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異世界に転生して時間魔法しか使えない俺  作者: けろ
第二章 迷宮都市編
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第三十話 いざ迷宮へ!

いよいよ今回から迷宮探索開始です!


エリスさんとアリスちゃんが乗る魔法馬車を見送った俺達は探索科棟へと戻ってきたのだった。

会議室のような部屋である程度「迷宮」についての講義をレインさんから受けた俺達は、早速迷宮へと潜りに行くことになった。


迷宮はラビリスのほぼ中心に存在するらしく、大通りを進んでいくとたどり着くという。

俺達とレインさんは探索科棟を後にして迷宮を目指す。

しばらく大通りを歩き、迷宮ギルドを少し過ぎたあたりでエイレネが声をあげる。


「あ!!もしかして迷宮ってあれですか!?」


大通りの突き当りには円形の大きな広場が存在し、その真ん中に割合大きな建物があった。

レインさんの話によれば、建物の一階部分に地下迷宮へとつながるゲートが存在しているという。

建物の二階以降は、迷宮を管理するための施設が詰まっているのだとか。

「迷宮ギルド」が迷宮に潜る人たちのための組織だとすると、ここに存在する「迷宮本部」は迷宮そのもののための施設であるという。


「それじゃあ早速はいりましょう!」


妙に張り切っているミシュラの掛け声で「迷宮本部」へと足を踏み入れる。

迷宮本部の中にはエントランスホールのようなものが存在し、その奥に憲兵のような人が立つ大きな門のようなものがあった。

どうやらあれが「地下迷宮」へとつながるゲートのようだ。

ゲートは相当に大きく金属製であり、銅色の光沢が高級感を醸し出している。

しかし、俺達はそんな豪奢なゲートよりも圧倒的な存在感を放つ物体に目を奪われる。


「あれが例の像か……」


ゲートの近くに鎮座しているのは四本腕の「ケインズ像」とプリンセス「エリス像」であった。

まじまじと像を見ていた俺達はあることに気づく。

ケインズ像のボディーは逞しく作られているが、顔はケインズさんそのままであるというチグハグなのである。

一方、「エリス像」は本物よりも一層「少女らしさ」を強調した作品であった。

「エリス像」は知らない人が見たら「芸術品」と評されるのも分かるが、真顔で腕を羽根のように広げる「ケインズ像」の佇まいには悪意しか感じられない。

実物を知っているエイレネと、以前あったことがあるというアンデルス、そして俺の三人はこの光景に思わず爆笑してしまう。


「確かにちょっと不気味ですわね……」


「ケインズさんって人は本当に4本腕ですの?」と難しそうな顔をしているラズメリノの様子が、さらに俺達の笑いのつぼを刺激する。

像の前で一頻り笑い転げた俺達は、他のメンバーの肩を借りて漸く立ち上がる。


俺達は迷宮ゲート前で身分証明証とパーティカードを提示し、迷宮探索の手続きをすませる。

初めてだということで、迷宮内で気をつけることなどの軽い説明を受けた。


「それじゃあしばらくさよならね」


頑張っておいでよと手を振るレインさんに手を振りながらゲートへと入っていく俺達。

境界をくぐると、そこにはモヤモヤとした謎の空間が広がっていた。

どうやらここから既に迷宮の影響下にあるらしい。

試しに魔法を出そうとしたエイレネが、


「本当に魔法が使えないみたいですね……」


と自分の手のひらを見つめて言う。

俺も魔力を練ってみようと思い手のひらに力を集めるイメージをするが、手のひらで圧縮された魔力が顕現することは無かった。


俺達は謎の空間を歩き、地下へと続いていく階段を下っていく。

少し降りるとそこには紫色に輝く魔方陣が設置されていた。

これが先ほど門の前で説明があった「スタート地点」というやつだろう。

早速魔方陣の上に乗った俺の視界に「あと5人」と表示される。


「うお!いきなりなんか出たぞ!?」


驚きのあまり声をあげてしまった俺だったが、他のメンバーも魔方陣に触れると驚いた様子で声をあげる。

日本にいた時に試したことのあるVRゴーグルの世界のように、空中にふわふわと文字が浮かんでいるのだ。

メンバーが全員魔方陣に乗ったところで、「迷宮準備エリアに転送します」という文字が現れる。

次の瞬間、視界が暗くなり、俺達は別の場所にワープした。


「ここが準備エリアですか……」


ホールのような場所に転送された俺達は、周りの様子を伺うようにして背中合わせに立つ。

すると、またしても上空に「ロールを選択してください」という文字が現れた。

円形のホールの外周に丸く並んでいる魔方陣。

どうやら、それぞれの魔方陣の上に乗ることで初期ロールを選択できるシステムになっているらしい。

俺達は恐る恐るそれぞれの担当するロールの上へと進む。

全員が魔方陣の上に乗ったところで「これでよろしいですか?」と決定コマンドが現れる。


「それじゃあ決定を押すぞ?」


いちおう念のために俺が確認すると、全員が同意する。

空中に浮かぶ決定キーを押すと、俺達はまたしてもどこか別の場所に転送された。


切り替わった視界には、遮蔽物のほとんどない一面の草原と青空、地上と変わらない太陽のようなものが浮かんでいる。

俺達の立つ地表では爽やかな風が吹き、そこら中に生えている背の低い草を揺らす。

転送されてきたお互いを確認するように俺達は集まる。


「本当にゲームみたいな世界だな……」


俺の迷宮第一印象はまさに「ゲームの世界」であった。

パーティメンバーを見てみると、全員地上にいたころの服装から「迷宮アバター」に変更されていた。


プリーストのエイレネは、全身青色のドレスのような服の上に、短い白のマントのようなものを装着していた。

頭には聖職者がかぶる青と白の四角い帽子がある。

ドレスはS字ラインを強調するために「コルセット」のようなものがついており、もともと素晴らしいスタイルのエイレネをより美しく見せる。


ナイトのルークは、動きが制限されない程度に隙間の開いた銀色の鎧を身に纏っていた。

右手には敵を切り裂く片手剣を持ち、左手には仲間を守るための大き目の盾を持っている。

彼の体躯と燃えるような赤色の髪は、ナイトの装備に良く似合っていた。


ファイターのラズメリノは、武装されたルークとは異なり比較的軽装であった。

足元までドレスが延びていたエイレネとは異なり、膝丈までの桃色のスカートドレスを着用していた。

金髪の縦ロールに派手なドレス姿のラズメリノは、お嬢様という言葉が良く似合う。

装備らしい装備は、右肩から手まで伸びる銀色のアームアーマーと右手に持つ片手剣のみである。

華奢な体つきと身軽な装備からは、一撃が重たいタイプではなく素早い蓮撃を繰り出す剣士のような印象を受けた。


マーチャントのミシュラは、白いシャツの上に黒いネクタイ、その上に緑のベストを装着し、最後にベージュの千鳥柄のジャケットを羽織っていた。

頭にはディアストーカーを被り、黒いパイプを口に咥えている彼女は「商人」というよりも「探偵」という言葉が良く似合う。

茶色のショートヘアに、黒タイトなスラックスを装着した様子は男装した女の子に見えた。


アルケミストのアンデルスは、茶色いレザーエプロンのようなものを装着していた。

金色に輝く金属の板のようなものが随所についており、あちこちにあるポケットには工具のようなものが入っている。

その様子はまさに「生産職」といったものであった。


「みんな衣装が用意されてるんだな……」


先ほどまでとは違う格好のメンバーを目で追っていると、俺の衣装も指摘された。


トラバドールの俺は、白を基調とした布の服の上に紫色のマントを羽織、頭には白い羽根のついた紫色の三角帽子をかぶっていた。

装備も特に無く、腰に下がっている布の袋しかアイテムは所持していない。

なんだか俺だけあまり地上と変わらない衣装でさびしい気持ちになる。


迷宮に降り立った俺達は、先ほど受けた説明にあった「メニュー」とやらを探す。

「メニュー」とは俺達が迷宮で活動する上で欠かせないシステムである。

アイテムの管理から、装備の着脱、魔法の発動まですべてこの「メニュー」を使うのだという。


「これがメニューを開く感覚か、少しなれないな」


ルークがメニューを開いた感想を呟く。

俺達がメニューを開く方法は「頭の中でメニューを思い浮かべる」というシンプルなものある。

発動すると頭の中でメニューのイメージが浮かぶのだ。

そこからアイコンのようなものを選んで、様々な機能を使うことが出来る。

「装備」欄から試しに「布の服」を選んでみたところ、俺はマント一枚になってしまった。


「突然師匠が下着姿に!?」


俺の下着をガン見するエイレネ。

慌てて装備を元に戻すと、他のメンバーも「装備の際は気をつけなければ」と心に刻んだようだった。


メニューの中にあった「迷宮技能」欄にある「キャンプ設置」という技を選んでみると、目の前の地面に木の椅子6つと焚き火が出現した。

突然現れたキャンプセットに驚く一同だが、俺の技能によるものだと説明すると、


「ちゃんと事前に教えてください!」


とミシュラに怒られた。

とりあえず出現した椅子に腰掛けて、メニューをいろいろといじくって試す俺達。

焚き火を囲んで準備をするパーティの様子はなんだか冒険者らしかった。

座っていて気づいたことだが、俺達の頭上に一定周期緑色の数字が浮かんでいるのが見える。


「これって、説明にありましたHP回復効果ですの?」


頭上の数字を指差してメンバーに問いかけるラズメリノ。

門番の説明によると、俺達の命は「HP」という数値によって管理されているという。

この「HP」がゼロになると「死亡状態」になり、蘇生されない限り行動することができない。

パーティ全員が死亡状態になると、強制的に地上へと送還されるとのことだった。


迷宮内では痛覚は制限されるということなので、試しに近く似合った岩にチョップしてみたところ確かに痛みは感じなかった。

その際に頭上に赤い数字が出たところを見ると、やはりこの数字が「HP」の増減を表していると考えて間違いない。

「HPを見たい」と念じて他者を見てみたところ、その人物の残りHPが表示される。


「なるほどね」


思わず関心したようにつぶやくのはアンデルスであった。

もともとシステム的な側面が大きい魔導工学を専攻している彼は、迷宮内のシステムに関してもあれこれと検証しているようである。

他のメンバーも回復魔法を試し打ちしたり、「戦闘技能」を使っている。

「野営系」のスキルしかない俺や、コネクトがないと何も出来ないミシュラは手持ち無沙汰になっていた。


「先生、この後はどうするんですか?」


このまま座っているわけではないですよね?と聞いてくるミシュラ。

迷宮探索のセオリーとしては、出現する魔物を倒し「スキルポイント」と「コネクト」を溜めながら次の階層への転送装置を探すことである。

しかし、魔物もいなければ目印になるようなものも存在しない草原にいる俺達。


「どうしたものか、魔物もいないしな……」


何から始めようか迷っていると、視界の端に動くものをとらえた。

俺は、キャンプから少し離れた位置に4足歩行する狼のような生物がいるのを発見する。

驚いた俺は皆に魔物の存在を知らせ、一同は戦闘準備に入る。


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