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異世界に転生して時間魔法しか使えない俺  作者: けろ
第二章 迷宮都市編
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第四十二話 激戦ユニークモンスター!



ユニークモンスターと戦う準備を済ませた俺達は、早速強敵のいる場所へと地図を頼りに進む。

地図上の髑髏の部分に近づくとユニークモンスターらしきものを発見した。


「あれがユニークモンスターか……」


地図上の髑髏にはウルフの群れのようなものがいた。

十匹以上いるウルフにも驚くのだが、先ほどの大群に比べたら可愛いものだ。

俺達が驚いたのは、ウルフの群れの中にいる一際でかい奴の存在である。

普通のウルフがその辺を散歩している犬くらいのサイズだとすると、ユニークモンスターと思しき奴はマイクロバス程度のサイズ感であった。

近くにある木の陰から魔物の様子を伺う俺達は、ユニークモンスターに視線を合わせて「敵情報」を取得する。


「グレートウルフ……」


ユニークモンスターの名前は「グレートウルフ」であり、見たまんまウルフのボスといったような魔物であった。

全身は銀色の毛で覆われており、その内側には引き締まった筋肉が見られる。

口から覗く牙は鋭く、ルークの盾であろうが貫通するのではないかと思えるほどであった。

四肢の先には鋭利な爪が伸びており、その眼光は黄色く光っているように見えた。


「本当にあれと戦うんですか?」


足を震わせながらグレートウルフを指差して言うミシュラ。

実際、敵を目の当たりにした俺も今すぐここから逃げ出したい衝動に駆られる。

「ダメそうだったらすぐに逃げましょう」というエイレネやルークに引っ張られるようにして、俺達は覚悟を決める。

こういった場合、先制攻撃を遠くから仕掛けるのが有効であるので、エイレネと俺があの巨体に「ファイア」を打ち込んだら戦闘開始という具合で行くことになった。


「準備はいいですか師匠?」


妙に勇ましいエイレネに対し「お、おう」と情けない返事を返す俺。

パーティ全員にも確認を取り「いきますよ!」と声をかけてファイアを打ち出すエイレネ。

それを合図にルークとラズメリノがメンバーの前に飛び出し、その後ろに全員が入る。

銀色の肉壁にぶつかったバスケットボール大の火球が爆発し、一瞬グレートウルフがのけぞった。

その際に「65」と赤い数字が出たことから、それなりに巨大狼にダメージが入っていることが分かった。

ビビッて発動がワンテンポ遅れた俺のソフトボール大の火球は、グレートウルフの体にヒットはしたものの「1」というクッソ情けない数値を叩き出す。

火球があたった場所を前足で払うグレートウルフの仕草を見て、パーティ内に微妙な空気が流れる。


「く、くるぞ!!」


無理やりその場を誤魔化した俺は、グレートウルフが空に向かって咆哮をあげたことに驚いてしまう。

咆哮に一瞬気を取られてしまったが、ルークが構える盾も咆哮の衝撃で少し押されているのを見て「これは仕方ない」と何故か少し安堵する俺。

俺は慌てて盾の後ろからパーティに指示を出すと同時に、咆哮によってどこからか現れたウルフたちと一緒に、グレートウルフが俺達に向かって突撃してきた。


20mはあったと思われる距離を一瞬でつめてきたグレートウルフの攻撃をルークが盾で受け止める。

グレートウルフの激しい突進だったが、なんとルークの盾にぶち当たると仲間の狼たちのいる方へと跳ね返っていった。

それを見たラズメリノは敵が一瞬「スタン状態」になっているのを見て、「ブレイクラッシュ」と「スラッシュ」を発動してグレートウルフを素早く切りつける。

隙を突かれたグレートウルフは体に攻撃を受けるも、特に痛そうな素振りも見せず、すぐに立ち上がってきた。

グレートウルフの頭上には「17」「16」という赤い数字が出たことから、一応ダメージは通っているが大した値ではないということがわかる。


「なんて硬さですの!?」


いつもウルフやラビットを切りつけているラズメリノは、グレートウルフを攻撃した際に感じた鈍い衝撃に戸惑っている。

攻撃後すぐにルークの盾に隠れた彼女は「これは厳しいかもしれませんわ」と零す。

今の攻防ワンセットで1ターンだとカウントすると、このターンは99ダメージ入れたことになる。

なんだかいけそうな気がしてきた俺だったが、その幻想もすぐに破壊されるのだった。


「おい先生、あいつ味方を食っているぞ……」


ルークの視線の先には、先ほど咆哮した際に増えたウルフを次々と食らうグレートウルフの姿があった。

そして、驚くべきはその頭上に現れる「50」「50」という緑色の文字である。

どうやら、グレートウルフは咆哮によって呼び出したウルフを食べることで、HPを無限に回復することが出来るらしい。


「これって、もしかしてやばいのではないですか?」


俺の袖を引っ張って青い顔をするミシュラ。

彼女の発言の意図を理解している一同は、撃退する方針から撤退する方針へと迅速に切り替えた。

このまま戦い続けると、「此方の盾がジリジリと削られ、最後には敵の一斉攻撃を食らって死亡」という未来図が見えることは想像に難くない。

ルークも盾をしまい、全員で後方へと走り出す。


「逃げるんですよ!!!」


エイレネはファイアを振り向きざまにグレートウルフ目掛けて放ち、あたったことも確認せずに走り出す。

敵の攻撃が来るタイミングでルークが後ろを振り向き盾を張り、そのままシールドバッシュで敵をスタンさせる。

そして、再び全員で転送装置の方へと全力で走る。


「やっぱり無理だったんですよおおおおお!!!」


一人だけ「商人ダッシュ」のスキルを駆使して先頭を走り抜けるミシュラ。

素早さの関係上、男三人が最後尾を走る構図になる。

ルークは盾で攻撃を防ぎながら走ることができるが、俺とアンデルスは真後ろを掠めるグレートウルフの爪に生きた心地がしない。


「畜生!!トラバドールの足がおせえええ!!!」


俺はこの瞬間ほど「トラバドール」を選んだことを後悔することはなかった。

隣を走るアンデルスも「こんなことなら「スカウト」にしとけばよかった!!」と文句を言いながら全力疾走している。

必死の形相で走る俺達は、前方に大量の肉が設置されているのを発見した。


「あああああ!!!落とし穴だ!!!!」

「やべえぞ!!!」

「誰だよ!!こんなところに落とし穴作ったのは!!」


なんと、不幸にも俺達の走る先は先ほどの狩りで作った落とし穴が待ち受けていたのだ。

このまま走り続けると、俺達は自分達で作ったトラップに引っかかり串刺しになってしまう。


「アンデルス!!橋を作ることはできないか!?」

「無理だよ!!走りながらなんて作れないよ!」


俺はアンデルスに落とし穴を回避するための橋が作れないか問いかけるが、帰ってきた返答は「無理」という無慈悲なものであった。

このまま落とし穴を迂回しようとすると、俺達はグレートウルフの攻撃を避けることができなくなる。

なので、考えられる選択肢としては、


①このまま落とし穴に飛び込む。

②グレートウルフを相手しながら落とし穴を迂回する。

③ここで迎え撃つ。


の3パターンである。

「どれにするんだ!?」と走りながら相談する俺達だが、どう考えても②以外の選択肢はありえないので落とし穴に対して二手に割れて走ることになった。

3人で横並びに走っている以上、3人ともが同じ方向へ逃げると内側を走る人は遅れてしまうし、外側を走る人は大回りになってしまう。

なので、二つに分かれることでそのリスクを減らそうという作戦である。


「先生、死んだらちゃんと地上に戻れるよね?」


なんだか恐ろしいことを横で呟くアンデルス君。

そんな縁起でもないことを言うんじゃない!!と思った俺だが、実際に死んでしまったらどうなるのか考えると迂闊に死ぬことはできないなと怖くなった。

攻撃を食らっても特に痛みは感じないが、死んだ瞬間に関してはその限りで無い可能性が否めないからだ。

今まで受けたダメージ分の痛みをいっぺんに食らう可能性もある。

それに、ガイルさんや迷宮探索科の職員達も迷宮内で死んだ時の感想をあまり話したがらなかった点からも、死ぬ瞬間に関しては何らかの不快なアクションがあるのかもしれないと予想される。


「いいか?1、2の3で分かれるぞ?」


落とし穴も目前に迫った俺達は、俺の合図で二手に分かれる。

落とし穴に向かって左側には俺が、右側にはアンデルスとルークが走っていった。


「ああ!!あいつ汚え!!ルークのいる方に逃げやがった!!」

「そりゃあ当然だよ先生!!どうして先生の方に逃げるんだよ!!」


俺がアンデルスの立場でも、ルークのいる方へ逃げていたのでこればっかりは仕方ない。

「俺は一人でも攻撃を避け続けてやる!!」と意気込んで全力で腕を振り走る。

だが、俺の後方からは魔物が走ってくる音がしてこないので、どうやら俺は賭けに勝ったようであった。


「ってことは、あいつらの方へ行ったのか!?」


俺の方へきていないということは、アンデルスとルークが走って逃げた方向へグレートウルフも追いかけていったということになる。

立ち止まって確認するわけにも行かないので、とりあえず俺は走りながら横を見る。

すると驚くことに、ルーク達の後ろにも巨大な魔物の影は見えなかった。


「あれ?どうなってんだ?」


こういう場合は突然自分の影が大きくなっていき、上空から巨大な狼に踏み潰される展開だったり、既に前方に先回りされていたりする展開がおなじみである。

そういったお約束的な展開なのではと焦った俺は、全身に嫌な汗をかきながら走る。

俺もルーク達も全速力で走り続け、漸く落とし穴を越えたくらいのタイミングで聞きなれたミシュラの叫び声が聞こえてきた。


「先生!!!グレートウルフが!!!」


一番先に転送装置の前まで到着していたミシュラが俺達に向かってなにやら叫んでいる。

彼女が驚いたように俺達の後方を指差しているので、まさかと思い一瞬後ろを振り返る。

しかし、驚くことにそこにはグレートウルフはおろか、普通のウルフさえいないことに気づく。


「!?」


俺達3人は声にならない声を出し、その場で立ち尽くす。

いったいどこに奴らは消えたんだ!?

「やはり上空か!」と思い空を見上げるが、そこにはバードの一匹すらいなかった。

戸惑うように周囲を警戒する俺達に追い討ちをかけるようにある現象が起こる。


「ウルフ を 倒した!」

「ウルフ を 倒した!」

「ウルフ を 倒した!」

「ウルフ を 倒した!」

「ウルフ を 倒した!」

「ウルフ を 倒した!」


視界いっぱいにシステムメッセージが広がる。

その光景を見た俺達は「まさか!?」とある現象が起こっていることを予測した。


「先生!!グレートウルフが穴に落ちました!!」


なんと、あの巨大な狼は落とし穴に設置された肉につられて、奈落の底へと落ちていったのだという。

こちらに向かって女子達が走ってくる。

彼女達はグレートウルフが穴に落ちたのをミシュラが確認したあと、俺達の方へと走ってきたという。


「まじか……」


俺達一同は穴の近くまで戻り穴の中を覗いてみると、そこには串刺しのまま咆哮をあげようとするがうまくいかないグレートウルフがいたのだった。



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