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異世界に転生して時間魔法しか使えない俺  作者: けろ
第一章 異世界生活編
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第十一話 ついに「時間魔法」を習得!?


道端で安売りしていたリンゴのような果物を2つほど買って宿に戻った俺は、そのまま夕食をとるために食堂へと向かった。


「あ!クロノさん!」


席に着いた俺に気づいたウエイトレスの女の子は、お盆を抱えてトコトコと俺のもとへとやってきた。

青いツインテールを揺らしながら小走りで近づいてくる少女はお盆をテーブルに置くと、俺からの注文を取る。


「かしこまりました!」


厨房の方へと走っていく少女を見ながら、俺はまったく別のことを考えていた。

何を考えていたかというと、増えてきたポーションの管理についてである。

今日も魔法研修の報酬としてエリスさんからポーションを計6本ほどもらった。

このまま毎日ポーションが増えていくと考えると、そのうちリュックだけでは持ち運べなくなってしまう。

それに、一本10万ゴールドのポーションを大量に持ち運ぶ男って結構やばいと思う。

このままでは、いつ物盗りに襲われることになるかわからない。


「なんかいい方法無いかな……」


そんなことを考えているうちに料理が現れる。

まあ明日エリスさんにも相談してみようと思い、とりあえず料理を食べることに。


夕食を終えた俺は、桶と湯をもらい部屋へと戻る。

体を綺麗にし終えた俺はベッドに腰掛けて、今日の出来事を思い出し反芻していた。


「俺にも魔法が使えたんだよな……」


俺には使えないと思っていた魔法が実際につかえるようになってしまったことを思い出す。

自分の手のひらをまじまじと見つめながら、ニヤニヤと一人で笑っている姿は少し不気味である。

しばらく魔力の流れを感じたり、魔法を打った感触を思い出したりしている時、俺はあることを思い出した。


「そういえば、エリスさんに貸してもらった魔法書があったな……」


エリスさんに「無適性魔法」の説明書を借りてきたことを忘れていた。

特にやることもないし、読んでみようと思ってリュックの中から本を取り出す。


とりあえず読んでは見たものの魔法吸収板がないと危なくて実験できないようなものや、発動対象となる相手ありきの魔法ばかりだった。

これは部屋で一人では練習できないなと思い、無適正魔法の本は読んで参考にする程度に留めておく。

やることもないし屋台でも覗きに行こうかなと思っていたところ、ふとあるものが目に付いた。


「無詠唱できるようになったんだから、時間魔法もつかえるんじゃね……?」


俺は視界に入った魔法書を手に取り、再び時間魔法の章を眺める。

以前読んでみたが、「無詠唱」という壁にぶち当たり断念した魔法の説明を再度読んでみた。


「初級時間魔法の「ロールバック」か。初級にしては強力すぎるような気もするが……」


初級というより、「古代から現代までの魔法(現代語)」にのっている時間魔法がこれ一つしかない。

しかも、翻訳することができた時間魔法がこれだけだということなので、あまり初級であるということに信憑性は無い。

まあ、とりあえず試してみるかと思い、使い方の説明をもう一度読んでみることにした。

やはりそこには「時を知らせる鐘が、ある方向に歩き出すイメージをすることで魔法が発動できる」と書かれている。


「俺の解釈でとりあえず使ってみるか」


俺は分かりづらい魔法書の表記を「時間が過去へとさかのぼるイメージ」という説明に置き換えてロールバックを使ってみることにした。

魔法の発動対象は先ほど買ったリンゴのようなものにする。

ロールバックと言ってもどこまで巻き戻るのか分からないので、そのへんの実験もしてみることにした。


「まずは、手のひらに魔力をためて……ってあれ?」


俺は重大なことに気づいた。

無適砲の発動は手のひらに魔力を集めたが、ロールバックの場合はどこに集めればいいんだ?

ロールバックはその魔法の特性上、体の特定の部位から魔力を発射するわけではない。

なので、魔力をどこに集めて練り上げればいいのか分からないのだ。


「うーん、とりあえず全身の魔力をそのまま使ってみるイメージでいくか」


俺は魔力を集めることも考えずに全身から魔力を放出するイメージをつくる。

すると、次の瞬間手元においてあったリンゴもどきが作業台の上へと戻っていった。


「うお!!リンゴが動いた!!」


どうやら、ロールバックの発動は成功したらしく、ベッドの上においておいたリンゴが作業台の方へと引っ張られていった。

その事実に興奮した俺は、またしても変な声を出して沸き立った。

ひとしきり興奮したのちに、今起きた現象の分析を始める。

リンゴが作業台の方へと戻っていったのは、リンゴに流れるときが巻き戻されたからであるだろう。

しかし、その巻き戻る時間はおよそ数分程度であった。

リンゴのほかにも布団や微妙な本の配置なんかも動いていたことから、魔法の発動対象はこの部屋の中に限定されていたことが分かる。

確かに、発動した際の俺の意識はこの部屋に集中していたことからも納得できる効果範囲だった。


「効果範囲が広くなると、その分魔力を多く使うということか……?」


俺は一つの仮定を立てて、それについて検証してみようと思った。

先ほど戻っていったリンゴもどきを齧り、芯だけ残った状態を作る。

このリンゴの食べかすにロールバックを使ってみようと思ったのだ。


「次は手のひらに魔力を集中させて、リンゴの芯だけにロールバックを使ってみるか」


早速手のひらに魔力を集めて、リンゴのほうへと向けて魔法を発動する。

すると、リンゴは芯の周りから果肉が増えていくようにして元の姿へと再生された。

リンゴを食べたことによる満腹感は消えることなく、リンゴだけが復元されたのである。


「ほう!これは便利だな!!」


この実験から分かったことは、リンゴなら魔力が尽きるまで無限に食えるようになったということだった。

これで最悪お金が尽きたとしてもなんとか生き延びることが可能になった。


「次は半分にしてみるか」


次に考えた仮説は「半分にしたリンゴに同時にロールバックをかけると2つに増えるのか?」というものである。

もし、これが可能なのだとしたら無限にアイテムを複製できるバグ技のようなことが出来そうだ。

俺は便利道具に入っていたナイフでリンゴを二つに分ける。

リンゴを切って汚れたナイフもロールバックできれいにしておく。

なんだか、時間魔法を使いこなしている感があって楽しい。


半分になったリンゴにロールバックをかけてみたところ、片方だけが再生しもう片方は半分のままであった。

片方のリンゴだけ再生した後に、半分のリンゴにももう一度魔法をかけてみた。

しかし、半分のリンゴが復元することは無かった。


「ふむふむ、もともと一つの物体が二つに増えることはないのか」


そこでまた一つ確認してみようと思った俺は、半分になったリンゴを少し食べた。

こいつにもう一回ロールバックをかける。

しかし、食べかけのリンゴが復元することは無かった。


「ロールバック使用後にコピーとして残されたほうは復元できなくなるということか」


なんだかややこしい状況だが、簡単にまとめると「本体として認識されている方しか復元できない」ということである。

例えば、他人の抜けた髪の毛にロールバックをかけたとする。

そのとき髪が頭に戻って再び生えることはあっても、髪の毛から人の分身を作り出すことはできないということだ。


俺はひとしきりロールバックで遊んだあと、リンゴの食いすぎで満腹になった。

ロールバック以外にも時間魔法があるのだろうかと思った俺は、さきほどの魔法書以外にも本があったことを思い出す。

二番目に内容が易しそうな「古代幻想魔法の手引き(現代・古代語)」を読んでみることにした。


「なになに、時間魔法は……」


なんと4つほど載っていた!

そのうちの一つはロールバックだったので、新しい魔法は3つである。

ちなみにロールバックの説明文には「時間が過去へとさかのぼるイメージ」と書かれていたことから、やはり誤訳であったことが分かった。

そして、「時間魔法」というのも誤訳だったらしく、正しくは「時空魔法」であるという。

しかし、現代語では「時間魔法」という表現で通っているらしいので、俺もそちらにあわせて覚えておくことにする。


新しく発見された時間魔法3つは


・中級時間魔法「ストップ&フロウ」

・中級時間魔法「クロックアップ」

・中級時間魔法「ディメンション」


というものであった。

上から順番に説明を読んでいくと、


 ■中級魔法「ストップ&フロウ」■

「ストップ」は対象に流れる時を止める魔法であり、「フロウ」は対象の止まっている時を再び再開させるという魔法である。


 ■中級魔法「クロックアップ」■

対象の感じる時の密度を濃くする魔法である。クロックアップを受けた対象は周りに流れる時が遅く感じる。


 ■中級魔法「ディメンション」■

この世界とは別の次元に時が止まった空間を作り出す魔法である。作り出される空間のサイズや個数は発動者が任意に設定でき、自由に空間に干渉することが出来る。



「これって本当に覚えちゃっても大丈夫なのか?」


どれもこれもやばい魔法でちょっとビビッてしまった俺だった。




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