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異世界に転生して時間魔法しか使えない俺  作者: けろ
第一章 異世界生活編
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第十九話 いろいろやばい弟子


教壇上で学生や研究者に囲まれていた俺は、ケインズさんに連れ出された。

ひとまず魔法科棟を後にした俺とケインズさんは、エリスさんがいるはずの本部棟へと向かうことにする。


「いやあ、クロノ君すごかったよ」


構内を歩きながらケインズさんが俺の講義の感想を口にする。

どうやら、俺が実演した「魔力流の可視化」は魔力研究業界では長年の課題であったらしい。

だから、研究者達が結構真剣な表情で授業後に俺の元へ駆けつけていたということだった。


「俺の周りでも、エリスが見つけた発見を代わりにクロノ君が実演したっていう説が一番多かったぞ」


俺の発見ではなく、エリスさんが見つけたものを発表したという認識が多いという。

確かに、こんな俺みたいなひよっこが見つけるなど考えられないのだろう。

高校に入りたての素人がノーベル賞を受賞するほどの発見をするようなものである。


ケインズさんにいろいろと先ほどの授業について質問されながら、俺達は本部棟の前へと到着する。

本部棟の中に入り、入り口の側にある事務室の窓口で緊急会議が終わったかどうか聞く。

すると、会議は現在進行形で続いており、終わる目途はまだ立っていないと言う。


「こりゃ先に帰ってたほうが良いな」


俺とケインズさんは先に研究所へと帰ることになった。


学院を出て、少し歩き大通りの端の方に出る。

ケインズさんと他愛も無い話や講義の話、魔力や魔法について話しながら歩く。


「クロノ君は本当にあれを自力で発見したのかい?」


ケインズさんは疑っているというよりは、信じられないといった様子で俺に問いかける。

俺は偶然発見したので、何か仮説や理論があったわけではないという。

すると、「まあ研究なんてそんなもんだよな」とケインズさんが言った。


「俺も新しい発見をする時なんかは、だいたい予期せぬ失敗の後なんだよな」


こういうことをエリスさんに言うと「魔法研究とは確固たる理論に基づくものだぞ」と注意されるという。

双方共にお互いの研究理念に関しては多少の理解はもちろんあるという。

しかし、研究者としてのポリシーのようなものに若干の食い違いがあるのだと。


「ただ、あいつの場合は完璧な理論から完璧な実験結果を出すからな」


だから、論文を書いたり他人に説明するのも滅茶苦茶上手だという。

確かに、エリスさんの授業は分かりやすく的を射た表現ばかりであった。

あの人が学院の魔法科学科長を務めているのもその辺が理由だという。

魔法に関する研究成果や実力で判断すると、例の魔法書を書いたというユリウスさん、先ほどのオグマさんなんかもさほど変わらないらしい。

オグマさんも含め、全員エリスさんの学院時代の同期だというから驚きだ。


「俺らの世代は優秀な奴が多かったからな……」


ケインズさんの話では、他のエリス魔法研究所員も優秀な人が多いという。

しかしエリスさんとユリウスさん、そしてもう一人の同期である研究員は別格らしい。

学生時代は研究所の4名とオグマさん、そして学院で現在「魔導工学科長」を務めているアテナさんという人の6人でよく行動していたという。

ケインズさんを除く5名が恐ろしく優秀だったため、学生時代はいろいろと苦労したと語るケインズさんであった。


エリスさん達の学生時代の話を聞きながら研究所への帰り道を歩いているとき、俺は背後に視線を感じた。

何気なくちらりと後ろの方を見ると、なにやら長身の黒い影が建物の影からこちらを伺っている。

俺の気のせいかもしれないので、あまり気にせずに歩くことにした。


俺達は研究所へとたどり着き、扉を開けて中へ入ろうとした。

だが、先ほどの長身の影が近くの物陰からこちらを覗いているので、ケインズさんに相談して捕まえることにした。


「俺達に何か用ですか?」


時間魔法の「クロックアップ」を使って背後に回りこんだ俺は、長身の怪しい奴の黒いフードを剥がす。

すると、真っ黒なローブの中からは俺の思い描いていた犯人像とは異なるものが現れた。


「あ、あう、あの……」


俺との間に両腕で壁を作るようにして慌てるのは、俺よりも大分背の高い銀髪の女性であった。

その背の高さは、俺よりも500mlペットボトル一個分は大きいケインズさんと俺との中間程度である。

ローブの中に入っているので分からないが、少なくとも肩よりは長いストレートロングヘアである。

フレームのないメガネをかけた彼女の細面は控えめに言っても美人のそれであった。


「勝手に後ろをつけてすみませんでした!!!」


銀髪の女性は目をキョロキョロと泳がせたと思ったら、突然勢いよく背中を直角に折曲げて謝る。

手が届くほどの至近距離にいた俺は、その身長差から額に頭突きが直撃した。

突然の不意打ちを食らった俺はそのまま後ろに倒れる。

倒れる直前に見えた光景は、ケインズさんが俺を指差して笑っている場面であった。


目が覚めると俺は仰向けに横たわっていた。

研究所の図書室に寝かされていたらしい俺の視界に、先ほどヘッドバッドを俺に食らわせた張本人の顔が写る。


「あ!目が覚めました!」


驚いたように口に手を当てる女性は、図書室の扉を開けて外へと走っていった。

その状況に一番驚いたのは俺であり、体を起こすとまだ頭に痛みを感じる。

程なくして、エリスさんとケインズさんを引き連れ銀髪の女性は戻ってきた。


「ようやく目を覚ましたかクロノ君」


エリスさんが帰ってくるほどの時間になるまで意識を失っていたのか俺は。

ケインズさんが「綺麗に決まったな頭突き」と笑いながら茶化す。

この女性に関しては、今日あった出来事と一緒に説明するということになった。


図書室のテーブルに腰掛けた俺達は、まずお茶とお菓子を用意した。

もちろん、お菓子は俺の倉庫から出したものである。

銀髪の女性は「お菓子!?」と言って大変喜んだ様子だった。


「まず何から話せばいいんだか……」


話さなければならないことが多すぎるといった様子でエリスさんが頭を抱える。

「とりあえずはこの人の紹介か」と言うと、先ほどの銀髪の女性についての説明が入る。

彼女は俺の講義を受けていた学院の研究生であるという。

俺が気を失った後、ケインズさんが色々と問いただしたところ白状したらしい。

何か悪気があったわけではなく、突然現れた学科長の弟子が気になって尾行していたという。

それは既にストーカー行為として悪気に分類されるのではないか思った俺だったが、とりあえず今は気にしないことにする。


「後をつけたことも、頭をぶつけちゃったことも本当にごめんなさい!!」


彼女の向かえの席に座っていた俺は、反射的に後ろへと上体をスウェーバックする。

その様子を見て笑いをこらえているケインズさん。


女性の名前は「エイレネ」というようだ。

羽織っていた黒いローブを脱いだ彼女から確認できた髪の長さは、腰ほどまで真っ直ぐに伸びていた。

また、頭が小さく足が恐ろしく長い。

9頭身程度のモデル体系と並ぶと、男の俺ですら自信がなくなってくる。

事故の加害者である彼女は、俺が起きるまでは帰るわけに行かないということで今に至るらしい。

意識が戻ったとはいえ、「それじゃあさようなら」というのもなんだか変なものだということで「お菓子くらい食べていけば」という感じだ。

彼女の紹介が終わったところで、会話は「今日の授業について」へと移る。

どうやら、俺が気絶している間に帰ってきたエリスさんは、ケインズさんが写した俺の講義を部屋で見ていたという。


「あれはすごかったぞ!!透明度が上がった虹色魔力もすごかったが、体内に逆流させるという発想は無かった!!」


だからエリスさん顔が近いです。

隣の席に座っているエリスさんの鼻と俺の鼻がぶつかるほどの距離まで迫ってくる。

エリスさんは研究のこととなると、周りが見えなくなってしまうところが多いようである。


「私も凄く感動しました!」


エリスさんのプニプニとした腕とは違い、角にぶつけたら折れてしまいそうなほどに細い腕でバンと机を叩き、エイレネも俺に顔を近づける。

ケインズさんがそれを見て「モテモテだねクロノ君」と言って口に手を当てて笑っていた。

それからは、エリスさんとエイレネがひとしきり俺の講義について盛り上がったところで問題が起きる。


「私、クロノさんの弟子になりに来たんです!!」


なにやら興奮して自分を見失っている様子のエイレネはよく分からないことを口にする。

少しして、自分の言った内容に気づいた彼女は顔を真っ赤にして「私何言ってるの!?」と恥ずかしそうに顔を隠す。

渋い大人の男性というイメージが完全に俺の中から消え失せたケインズさんは、腹を抱えて爆笑していた。

「これ以上笑わせるな、勘弁してくれと」苦しそうにするケインズさんとは対称に、エリスさんは「クロノ君どうするんだい?」と顎に手を当てて真剣な表情で言う。

魔法に関してはほとんど素人である俺に弟子が出来るという状況が、もはや意味不明である。

いや、つい先日俺が弟子になったばかりだぜ?

弟子に弟子ができるという状況はどうなのかエリスさんに聞いたところ、


「クロノ君がいいのであれば何の問題もない」


とあっけらかんとした様子であった。

よく分からない状況になっているテーブル上で、俺がゴチャゴチャになった頭を悩ませていると、


「私なんかが弟子だと困りますよね、やっぱり私って変ですよね?」


と、なんだか自己嫌悪モードに入っちゃってるエイレネが、悲しそうな顔をしてこちらを見ている。

改めて見てみると凄く美人なエイレネを弟子にするのかと俺は思った。

至って平凡な日本人である俺と、この世界基準でパッと見子供にしか見えないエリスさん、そして挙動不審な動きをするスーパーモデル並のエイレネ。

傍らでは渋い声で爆笑するケインズさん。

この状況、もうなにもかもがカオス過ぎる。

いろいろとどうでもよくなってしまった俺は、


「いや、別に変じゃないし弟子になってもいいよ」


と言ってしまう。

その言葉に目を見開いて驚くエイレネは「ありがとうございます!!」と鋭くお辞儀する。

絶妙なタイミングでやってきた攻撃を「クロックアップ」で危うげなく避ける俺。

ケインズさんが笑いすぎて過呼吸状態になる。


こうして、よく分からない経緯で弟子ができてしまった俺だった。

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