大戦
何かが焦げた匂いがする…
いや…
何かではないな…
全て燃えているじゃないか…
一面剣と屍の山で埋め尽くされていた。
屍も味方の魔人と敵である人間のものと入り混じっていた。
魔王という肩書きを持つ彼は全身傷だらけの満身創痍ながら屍たちの上に立つ7人の人間に叫ぶ。
「愚かなる人の子どもよ!貴様らがどれほどの数を揃えようが、どれほどの兵器を作ろうと、届かぬ!貴様ら劣等種は黙って蹂躙されればよいのだ!」
彼は持てる精一杯の声で叫んだ。
そう、彼も満身創痍なのだ。
しかし彼は剣を下ろさない。
味方の魔人もことごとく散って行く。
魔王であり戦いを仕掛けた彼も知っている。
この戦いは勝てないことくらいは…
自らを高めるために、武の頂きに立つために彼は人界へ宣戦布告した。
最初のうちは魔界側が優勢だった。
しかし大陸の西側半分を蹂躙したところで一転した。
人類は国という垣根を超えて連合軍を作ったのだ。
さらにその7カ国からそれぞれ勇者と呼ばれる男女が集い戦況は一変した。
魔界側は破壊の限り、蹂躙の限り、陵辱の限りを尽くした。
その惨状からか魔人達への恨みは人間に深く刻み込まれその恨みが人々を強くした。
一方魔人側は略奪をするために人界に乗り込んだものの予想以上の被害が出たため戦意が失われつつあった。
そして人類は魔王を追い詰めたのだ。
7人の勇者は傷だらけになりながらもついに魔王の脇腹に剣をかすめることができたのだ。
小さなことのように思えるが、絶対的な王者である魔王が傷ついたという事実は魔人達からしたらさらなる戦意喪失の理由に充分だった。
先鋒の屍人部隊の敗走を皮切りにこれ見よがしと魔人達は敗走していったのだ。
そして魔王の側近さえも逃げて行き魔王は戦場に取り残されることになったのだ。
魔王は悟った、所詮王は孤独であると…
そして目の前にいる7人を見る、そして思う。
なぜこいつらは結束できるのかと…
人間だからか…いや、違うな…
我は……
そして魔王は勇者達との死闘の末勇者4人を道連れについに討伐されたのだ。
魔王は死の淵で気づいた。
あぁ我は他人に理解してもらおうとしていただけなのだな…少しでも他者を理解することができればこんな結末にはならなかったのだろうか…
ーもしもう一度生を受ければあの7人のように…ー
こうして魔界と人界の戦いは魔人側の撤退という形で幕を下ろした。