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朝凪が連れていく  作者: 百瀬ゆかり
10/10

9 また逢えるその時まで

最後のページとなりました。


彼はどんな選択をしたのか。

その最後をどうか、見届けてください。

あれから数年の時は流れ、私にも縁があって家族を持った。島の土地を買い、家を建ててから恵まれるようにこどもが生まれ。今までの近所付き合いが更に深まり、それは個人なものから家族へ向けられることも多くなった。



葵さんとの思い出を無くさないためにも、夏に差し掛かる前に庭と畑を耕しては取れただけの太陽の種をまいてはジョウロを使って丁寧に育てていけば。またいつの日にか逢えるような気がした。


「あなた、今日も太陽へ顔を出しますか」


まだ本調子じゃないのに玄関まで見送ると渋った妻はとても健気で。その腕の中で幼い息子があぶあぶと言いながら指しゃぶりをしている。静かに頷けば彼女の頬も朱に染まる。出逢いはともかくきっかけが互いにひまわりが好きだった、ただそれだけ。


夏になると妻はひまわりの花に浮かれる。

その仕草にひまわりの君を見出す度に胸の奥が締め付けられるのだ。あのひと夏の蜃気楼は結納を果たす前夜に妻に告げた。


本来なら心にしまい込む方がいいのだろうがこれから伴侶となる彼女に隠し事をするのは筋ではないと思ったために口にしたのだ。月を眺めながら、盃を傾けて。



『とてもロマンチックじゃありませんか。それでもいい。私はあなたを愛します。生きている間はあなたを独占しますから私が天寿全うして逝く時にはその女性と一緒に迎えに来てくださいね』



とニコリと微笑みながら僕の手を握り、額に可愛らしいリップ音を鳴らして口付けたのだ。



「……私にはもったいない、人ですね」



行く前に必ず抱きしめる。

彼女もひまわりの幻の如く消え去ってしまったら今度こそ立ち直れる自信がない。



「ふふふ、愛されているのがよくわかるから嬉しいわ。行ってらっしゃい、あなた」



日陰に置いた自転車に乗って、拡大し続ける太陽の花道を颯爽と通り過ぎていく。下り坂に沿うように開いた黄色は姿が消えた彼女を忘れないための自戒と一方的に取り付けた約束。





『────行ってらっしゃい!』




それに応えるようにベルを2回鳴らす。

これももう日課だ。見えなくなった彼女に対する挨拶だった。

海から流れる朝凪が咲き誇る太陽を撫でるように揺らしている。







青と黄色の境で。また貴女に逢えることを祈って。








向日葵の花言葉『私はあなただけを見つめる』










長い長いあとがき!




この度は「朝凪が連れていく」を

最後まで読んで下さりありがとうございました。

作者の百瀬ゆかりです。


この作品がきっかけで私は現実でもネットであっても公開していくことの楽しさを知るキッカケとなった作品です。元々はもっとざっくりとしていた、明彦が過ぎ去った彼女との思い出をなぞる物語だったのですが何度も何度も改稿して、現在の形にたどり着きました。


初めて公開した作品が生まれたのは高校。

夏休みに入った部室で、ルーズリーフとお気に入りのシャープペンシルでがりがりと書いていました。


今でも覚えているのは、ひまわり畑の火災原因がネズミ花火によってロケットや吹き出しの暴発にしたのは私が元々考えていた火災原因は倫理的に大丈夫か?と先輩や同級生と話し合いをしたものです。


煙草のポイ捨てによる火災はさすがにヤバいしいたたまれないという感想を頂いて、花火の暴発にした経緯ですね。変にリアリティを組み込もうとすると後味悪いから少しでも誰のせいでもない、仕方がなかったという雰囲気を出すにはふんわりさせなければと当時は悩みました。



まだ頭の中で浮かぶ風景を事細かに描写するのが難しいですが、私は私なりの表現を追い求めていきますので応援よろしくお願いします。



次回作の春へ続く!

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