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異世界に転生して時間魔法しか使えない俺  作者: けろ
第二章 迷宮都市編
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第三十四話 見渡す限りの草原


キャンプの焚き火を囲んで朝食を取り終えた俺達のもとへやってきたのは、既に討伐したことのある「ウルフ」達であった。

魔物を確認するとすぐに立ち上がり、キャンプから離れて戦闘準備をする俺達。

昨日と同様の陣形を作り、ウルフの撃退を図る。


「防御は俺に任せろ!」


攻撃したそうな様子を垣間見せていた昨日までの状態とは打って変わってパーティの「防御役」に徹するルーク。

どうやら、昨夜の俺の雑なアドバイスから何かを得た様子である。

ラズメリノが止めを刺しやすいように盾の角度や立ち位置を工夫するルークの動きは、慣れてないせいもあって幾らかぎこちないものだった。

しかし、前衛二人の間で明確な役割分担が生まれたお陰で、止めを刺す役割のラズメリノも昨日に比べて動きやすそうに見える。


「次くるわよ!」


一匹目のウルフの息の根を止めたラズメリノが、盾を構えるルークに合図を送る。

ラズメリノから指示をもらったルークは、止めを刺し終えて再び盾の後ろへと移動する彼女とうまく持ち場をスイッチすることに成功した。

息の合った連携を続けるルークたちは、昨日とは異なりウルフから一撃ももらうことなく次々と連中を始末する。


戦うことしばらく、危うげなくウルフの群れを討伐した俺達であった。

実質ルークとラズメリノの2人で敵を全滅させたわけだが、当の本人達は昨日よりも疲労感を感じていないと言う。

戦闘後に「なんだか戦いやすかったですわ」と不思議そうに感想を述べるラズメリノ。

それを聞いたルークが「お前の方が俺よりも明らかに攻撃力が高い。だから、お前が敵を倒しやすくするのが俺の役目だ」と自分の「ナイト」としての役割を説明する。

棘がない合理的な意見がルークの口から出ると思っていなかった一同は、彼の変貌ぶりに驚かされた。


「あら、やっと分かったのかしら?あなたは私の援護に徹していればいいのですわ」


彼の態度に驚きつつも、自分らしさを曲げないラズメリノは嫌味っぽくルークに声をかける。

しかし、いつもなら売り言葉に買い言葉であったルークが「ふふふ、お前らしいな」と満足げに笑っていた。

その様子を見ていた一同は「あいつ頭おかしくなったのか?」と彼の変化に困惑する。

ラズメリノも「なんだか調子が狂うわね」と腕を組み、両肘を手で擦っていた。


俺達はスキルポイントとコネクトを集めるために、それからしばらく出現した魔物と戦闘し続けた。

昨日までとは全く違うルークとラズメリノの連携に、ほとんどエイレネの回復を必要としない状況が続く。

明らかに昨日よりもハイペースで魔物を狩り続ける俺達は、昼ごろにはスキルポイントが 345 、コネクトが 1350 ほど溜まったことに気づく。


「先生の言うとおりだった」と結果に満足しているルーク。

魔物の肉も全部で数十個集まり、今日の分の食糧は十分に確保することが出来た。

スキルポイントが 300 を超えているので、俺達はある技能をパーティで修得することに決める。


「師匠の「水道設置」で決定ですね!!」


喉が渇いて仕方がないという様子のエイレネが、俺に早く技能を習得しろと急かす。

他のメンバーも似たような感想をもっているようなので、俺は急いで「水道設置」の技能を習得することにした。

メニューから「技能習得」の項目を選び、トラバドールの欄にある「水道設置」を選択する。

パーティメンバーが全員同意したところで、俺に新たな迷宮技能が追加された。


「おお!本当に水道が出来たぞ!」


俺が技能を使うと、キャンプの隅っこに「流し台付の水道」が現れたのだった。

これは水道の蛇口とシンクがセットになっているものだと考えてもらって間違いない。

これがあれば飲み水の確保だけでなく、簡単な水仕事や調理も捗るに違いないだろう。

早速蛇口を捻ってみたところ、綺麗な冷たい水がとめどなくあふれ出す。


「おお!!これでお水が飲めます!」


コップに水を注ぐミシュラは、冷たくておいしい水が飲み放題であることに感動する。

他のメンバーも気が済むまでゴクゴクと水を飲み続ける。

一頻り水を飲んだ俺達は、飲み物が増えたところで昼食とすることにした。

今日は昨晩と違い、「食品加工」の技能を俺が持っているので「魔物の肉」を自分達で調理する必要は無かった。


「これがカットステーキか」


食品加工によって食べやすく調理された肉は、アンデルスの作った食器に配膳されていく。

皿やフォークを使うため、机がないと食べにくいということで、アンデルスが土と金属で簡易的なテーブルと椅子を人数分作る。

キャンプの近くに設置されたテーブルの上にステーキの乗った食器を並べて、食事の準備を整える。


「なんだか豪華になりましたね師匠!」


昨日の原始的な食事とは打って変わって文化的になったことに対し、エイレネが嬉しそうに俺の肩を叩く。

メンバー全員が席に着いたところで、昼食をとり始める。

自分達でナイフを使って切り分けた肉も不味くはなかったが、「食品加工」を使って調理した肉は昨日食べたものよりも格段においしく感じた。


「なんか昨日よりも美味くないか?」


ルークを初めとしたメンバー達も「肉が美味くなった」と同様の感想を述べる。

どうやら、「食品加工」で作られる食べ物は、一流の料理人が調理したような料理が完成するのではないかと予想する。

細かい理屈や仕様は迷宮作成者もしくは運営者でなければ分からないことなので、とりあえず便利なスキルということで片付けておくことにした。


納得のいく昼食を取り終えた俺達は、今日のこれからの活動方針を決めることになる。

現在のスキルポイントは 45 であり、コネクトは 1350 ほどある。

取り急ぎ必要となるものはないかと俺がメンバーに聞いたところ、


「トイレはどうするんだ?」


とルークが真顔で言う。

他の女子メンバーもそれを気にしていたようであり、手始めに個室のトイレを作ることになった。

キャンプから少し離れた位置に、アンデルスの「アイテム生成」で作った土壁を設置する。

そして、その中に深い穴を掘る。

入り口に硬い土と金属の扉をつけて、簡易トイレが完成した。


「あ、あのう……」


顔を赤く染めて、おずおずと手をあげるのはミシュラであった。

どうしたと聞くのも野暮なので、俺は「行っておいで」とだけ声をかける。

早速簡易トイレを使用したミシュラに続き、エイレネとラズメリノもトイレを利用する。


下の事情がなんとか解決した俺達は、改めてこれからの方針を決めることになった。

当初の目的である「アンティークアイテム」の回収というところまで遡って考えてみたところ、ある問題が浮き彫りになる。

迷宮内にあるアイテムは「深い階層」に潜れば潜るほど、強力でレアなアイテムが手に入るのだという。

なので、俺達は魔王の復活までに迷宮をどんどん潜っていかなければならない。


「とは言っても、次の階層に続くワープポータルなんてどうやって見つけるんだ?」


俺達は次の階層へと進むために必要な転送装置を見つけなければならないのだが、それらしいものは視界には一切見当たらない。

目に見えるものはあたり一面に広がる草原と、ポツポツと生えている木のみである。

この状況で虱潰しに転送装置を探していては、いつまで経っても見つからないだろう。


「それに、ガイルさんが言ってましたように「迷宮嵐」が迫ってくるのですわよね?」


頬に手を当てて心配そうな顔で言うラズメリノ。

「迷宮嵐」とは、同一の階層に居ることができる期限を決めている現象である。

例えば、俺達が今いる「1階層」では「5日間」が過ぎた時点で強制的に嵐にのまれて地上へ強制送還されてしまうという。

つまり、「迷宮嵐」とは迷宮の同一フロアで活動できる「制限時間」のようなものであると考えられる。

10階層までは「5日間」、20階層までは「10日間」というように、一定の階層ごとに迷宮嵐のスパンは長くなるという。

この現象によって、増えた分の多くの時間を探索活動に当てられるように思えるが、実際はそうではない。

フロアの規模が大きくなっていくことによる弊害が大きく、探索に割かなければならない日数が増えるので、魔物を討伐してパーティを補強する期間が階を重ねるごとに短くなっていくという。

この説明をガイルさんから受けたときにも、俺はトラバドールが迷宮探索には欠かせないと確信したのである。

なぜなら、「探索を効率化する」トラバドールの存在によって、「探索」と「成長」の両立が可能になるからだ。

探索に割く時間を減らせたら、自ずとパーティ強化に空いた時間をまわせるのである。


1階層に入ってから既に1日半が経過しているので、迷宮嵐によって地上へと強制送還されるまであと三日半の時間がある。

だが、迷宮嵐は二日前からその兆候を現すという。

なので、1階層では3日目の夜から天気が荒れ始める。


「どうします師匠?このままだと運に任せて探すことになりますよ」


パーティリーダーの俺に意見を求めるエイレネ。

他のメンバーも特に有効な考えは思い浮かばないというので、俺の意見を待っている様子である。

そこで、俺はスキル一覧から見つけ出したある技能について提案する。


「トラバドールの技能で「探索地図」というものがあるんだが、これを覚えるというのはどうだろうか?」


一同はメニューから「スキル一覧」の項目を確認する。

その中のトラバドールの欄にある「探索地図」をみながらミシュラが呟く。


「迷宮内の重要ポイントが記されている地図を召還する技能……ですか」


「探索地図」はその名の通り迷宮内を探索するための地図を作る技能である。

レベル1のトラバドールがこれを使うと、次の階への転送装置のある場所がわかるという。

これほど便利な技能なのだが、世間的には「無かったら無いでも何とかなる」という認識らしく日の目を浴びていないらしい。


「必要スキルポイント300ですか。また魔物を倒しつづければ溜まりそうですね」


現在のポイントが 45 なので、効率よく狩れば今日中に到達できそうである。

他のメンバーも午後からの魔物狩りに同意したところで、俺達は狩りの準備をする。

俺達は現状を打破するために、結局午後からも午前中と変わらない手順で魔物狩りをすることになった。



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