした。

大量に所持しているいくらか使い人数分の「小麦パン」を購入することに。

久しぶりにパンが食べられることに喜ぶミシュラやエイレネは、既に食卓について和気藹々としている。

一方キッチンで「食品加工」を利用して材料を調理する俺は、ジャガイモのメニューを見てあることに気づく。


「ジャガイモの調理メニューが「ゆでる」と「焼く」しかないぞ……?」


磨り潰したり、油で揚げるといった項目が無いことに驚いた俺は、ある可能性について考える。

「キャンプ設置」に改良型があったように、「食品加工」にも改良型があるのではないかと思ったのだった。

もしかしてとスキル習得リストを確認してみたところ「食品加工改」というものがメニューの中にあることを見つける。

一時調理を中断して、俺はテーブルに着く一同の下へ向かう。


「皆聞いてくれ、トラバドールの技能に「食品加工改」というものがある」


これを習得することで料理の幅が広がるということをメンバーに伝えると、「是非習得しましょう」ということになった。

必要スキルポイントが 10000 ポイントと多いが、食事は迷宮内での数少ない楽しみであるので、一同はケチることなく「食品加工改」を習得することにする。

「食品加工改」を覚えた俺は、ついでに「調理素材セット」の購入も提案した。

「調理素材セット」とは、補助的に使うための「油」や「砂糖」「塩」、「片栗粉」「小麦粉」などの素材がつまったアイテムである。

もちろん、料理のメイン素材として使えるほどの量は入っていないので、「小麦粉」で「パン」を作ったりすることは出来ない。

「塩」に関しては以前購入したものとかぶってしまうが、そろそろ残量も減ってきていたので特に気にならない。


「おいしい料理が増えるなら問題ないです!!」


勢いよく手を上げて答えるミシュラであるが、その瞬間に可愛らしいお腹の音が鳴り響き、恥ずかしそうに顔を染める。

和やかなムードの中、提案が認められたので、俺はアイテムを購入した後再び料理を再開するべくキッチンへと戻る。


「これで調理可能なメニューが増えているはずだ」


技能習得後に改めてジャガイモの加工先を確認してみたところ、先ほどとは異なるラインナップになっていた。

「フライドポテト」に「マッシュポテト」、「揚げイモ」「ポテトチップス」に「イモ餅」まで存在する。

俺は大量にジャガイモもあることなので、とりあえず一通り作ってみることにした。

メニューにある料理を作り終えて、引き続き「干し肉」の準備に戻る。

「干し肉」をいじっている時にもあることに気づく。


「肉の復元っていうメニューがあるぞ……」


驚くことに、「食品加工改」では「干し肉」から「魔物の肉」へと戻すことが出来る機能がついているらしい。

これによって、魔物の肉をもっていないはずの朝食でも普通の肉が食べられるようになることになる。

試しに一つ干し肉に「食品加工改」を用いてみたところ、いつもの見慣れた肉へと姿を変えた。


「原理とか良く分からんけど、迷宮って便利だな」


なんだか良く分からないうちに肉が生成されていたので、あまり気にすることなく食卓へと運んでいく。

テーブルで待っていた一同のもとにも、キッチンから流れる「ポテト」の香りが届いていたようであり、待ちきれないといった様子のミシュラが食器を運ぶのを手伝うために立ち上がる。

他のメンバーもミシュラに続いて立ち上がり、テーブルへと調理済みの食材の乗った皿を運んでいく。

全員分の皿がいきわたったところで、漸く俺達は朝食を食べ始めることになった。


「それじゃあ食べましょうか!」


ミシュラが朝食開始の合図を出し、一同はフォークを手に取り食事を始める。

普段あまりジャガイモを食べることがないという俺とエイレネ以外のメンバーたちは、机の上にある良い匂いのするジャガイモ料理に戸惑う。

彼女達の反応が珍しく見えるのも、この世界ではジャガイモはあまり食べられていないということが理由らしい。

特に、上流階級の貴族や豪商達がジャガイモ料理などを食べる機会はほぼ無いに等しいのだとか。

痩せた土地でも生えるジャガイモは、歴史的にも有名な植物ではあるらしく、政治の勉強をしているミシュラや博学なエイレネはジャガイモにまつわるエピソードなんかも知っているという。

だが、そういった泥臭い歴史があるジャガイモは、あまり貴族向けの食べ物ではないらしく、もっぱら庶民の食べ物であるのだ。

また、あまり農作物について研究が進んでいないエルメリアでは、おいしいジャガイモはあまり市場に出回らないという。


「この薄っぺらいものもジャガイモなんですか先生?」


フォークの隙間にポテトチップスを挟んで観察するミシュラに、俺は「ジャガイモをスライスして揚げたものだ」と答える。

アンデルスやラズメリノも「ジャガイモをスライスする料理なんてあるんだ」と驚いているようであった。

普段からジャガイモを時々食べるエイレネも「こんなに調理方法があるのですね」と興味深そうにイモ餅をつついていた。

俺が料理について一頻り説明を終えたところで、意外と好奇心旺盛なミシュラがフライドポテトを食べる。


「なんですかこれ!?とてもおいしいです!」


ポテトを次々と口へと運ぶミシュラ。

外はカリカリ、中はホクホクの塩味が利いたフライドポテトは、迷宮においてなかなかに反則的な食べ物であった。

今まで塩で焼いただけの肉を食ってきた一同は、調理されたジャガイモ達に舌鼓を打つ。

他の料理も一通り食べたメンバーはそれぞれ気に入った食べ物があるみたいである。

エイレネとラズメリノは「イモ餅」、ミシュラとルークは「フライドポテト」、アンデルスは「ポテトチップス」がお気に入りであるようだ。

また、肉とマッシュポテトをパンに挟んだサンドイッチのようなものも好評であった。

「迷宮での食生活の方が充実しています!」と答えるエイレネや「実家だと薄味の料理だから、先生の作る料理の方が好きだな!」と言うルーク。

あくまでも食品加工による賜物であるので、俺が作った料理と言っていいのかは怪しいが、喜んでくれているのでそこは気にしないことにした。


朝食を取りながら午後の予定について相談する俺達。

外は生憎の迷宮嵐であるので、昨日までのように外で狩りをするというわけにも行かないので困ったものである。

転送装置もキャンプのすぐ近くにあるので、別に雨の中を長距離移動する必要も無いということで本格的に今日やるべきことは無い。


「なあ、今日は一日休暇にするっていうのはどうだろう?」


移動も別に明日にまわしたところで何の問題も無さそうなので、俺が今日一日を休日にする提案をしたところ、パーティメンバーからも了承を得ることが出来た。


「それじゃあ、思い思いに過ごすことにするか」


こうして俺達の「迷宮内休暇」がスタートした。

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