表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転生して時間魔法しか使えない俺  作者: けろ
第二章 迷宮都市編
39/55

第三十六話 迷宮での日常



「ファイアの書」によって魔法を習得した俺は、魔物狩りに参加できるようになり急激に作業効率が上がった。

それによって得られたスキルポイントで「探索地図」という便利技能を習得したのである。


夕食もとり終えたので、早速覚えたての「探索地図」を使ってみることにした。

俺がメニューから「探索地図」を使用すると、目の前に両手で持てる程度の大きさの紙が現れる。


「これは便利だな」


紙面を見てみたところ、現在俺達がいる場所は青い点の集合で示されていた。

そして、肝心の「次の階層へのポータル」がある場所は赤色のマーカーが地図上に設置されていることがわかる。

それらに加えて、俺が設置した「キャンプ」と「テント」の位置もアイコンが表示されており把握することが出来た。


「アンデルスの作ったトイレも色が若干変わっているから分かりますね」


となりで俺の持つ地図を覗き込んでいたミシュラが言う。

一面が緑色の地図の表面は、どうやら空中からこの草原を写した様子であるらしいことが分かる。

その証拠として、アンデルスが土と金属で作ったトイレのある部分だけ「緑色の中で茶色」っぽく変色していた。

目測でキャンプから20m程度離れた位置に設置されたトイレと俺達の距離が、だいたい地図の端から端の百分の一程度の長さである。

なので、この1階層はおよそ一辺が2km程度の正方形で作られていることが分かった。


「意外と狭いんだな」


無限に広がっているかのように思えた草原も、辺と辺の間を最短距離で走れば10分もしないうちに端に到達する程度の広さであった。

「思ったよりも狭いですね」と一緒に地図を見ていたミシュラも俺と似たような感想を抱く。

他のメンバーにも伝えたところ、同様のイメージを得ていた。


地図を見渡していたところ、俺達のいる地点が正方形の一角に近い位置にあることが分かった。

そして、目的の転送装置がある場所は反対に対角付近に存在することが見て取れる。

結構距離があることを残念に感じたが、まだ時間は3日ほどあるのであまり気にしなくても良いだろう。


「ところで、余ったポイントやコネクトはどうするのかしら?」


地図を見て今後の方針を決めていた俺とミシュラにラズメリノが問いかける。

だいたい地図に関する話題は落ち着いたので、俺達は獲得したポイントとコネクトについて話し合うことにした。


話し合いの結果、とりあえず今すぐ必要になりそうなスキルはないということなので余った 350 ポイントは貯めておくことになる。

続いてコネクトだが、女性陣の要望により「生活必需品セット」なるもの購入が決まった。

これは、2000コネクトと大分高いのだが、桶やタオル、石鹸などから歯ブラシ、さらには枕などの細かいアメニティグッズが人数分入ったものである。

ゆえに一度買っておくと無限に使えるらしく、非常に生活が快適なものになるのだという。

今は比較的余裕があるから大丈夫だろうということで、この「生活必需品セット」を購入することになった。

確かにパーティ内活動において、必要ではないタイミングでストレスを抱えてしまう心配を無くせるのであれば安いものである。

考えてみると、今日で体を清潔にしない状態が二日目であることからも、これらの用品はきちんと持っておいた方が良いのかもしれない。

迷宮探索をしている身としては贅沢な話なのかもしれないが、衛生的な問題から考えもしないようなトラブルが発生する可能性もあるので、強ち悪い選択でもないような気もした。


「ねえアンデルス、シャワールームみたいなものってつくれないかしら?」


生活必需品セットの中にバスタオルや石鹸があることを確認したラズメリノがアンデルスに「アイテム生成」でシャワー室を作れないか聞く。

それに対して「外見自体は結構簡単に作れるよ」と答えるアンデルス。

どうやら、水が出てくるシャワー部分は俺の技能である「水道設置」を使う必要があるらしいが、それ以外の「シャワー室本体」と「脱衣所」を作ることなら簡単であるという。

なんだかんだアンデルスの「アイテム生成」って結構万能な技能だよなと思った。

しかし、そんな便利なアイテム生成も寝床作りには危ないらしい。

信じられない話だが、トラバドールの設置する「テント」は魔物の夜襲にあったとしてもいきなり破壊される心配がないという。

物理的な攻撃にも魔法攻撃にも結構耐えるらしいので、いちおう外に見張りを立てて置けばパーティが壊滅状態になることはないのだとか。

でも実際には見張りが魔物に注意を払っているので、寝床を直接叩かれる可能性はほとんどないらしい。

なので、やはり一般的なパーティではアルケミストの「アイテム生成」で寝床を確保するのが一般的だという。


テントの近くに「シャワー室」とそれに続く「脱衣所」をアンデルスが作り、俺はそれに「水道設置」を用いてシャワー部分を作る。

アンデルスが金属で作ったシャワーノズルをつけると、蛇口を捻ったら水が出るシャワーが完成した。

「水道設置」で作った蛇口は、決して温かくはないがぬるい程度の水を出せるので、そこまで水温は気にならない。

夏場の屋外プールのシャワーのような感覚で使えると考えてもらって問題ない。


「おお!!シャワーですよシャワー!!」


まさか迷宮でシャワーを使うことが出来るとは思ってなかったと感動するミシュラ。

エイレネやラズメリノも興奮した様子で蛇口を捻って試していた。

一方、ルークやアンデルスなんかは「桶と水とタオルで十分だよな?」とそこまで嬉しそうにしていない様子である。

俺はと言うと、日本人特有の潔癖体質もあるが、もともと風呂が好きだったのでシャワーの完成にも喜びを感じていた。


シャワー室も完成し、女性陣が見張りを立てて交代で体を洗っている間、男達はキャンプの椅子に腰掛け話をしていた。

男が集まってする話など下ネタか女子の話であるというのは異世界でも同様であったが、俺達3人に限っては余り盛り上がらなかった。

何故かというと、ルークはレインさんのセクシーボディ以外目に入らないとのことであるし、アンデルスは重度のシスコンであったからである。

俺の場合も、この世界基準だと女性の平均的な身長であるミシュラとラズメリノですら俺より少し大きいので、恋愛対象になるかと言われたら難しい。

ましてや、メンバーやレインさんから「女の子みたい」なんていわれている以上、自分より背の高い女性を色目で見るのは気が引けてしまう。

以前アリスちゃんを家族にする時に女性陣から「そういう趣味だったのか」と忌避するような目で見られたが、日本的な感覚でいくとそうなってしまうことになる。

流石にアリスちゃんは幼すぎるが、外見的特長からするとエリスさんのような人が日本人としては好ましく思えてしまう。

そんな話をルーク達にしたところ、まず俺が日本人であるという事実に驚かれてしまい、俺はやってしまったと反省する。

エイレネにはバレテいたが、他のメンバーには知られていなかったのをすっかり忘れていた。


「先生は特殊だと思っていたが、まさか異世界から来ていたとはな」


まあ別に気にしないけどなという二人に救われた俺だが「でも、まさか学科長が好みだったとは……」と若干退いた目で見られてしまう。

女子に関する話はその程度で終わり、それ以降はルークの好きな冒険譚の話や、アンデルスの好きな御伽噺の話などに花が咲く。

彼らは思春期男子というよりは「少年」という言葉が良く似合う雰囲気であった。


俺達がワイワイ話していると女性陣がシャワーを浴び終え、キャンプへと戻ってきた。

なにやら見張りをしながら聞き耳を立てていたエイレネが「師匠は学科長がタイプなんですね……」と悲嘆にくれていた。

ラズメリノやミシュラが俺の方を「やっぱり……」と犯罪者を見るような目で見る。

それから女子達はガールズトークを始めてしまったので、すっかり蚊帳の外である俺達はせっかく作ったのでシャワーを使うことにした。


ルークとアンデルスが先にシャワーを浴びている間、俺は外で見張りをしていた。

別に男のシャワーを覗く輩などいないだろうが、ここでは逆にキャンプで待つ女子達の下に魔物が現れないかを見張っていた。

すると、彼女達の姦しいガールズトークが聞こえてくる。


「エイレネさんはクロノさんが好きですの?」

「もちろんです!!師匠は可愛いしかっこいいのですよ!!」


なにやらエイレネが興奮した様子で俺について語っているようだった。

その熱弁ぶりにラズメリノとミシュラは若干退いている様子である。

少し外で待っていると、シャワーを終えた二人が出てきた。

俺の番が来たので、見張りを彼らに任せ早速俺も中に入る。


脱衣所は小さな銭湯のように数個だけ服を入れる棚が作られている。

アンデルスも姉譲りの凝り性があるらしく、それらしく内装を楽しんで作っていたことを思い出す。

だが、実際にはメニューから「装備を外す」という項目を選ぶだけで下着姿になるので脱衣籠の役目は少ない。

下着を脱ぎながら俺はあることを考えていた。


「テントでは自動で寝巻きに切り替わっていたが、トラバドールのいないパーティでは装備のまま寝るのか……?」


寝るときはパジャマという発想が当然のように頭にあった俺は、一般的なパーティがどうしているのか気になった。

そのことを少し考えた俺は、おそらく「アイテム購入」の商品リストにあった「普段着」というものを購入して着替えるのだろうなと勝手に思っていた。

いよいよ全裸になった俺はシャワールームへと入る。

四方を土と金属の壁で囲まれたシャワー室は若干暗かった。

この世界の土の中に含まれている、若干発光する金属物質が練りこまれていなかったら恐らく真っ暗だったのだろう。


シャワーを終えた俺は外に出て、キャンプにいる皆の下へと合流した。

外はもう暗く、キャンプの灯りしか見えないような状態なので、俺達はテントに入り寝ることにする。


「明日はいよいよ探索ですね」


ミシュラが少しワクワクした様子で話しかけてくる。

確かに、明日が未だ開始地点から動いていない俺達の初迷宮探索になるのだということを実感した俺だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ