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異世界に転生して時間魔法しか使えない俺  作者: けろ
第一章 異世界生活編
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第二話 はじめての魔法の習得

今回少し説明っぽくなっています。雰囲気だけ追って読んでいただければ幸いです。


一向に光る気配のない魔法書の目次を見て、俺はほとんど魔法の習得を諦めていた。

だから、最後の最後で古代幻想魔法である「時間魔法」の欄が光り輝いたときは思わず声が出てしまった。


「うお!!マジで光ってるぞ!!!!」


これが夜中だったら恐らく隣の部屋の住人に壁を殴られていただろう。

それくらいには興奮して大きな声を出してはしゃいでいた俺がいた。

我ながら不気味な動きをしながらひとしきり喜んだ後、早速魔法書の「時間魔法」のコーナーを読んでみることにする。

もちろん、適性が無くて使えない魔法たちのページは飛ばして、いきなり時間魔法のページから読み始めることに。

手始めに時間魔法の記事のイントロダクションに目をやる。


「なになに……」


時間魔法の章の前書きには次のようなことが書かれていた。


・時間魔法とは古代魔法の中の幻想魔法のカテゴリに属する魔法である。

・時間魔法は幻想魔法の中でも特殊な種類の魔法であり、幻想魔法の中でも特殊な魔力の構築が必要である。

・時間魔法は世界に流れる時間の連続性に干渉する魔法であるため、詠唱や魔方陣といった時間的に非連続的な発動方法では使えないらしい。それゆえ他の魔法とは魔力の練り方が異なるそうだ。


つまり簡単に要約すると、所謂「無詠唱」と呼ばれるジャンルの発動方法を取らなければ、時間魔法を使えないということらしい。

理屈では、キーワードや文章を読んで魔法を発動する「詠唱」、地面や本などに描かれた模様を介して魔法を発動する「魔方陣」だと「発動開始から発動終了までのタイムラグが存在するのでうまく時間世界に魔力を送り込むことができない」ということらしい。

何を言っているのか俺にはさっぱり分からなかった。


「無詠唱はおろか、魔力の練り方すら分からんぞ?そもそも、俺に魔法が使えるだけの魔力が存在するのか?」


ギルドカード登録や魔法書の適正診断で俺の魔力が微量ながらも使われたことから、魔力が自分の体内に存在していることは理解している。

しかし、実際に魔法を使うだけの魔力量が存在しているかどうかと聞かれたら分からない。

むしろ魔法の練習はおろか、魔力を使ったことすらない俺の体内に十分な魔力があるとは考えづらい。


「とりあえず理論的な部分は後回しにするとして、どんな魔法が使えるようになるのかだけ見てみるか」


俺は難しそうな説明部分をひとまず飛ばすことにした。

数ページめくると、いよいよ挿絵つきの魔法書紹介ページへとやってきた。

他の種類の魔法にはあるのか分からないが、詠唱と魔方陣の欄が空欄になっており、その代わりに無詠唱の項目にびっしりと魔法の説明が書かれている。


「なになに、最初の魔法は……」


記念すべき時間魔法最初の魔法は「ロールバック」の魔法であった。

魔法の簡単な説明としては「ありとあらゆるものの時間を巻き戻すこと」であるらしい。

おいおい、初歩の魔法からとんでもないチート魔法の匂いがするぞ。

時間を巻き戻す対象は、この世界に存在するものならばなんでも対象にできるらしい。

人間はもちろんのこと、自然や魔法機械、世界全体を流れる時間すらも巻き戻せるらしい。

ただ、対象が強い魔力抵抗力を持っている場合は魔法の適用が難しくなるらしい。


「なるほどな、確かに魔法に対して無抵抗な奴ばかりではないだろうからな」


魔法使いや魔物なんかは魔力の扱いに長けている場合が多く、そのまま100%魔法攻撃が通る可能性は0に近いらしい。

実際の戦闘風景では、魔法に対するバリアである「魔法障壁」を使うシーンがよく見られるという。

このように補助魔法によって半分以上の威力をカットされてしまうことがほとんどらしい。

だが、ここで時間魔法が他の魔法と異なる点が強調されることとなる。

時間魔法は「無詠唱」でしか発動することができなかったはずだ。

そこで、戦闘中に実際に魔法を防御する場面を想像してみてほしい。

「詠唱」や「魔方陣」での魔法攻撃は相手がよほど上手に隠さない限り発動タイミングを把握できてしまうだろう。

つまり、それに対する防御対策は比較的立てやすいということになる。

なので魔法使い同士の戦いは、基本的に相手より先に敵の攻撃魔法を防御し損ねた方が負けるというものになるらしい。

このように、「魔法は戦闘において意識的に防御するもの」という前提で話を進めることにする。

すると、時間魔法を発動するための「無詠唱」というものがいかに対人戦においてやばい代物かが分かるはずだ。

これまでの情報を踏まえた上で考えると、予測して対応することが出来ないため、基本的に無詠唱の魔法は防ぐ手段が無いということになる。

究極の対策としては、全身に常時防御魔法を展開しておくという方法が考えられなくも無い。

しかし、常時魔法障壁を展開しておくということは、攻撃に使う魔力の大半を常にロストした状況を作るということになる。

すなわち、魔法使いが時間魔法を扱うものと対峙する際には、普段よりも大幅に弱体化した状態で挑まなければならないということである。

これは事実上魔法使いを無力化することになる。

加えて、肉弾戦を得意とする剣士や格闘家などは魔力抵抗が苦手な場合が多く、特に無詠唱に対する対策など取れないものがほとんどである。

なので、時間魔法を扱う魔法使いはもはや1体1の戦闘においては無敵の存在であるらしい。


「・・・・・・これまじ?」


俺は魔法書に書かれていた説明を読んで、喜びというよりも恐怖を感じていた。

魔法書の説明によれば、どれだけ強い、それこそ世界最強と言われるような人間でさえ時間魔法の前では無抵抗のままやられてしまうことになる。

俺は、自分が人間を超越したやばい存在に成り代わってしまったことを理解したのである。

俺がその気になれば、誰にも気づかれること無くこの街の人間を皆殺しにすることも容易いという事実に驚きを隠せない。

しかし、俺のそんな心配も「時間魔法の章」にかかれている著者のコメントを読むことでいくらか解消されることになる。


コメントには、時間魔法はその干渉性の高さから、使用時の魔力量が他の魔法よりも遥かに多いと書かれていた。

ゆえに、実際には並みの魔力の持ち主であれば、発動効果はせいぜい魔力抵抗の無い壊れた機械を修理する程度であるという。

だが例外として、その昔現れた時間魔法を操る魔王クロノスは人間一人の時の流れを止めて不老不死にしたり、永遠に動かなくする程度の能力があったらしい。

過去に存在した魔王ちょっとやべえぞ。

というか、魔王とか存在するのかこの世界。

まあしかし、強大な魔力を持つものが時間魔法を扱えば恐ろしい結果を生むという俺の認識は間違いではなかったようだ。


「でもまあ、俺が世界を滅ぼせるような能力を持ってなかったと分かって一安心したわ」


やはり小心者であった俺は、強大な力を持っていないことに妙に安心していた。

俺に世界を破壊するような力が無いということが分かったので、あらためて魔法が使えるという事実に沸き立つ。

早速魔法を使ってみたい衝動に駆られた俺は魔法書の目次へと戻り、「無詠唱」のやり方を探す。

目次の中から無詠唱の項目を見つけた俺は早速読むことにした。


しかし、残念なことに無詠唱の項目には詳細な説明は載っていなかった。

というよりもむしろ、ほとんど無詠唱に関する情報が載っていなかった。

どうやら、この本の筆者は無詠唱で魔法を発動することができないので、無詠唱のやり方を詳しく書けないというのがその理由らしい。

なので、無詠唱の説明も他人からの情報であったり、噂の域をでないような眉唾な情報しか載っていなかった。

さきほどの時間魔法の説明欄にも「なんとか古代書から解読できた唯一の魔法」と書かれていたことからも、無詠唱やそれに関する魔法は情報が少ないことは分かる。


「ずいぶんといい加減な説明だな・・・・・・」


魔法書に書かれている無詠唱のやりかたの説明は、なんとも感覚的な説明であった。

「バッと力を込めて、ガッと魔力を練りこむ」とか、「詠唱が成功したときのあの感覚を自力で生み出す」とかそんなのばかりだった。

俺が読んでいて一番分かりやすいなと思ったのは、魔法研究家エリスという人の説明で


「全身の血液の流れとは逆方向に流れる魔力の流れをイメージし、その魔力を少しずつ外部に流すイメージ」


というものだった。

魔力を外へと流すイメージというのが、自力で魔力を消費するイメージにそのまま使えるということであるらしい。

そして、その際に正確に魔法が引き起こす現象をイメージすることで魔法が発動するらしい。

ただ、この際気をつけなければならないのが、魔法の発動イメージを「精確」に練る必要があるということらしい。

イメージの精巧さが不十分で、手のひらから火球を出すイメージしたはずが、いきなり手首が爆発して片手を失ってしまった魔法使いもいるらしい。


「なにそれ、超怖い」


無詠唱の使い方は以上の説明以外に意味を成しているものが無かったので、もう一度時間魔法のコーナーへともどる。

俺はページをめくり、時間魔法の使い方説明の欄を見てみたが、こちらはこちらでまた一癖ある内容が書かれている。

初級時間魔法「ロールバック」の使用方法の欄に、「時を知らせる鐘が、ある方向に歩き出すイメージをすることで魔法が発動できる」と書いてあったのだ。


「なんかこの表現おかしくないか……?」


俺はこの表現に大いに疑問を感じた。

いくら感覚的に発動方法を記述しているとは言っても、この説明では鐘が自分の足で動いているように思えてしまう。

そして、こんなことをイメージしたところで魔法が発動するイメージなど到底沸かない。


「まさか・・・・・・」


このとき俺はいくつかの仮説を思いついた。

仮説その1、「この世界では鐘が自分の足で動いている」

仮説その2、「この世界の人々は 時間軸 というものの存在を知らない」

仮説その3、「古代魔法の説明を翻訳する際に誤訳した可能性がある」

という3つである。

仮説その1に関しては、さすがに異世界といえどもありえないだろうと思う。

俺的には仮説その2と3がこの違和感の説明としては可能性が高そうだと思った。

つまりは次のようなことが起きているということである。


・現代異世界人は、「時間が世界に空気のように存在するものであること」、つまりは「 時間場 のようなものが普遍的に存在している」という事実を知らない。

・「時間が過去へとさかのぼるイメージ」という表現の誤訳である可能性。


時間場に関しては、高校物理で習った重力場や電場のようなものだと思ってもらっていい。

たしかに、この世界では時間の流れを感じる要素が少ないと思ったのは間違いのないことである。

この世界には時を知らせるシステムが、日の出の鐘、南中の鐘、日没の鐘以外に存在しない。

街中や建物の中にも時計のようなものは存在しなかった。

こういった背景であるので、現代日本に生きる者に比べると、異世界の人々の時間に対する認識は極めて曖昧なものであるに違いない。

また、それに加えて難解な古代語の翻訳を通して、ただでさえ分かりにくいものがさらにわけの分からないものへと変換されてしまったというわけだ。


「これはもしかするともしかするかもしれないぞ……」


時間魔法は日本人である俺が使う分には、それほど扱いが難しくない可能性がでてきたぞ。







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