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異世界に転生して時間魔法しか使えない俺  作者: けろ
第一章 異世界生活編
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第二十話 祝勝会と残念会と急展開



なんだかよく分からないが「エイレネ」という美人な弟子が出来た俺だった。


「クロノ師匠!これからよろしくお願いします!」


俺の弟子となったエイレネも、エリス魔法研究所の身内としてカウントできるというエリスさん。

夕飯時でもあるので、この後俺の初授業成功の祝勝会とエリスさんの諸々の残念会を執り行うのはどうだろうかとケインズさんが提案する。

俺もエリスさんも特に予定があるわけでもなかったので、それを了承した。

エリスさんの報告がまだ一切終わっていないということもあり、夕食会のときに話せばちょうど良いだろうということだった。


「私もいいんですか!?」


実家が遠い場所にあるらしく、学院の近くで一人暮らしをしているというエイレネは口に手を当てて驚く。

特に問題ないということで、エリスさんがエイレネの参加を許可したところで事件は起こった。


「その夕食会、僕も参加していいかな?」


誰もいないはずの壁際から声が聞こえてくる。

図書室にいた一同は驚きからビクンと肩を動かす。

目を凝らしてよく見てみると、大きな木製の踏み台のようなものが小さく動いている。

なんだろうと思って近づいてみると、木目のような色に擬態した男性がブリッジをしていた。


「帰ってきていたなら帰ってきたと言え!ユリウス!!」


拳を握り起こるエリスさんの頭上には怒りマークが見えたような気がした。

そして、木目のような色合いのブリッジ人間はあの「ユリウス」さんであることが分かった。

エリスさんに並ぶほどの優秀な人らしいが、俺の中のイメージは完全にヤバイ人として書き込まれる。


たまたま俺の講義を見ていたというユリウスさんは、授業内容に感動し、密かに俺の後をつけていたという。

ん?なんかどこかで聞いたような話だな……


「僕も弟子にしてくれないかい?クロノ君」


開いてるのかいないのか分からない細い目でニコニコと笑うユリウスさんはとんでもないことを口にした。

いや、師匠クラスの人が弟子の弟子になるってエイレネの時の比じゃないくらい訳が分からない。

突然の出来事に俺が困惑していると、


「だめだ!ユリウスをクロノ君の弟子にはさせない!」


とエリスさんが声をあげる。

「ユリウスが私の孫弟子になるなど気持ち悪い!」と直球の拒絶を示すエリスさんに、「そうそう、これこれ!」と嬉しそうにするユリウスさん。

やっぱりエリスは可愛いな!と満足そうに頷くユリウスさんに対し、圧倒的な嫌悪感を示すエリスさん。

よく分からないやり取りを見せられている俺とエイレネは、どうしたら良いのか分からずに固まっていた。


「こいつは学生時代からこんな感じだから気にするな」


ユリウスさんを罵倒するエリスさんを横目に、ケインズさんが俺達に現状を説明してくれた。

学生時代からエリスさんを小動物のように可愛がっていた問題児がユリウスさんであったという。

肩ほどまで伸びた白味がかった金髪に、一見すると女性のように見える中世的な顔立ちと華奢な体の彼は、紛れも無くイケメンであった。

当時から、学院中の女性からモテモテであったという。

しかし、ユリウスさんは他の女性には目もくれず、エリスさんにだけしつこく付きまとっていたらしい。

本人は「政治科」の学生だったらしいが、エリスさんを構内で見つけて以来「魔法科」にも通うようになったという。

そして、政治科でも最優秀学生として卒業し、魔法科でもエリスさんと並ぶ秀才であったらしい。


二つの学科を優秀者として卒業するってやばくないか?

俺は素直に思ったことを口にしたところ、


「当時つるんでた6人の内、魔法科単体の卒業は俺一人だ」


とケインズさんが言う。

なんと、エリスさんも学科の掛け持ちをしていたようである。

ケインズさんの話しによると、エリスさんとオグマさんが「騎士科」「魔法科」を掛け持ち。

ユリウスさんが「政治科」と「魔法科」を掛け持ち。

もう一人の研究員の人が「商業科」と「魔法科」を掛け持ち。

現魔導工学科長のアテナさんという人が「魔導工学科」と「魔法科」を掛け持ちしていたという。

一方でケインズさんは「魔法科」のみを専攻していたと言う。


「幼少期は神童といわれてた俺ですら、あいつらの前では霞んでしまうんだよなあ」


魔法科を6位で卒業しているケインズさんは、あいつらさえいなければ俺が主席だったという。

このへんの学生時代の話はまた今度してあげるよと言うケインズさん。


結局エリスさんが、魔法で強化した体でユリウスさんをボコボコにして事態は収束した。

床にボロ雑巾のように横たわるユリウスさんを足蹴に、


「それじゃあ、夕食の準備をするか」


とエリスさんが言う。


図書室のテーブルの上に夕食を用意することになった俺達。

料理の担当はケインズさんらしく、エリスさんは研究室の自分の机に用意してあるものを持ってくると言って外へ出た。

いつの間にか復活していたユリウスさんとケインズさんが、図書室の奥の方にあるキッチンへと向かう。

テーブルには俺とエイレネだけが取り残される。

なんだか今日は色々ありすぎたなと思ってボーっとしていると、


「師匠!少しおしゃべりしましょう!」


とエイレネが元気いっぱいで俺に話しかけてきた。

お互いのことを話していると様々なことが分かった。

エイレネは今年で18歳らしく、17歳の俺よりも年上であるという。

「私の方がお姉さんなのね!?」と驚いたエイレネは、「クロノ師匠が弟……」とよく分からないことを言ってニヤニヤしている。

さすがに美人であっても、邪な事を考えているときの醜態というのは許容しがたいということがこの時初めて分かった。

俺の黒髪を珍しいというエイレネに、弟子だから言ってもいいかと思った俺は、「俺はもともとこの世界の人間ではない」と伝えると、


「だから黒髪なんですね」


と、妙にあっさりと理解を示す。

先ほどの年を聞いたときのリアクションと逆では?と思わず聞いた俺に対し、


「古代魔法を扱うくらいだから、それくらいイレギュラーな存在かとは思ってました」


と答えるエイレネ。

ちょっと待て、いつ俺が古代魔法を使えると言った!?

どこでそのことを知った?と聞くと、


「鎌をかけてみました。すみません」


と答える。

本当に古代魔法が使えるのですかと驚くエイレネ。

どうやら、最初に俺がフードを剥がしたときに使った魔法を見たときに気になったという。

今まで自分が読んできた魔法書や講義で見たことも聞いたこともない魔法だったので「古代魔法」なのでは?と思っていたらしい。

一度見た魔法や聞いた内容をすべて覚えているエイレネに、俺はとんでもない奴が弟子になってしまったと驚く。

しかし、なによりもその行動力と胆力に驚かされる。


それから少し他愛もない話をしていると、なにやら荷物を持ってきたエリスさんが合流する。

程なくして料理を作り終えたケインズさん達も合流し、夕食会が始まった。


なぜか俺が乾杯の音頭をとって始まった祝勝会兼残念会は恙無く進む。

そこそこにご飯を食べた俺達は、エリスさんの報告を聞くこととなった。


「まず、クロノ君の授業に関してだが……」


報告することは色々あるが、初めに話すことは俺に関することだという。

今回の授業の成果が今までに無いものであったので、魔法科で協議した上で価値が認められた場合、魔力の可視化は「俺の研究」ということになるらしい。

そうなると、いろいろと面倒な手続きや報奨金などの事務処理が必要になるということだった。


そして、エリスさんの報告はいよいよ本題へと移る。

今日エリスさんが本部棟で行った会議について話すという。


「クロノ君の弟子となったエイレネも巻き込むことになるのだが……」


それでも構わなかったら聞いてほしいというエリスさんに、エイレネは「問題ないです」と即答する。

むしろ「師匠が巻き込まれるなら是非私も!」と妙に乗り気なエイレネであった。

それを聞いたエリスさんは分かったと言い、続けて今日の会議の内容について話す。


「実は、この世界に新しい魔王が誕生しているということについて話してきた」


急に異世界ファンタジーチックなことを言い出すエリスさん。

「マジで!?」と驚くケインズさんと、「魔王ねえ」と興味がなさそうなユリウスさん。

俺とエイレネはそもそも魔王についての知識がほとんどなかったので「なにそれ?」状態であった。


およそ1000年前から現れ始めたという魔王は、それから何度も倒されては現れたという。

その周期は不定期であり、数十年おきに連続して現れる時期もあれば、数百年間現れないこともあったらしい。

そして、今回は前回発生した魔王カオスの誕生から約200年が経っているという。


「今はまだ眠りについている魔王だが、恐らく2年程度で目覚めるだろうということだ」


「早いな!」と驚くケインズさん。

「悪い魔王と決まったわけじゃないでしょ」と冷静なユリウスさん。

魔王復活に備えて色々と学院側もするべきことが増えるので、エリスさんもこれから忙しくなってくるという。

そこで、エリスさんの行っていた授業などを俺が多く担当することになるらしい。


「クロノ君なら大丈夫だろう」


今日の俺の様子ならば問題ないと言う。

こうして、エリスさんが受け持つ授業の幾つかを今後俺が担当することになった。




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