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異世界に転生して時間魔法しか使えない俺  作者: けろ
第二章 迷宮都市編
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第四十話 走れミシュラ!


落とし穴を作った一同は、実際に穴に沈んでいったウルフたちを見て「こんなんでいいのか?」と困惑したのだった。

呆気に取られてしばらく放心状態のまま時が流れる。

すると、またしても現れたウルフとラビットが穴へと落ちていく。


「ウルフ を 倒した!」

「ラビット を 倒した!」


それからもウルフやラビットが数匹穴に落ちていき、絶命することを繰り返す。

上空からバードも飛んできたので、肉に向かって移動する鳥をエイレネと俺が「ファイア」で打ち落とす。


「レベルが上がったから威力が上がったな」


先日までは小さく威力も無かった俺の火球は、レベルアップに伴い若干サイズアップとスピードアップを果たしていた。

無事に空中戦を制した俺達は「この作戦って完璧じゃね?」と落とし穴に対する評価を一新する。

作戦がうまくいくことが分かった俺達は、早速大規模な魔物狩りを始めるために動き出す。


「それじゃあ、ルークとラズメリノとミシュラはフィールド上から敵をかき集めてくれ」


俺の合図で3人はそれぞれ別の方向へと走り出し、残った3人は彼らの帰りを待つことに。

待っている間も魔物はちょっとずつ現れるので、ちまちまと鳥を狩ってはトラップを修理する俺達。

そんな作業を繰り返すうちに、空は紅く染まっていく。

キャンプを飛び出してから1時間以上経つが戻ってこない3人に、俺とエイレネとアンデルスは「あいつら大丈夫か?」と不安になる。

しかし、迷宮内ではメンバーが戦闘不能になるとシステムメッセージが出るので、それが出ていない以上まだ生きているということが分かる。


「師匠!!あれを見てください!!」


エイレネが突然大きな声を出して俺の肩を叩くので、彼女が指差す方向を見る。

すると、巨大な山のようなものが此方へと向かって動いてきているのを発見した。

俺とエイレネとアンデルスはその動く巨大な物体に驚き、「いったい何が此方へと向かってきているのだ!?」と緊張した面持ちで待ち構える。

此方へ向かってくる物体を良く見てみると、なんとその先頭を走っているのはルークとラズメリノであった。


「先生!!!大量に引っ張ってきたぜ!!!」

「クロノ先生!!ちょっとやばいかもしれませんわ!!」


死に物狂いで此方へと向かって走る二人のパーティメンバーが俺達の目に映る。

余裕など一切無いその表情から、後ろからついてきている巨大な山のようなものは魔物の群れであることが分かる。

しかし、その数は100や200ではなく、数千はいるのではないかと思われる。


「おいおい、いくらなんでも引っ張りすぎだろ……」


せいぜい100匹くらいだと思っていた俺達3人は、その数十倍のモンスターの群れを見て腰が抜けそうになる。

エイレネなんかは、その様子を見て尻餅をつく。

しかし、大量の鳥達を「ファイア」で落とさなければならないので、俺は彼女に手を貸して起き上がらせる。


「来るぞ!!」


ルークとラズメリノが落とし穴を迂回して此方へと走ってくる。

汗だくで鬼の形相で走ってくる彼らには、鬼気迫るものを感じた。

後ろについてきていた大量の魔物は、先ほどのテストと同様に次々と落とし穴に落ちては絶命する。

恐ろしい速度で「ウルフ を 倒した!」「ラビット を 倒した!」というシステムメッセージが流れ続ける。


「鳥の数が尋常じゃないぞ!!!」


千匹単位の鳥が一箇所の肉に群がる様子はおぞましいものであった。

映画などで良くある、死体に虫が群がるシーンを思い出してしまった俺である。

しかし、密集しているので「ファイア」一発で鳥の柱を爆撃でき、吹き飛ばされた大量の鳥達がトドメには至らないものの、落とし穴へと落ちていき絶命する。

順調にクールタイムを消化し、鳥を全滅させる俺達は落とし穴の真ん中に肉を再び設置する。

アンデルスのトラップ修理も終わったところで、ルークやラズメリノは「水を飲ませてくれ」と満身創痍であった。

俺とアンデルスは、落とし穴の近くにテーブルと水道を設置する。

席について休む二人は「生き返ったわあ」と水を美味そうに飲んでいた。


「これは俺の勝ちだろ?」

「いやいや、私の勝ちですわ!」


一息ついたところでどっちが多く引っ張ってきたかでもめる二人であった。

最終的に二人で巨大な魔物の群れを引っ張ってきたのだから、勝敗は曖昧なまま終わってしまったことになる。

「どれくらいポイントが溜まりましたかね師匠!?」とワクワクした様子で俺に問いかけるエイレネ。

他のメンバーも「楽しみだな!」とメニューを開きたそうにしていた。

既に狩りが終わったようなムードになっている俺達は「いっせーのーでで開きましょう!」とメニューを同時に開く約束をする。

しかし、次の瞬間ふと思い出したようにアンデルスが一言漏らす。


「そういえば、ミシュラはどうなったの?」


彼女がまだ敵を引っ張っていることをすっかり忘れていたのであった。

何気なく視線を草原の方へとやると、先ほどの魔物の群れとは次元の違うスケール感の壁のようなものが此方へ向かって迫ってきているのを見つける俺達。


「まさか……」


先ほどまでの戦勝ムードは一瞬にして消え去り、1万以上いるのではないかと思われる魔物の群れとその先頭を泣きながら走るミシュラを見て俺達は凍りつく。

「あの子一人で俺達の倍以上の数を引っ張ってきたぞ……」と青い顔をするルーク。

もはや俺達に逃げ場などないので、あの魔物たちが全員落とし穴に落ちくれることをただ祈るばかりだった。


「しぇんしぇええええええ!!!!!たすけてええええええええ!!!!!」


マジ泣きしながらも力強い腕の振りと、韋駄天のような走りを見せるミシュラ。

命からがらという表現が良く似合う様子で、なんとか落とし穴を迂回して俺達の元へと走ってくる。

走ってきた勢いのまま俺の胸に飛び込んでくるミシュラであった。

彼女の顔は涙やら土やら鼻水やらでぐちゃぐちゃになっていたようで、俺の胸元は滅茶苦茶に汚れてしまう。

俺の腕の中で泣かれていては「ファイア」が打てないので、ルークとラズメリノに引き剥がされた。


「おいおい、システムがぶっ壊れるんじゃないか?」


落とし穴に次々と放り込まれていくウルフやラビット達は、激流を流れる水のようであった。

いずれダムが決壊するのではないかと不安になるほどの勢いと量である。


「師匠!!鳥達も尋常じゃない量きてます!!」


俺とエイレネはクールタイムをうまく管理し、交互になるべく多くの鳥を巻き込み、落とし穴へと落とすようにする。

ダメージよりも爆発の範囲を意識して、鳥から鳥へと玉突き式に落とし穴へと落としていく。

決死の覚悟で繰り広げられる空中戦をギリギリ制した俺達は、遂にこの大規模な狩りに終わりを告げた。


「ふぅ、疲れましたね師匠」


ファイアをこれでもかというほど撃った俺達は、キャンプのテーブルに臥せる。

既に泣き止んで元に戻ったミシュラも「怖かった……」と震えていた。

ルークとラズメリノも「途中結構やばかったな」と魔物集めを振り返っている。

いったいこのフィールドのどこにこれだけの魔物がいるのか不思議でならないが、いるところにはいるものなんだなと思う一同であった。


「それじゃあ、早速ポイントを確認してみますか!」


「この瞬間のために命を捨てる覚悟で戦ったのだ!」と熱く拳を握り語るミシュラ。

学院での大人しく理知的な彼女とは異なる様子に、エイレネやラズメリノは「迷宮は人を変えますわ」と呟く。

簡易的なテーブルに着いた一同は緊張した面持ちでメニューを開くために準備する。


「準備は言いか?同時に開くぞ?」


パーティに緊張した空気が流れる。

そして、メニューを一斉に開いた俺達であった。


「獲得したスキルポイント 14530 に、獲得コネクトが 54360 だと!?」


一同は圧倒的な獲得ポイントとコネクトに驚愕する。

いったい何が起こっているのか分からないといった様子のミシュラやエイレネ。

当初の目標の 5000 スキルポイントを遥かに上回る獲得経験値に驚きを隠せない。


「やったぞ!!!!」


その場で飛び上がり喜ぶルークやアンデルス。

俺も思わず隣にいたエイレネの腕を引き寄せて抱きしめて喜ぶ。


「あの、師匠、その……」


俺に正面から抱きしめられて、顔を真っ赤にして恥ずかしがるエイレネを見て、俺は我に帰る。

「す、すまない!」とすぐに彼女から離れた俺だったが、エイレネは「あ……」と残念そうな声を漏らして此方に手を伸ばす。

それを見ていたラズメリノやミシュラが「先生ってば、喜びすぎですよ」とニヤニヤ笑う。

その後焦って取り乱しているエイレネや、彼女に謝る俺を見てパーティメンバーは笑って茶化す。

しかし、そんな平和な時間もあるシステムメッセージのせいですぐに終わりを告げることになった。


「この階層における条件を満たしたので、「ユニークモンスター」が出現しました!」


いきなり現れたメッセージに一同はその場で固まる。

「ユニークモンスターってなんだ?」という疑問がパーティ内で飛び交う。

エイレネがなにやら悩んだ様子で何かを思い出している。


「師匠、もしかしてこれはガイルさんの言っていた「危険な魔物」なのではないですか?」


迷宮に入る前の講習会で教わった「危険な魔物」なのではないかと俺に問いかけるエイレネ。

それを聞いていたミシュラが「危険な魔物!?」とおびえた様子で震える。

ルークやラズメリノも「大丈夫なのかそれ?」といった様子で不安を感じているようであった。

たしか、迷宮前講習では「ユニークモンスター」はある一定の条件を満たした時に現れる凶悪なモンスターであると聞いた。

ただ、もしも倒すことが出来たならば「レアなアイテム」を入手することが出来るとのことである。

しかし、どれほど強いのかも分からないので、迂闊に接敵するのも怖いものだ。


「どうしますのクロノ先生?」


不安そうに体を両手で抱くようにして佇むラズメリノ。

俺的にはなるべく危険を避けていきたいとは思うのだが、そもそもの俺達の目的が「アンティークアイテム」の回収なので、ここで強敵から避けていてはダメだと思うのも事実だ。

パーティメンバーと相談したところ、「今回入手したポイントとコネクトを使って準備して、いけそうだったら戦い、ダメそうだったらさっさと逃げて次の階層へと進む」という方針で決まった。


「よし、そうと決まったら早速準備をするぞ」


ユニークモンスターと戦うことを決めた俺達は、戦闘準備に入るのであった。

いよいよ強敵との戦闘です!

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