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双子エルフは破王様  作者: アナログ牛蒡
9/22

―ドラゴンでメイドです 中編―

中編です

「申し訳ございません、皆様は私のご主人様である破王様の居場所をご存知でしょうか?」

「……黒髪の……メイド?」


 黒髪のメイドさんを見ていた兵士たちは、突然現れた謎のメイドに警戒していたが、次第に警戒の眼から品定めをする目に変わった。それに合わせて周りに居た兵士たちもニヤニヤとしだした。


「へへへ、こいつ竜人族でかなりの上玉じゃねえか!」

「あら?私の言ったこと解らなかったのかしら?せっかく破王様のために習得した『言語理解』が無駄になりそうですね……」


 黒髪のメイドさんは少し困った顔をして人差し指を頬に当てて溜息を吐いた。


「ちゃんとわかってるぜ~。俺は破王ってやつは知らんな~誰か知ってる奴いるか~?

「俺も知らね~てか、そんな名前のやつなんていねーよ」

「そうだそうだ、そんなヤツより俺たちのメイドさんになってくれよガハハハハ」


 周りの兵士たちはそれに釣られて笑いはじめた。


「ア゛ァ゛?」


 その瞬間、その場に凄絶な殺気が放たれた。その場にいた兵士たちは「ひっ!」と叫び一瞬にして静寂が訪れた。後ろに居たリルたちには何が起こっているのか全くわかっていない。


「………ふぅ、どうやら皆様からは有益な情報を得ることはないというのが分かりました。もう要はないので私は失礼します」

「まって、メイドのおねえさん!」


 そしてすぐ殺気を抑え、その場から立ち去ろうとした。すると自分の後ろに居た少女たちの内の1人エクレアがそう叫んだ。黒髪のメイドさんはすぐ立ち止まりエクレアの方に顔を向けた。


「はい、なんでしょう?」

「たすけて!」

「…………………はい?」


 いきなりそんなことを言われて頭に大きなハテナマークが出た。


「えっと、それはどいうことなのでしょう?」

「おじちゃんやむらのみんなにひどいことしたこわいひとたちにころされそうなの!だからたすけてほしいの!」

「ふむ、なるほど……。ちなみに皆様はこのままこの子たちと私のことを見逃してくれますでしょうか?」


 そんなことを周りにいる兵士に黒髪のメイドさんは言った。兵士たちはお互いを見て再び笑い始めた。


「そんな訳無いだろ!お前もそいつらと一緒に俺たちと来てもらおうか!」

「へへへ、これだけの人数から逃げれると思うなよ!」


 そう言ってジリジリと近づいていく。だが黒髪のメイドさんはそんな彼らのこととは別のを見ていた。


(ふむ、同じ装備を着た奴があと30人、ここにいる奴ら合わせて45人位といったところですね)


 黒髪のメイドさんはえものの人数を確認すると無詠唱で魔法を唱え、見えない壁を村に居る30人の兵士たちを閉じ込める。これで誰も村から入ることも逃げることもできなくなった。


「さて………始めますか」


 そうつぶやき何もないところに手を伸ばす。そこから魔法陣が出現し、中から1本の棒が現れた。それを見た兵士たちは彼女がアイテムボックス持ちであることに驚いたが、それよりも衝撃的なものを目撃した。


「………なんだあれ……モップ?」


 そう、彼女が出したのはメイドらしくモップを取り出したのだ。一見普通のモップに見えるが、兵士の中で一番後ろにいた兵士がカタカタと震えていた。隣にいた1人の兵士はその震えている兵士に話しかけた。


「おい新入り、どうしたんだ?さっきから震えやがって……」

「……何なんだよアレ………ありえない………バケモノ………」


 彼の名はロメオ・カーストン。今年兵士として入ってきたばかりの新兵である。行商人の息子で、最初は商人として働こうとしたがうまくいかず、新兵募集の紙があったのでなんとなく募集したら受かってしまい、今回の遠征に嫌々ついて行くことになった。


 彼は元々心優しい性格で、村に入った時は彼は森の中で草むらに隠れていたエクレアと出会った。彼は彼女だけでも逃がしてあげよう隠れている草むらを隠すように立ち、仲間の注意を逸らした。だが、他の仲間の兵士たちが彼女を見つけ追ってしまったので、彼も一緒について行って来てしまったのだ。


 そんな彼には商人らしいスキルを持っていた。『鑑定』というスキルで、目で見たものの詳細や価値を見ることができる。


 だが、『鑑定妨害』というスキルによって見ることができないのが普通だが、彼にはもう1つ珍しスキルを持っていた。『妨害緩和』というスキルだ。これは相手のスキルや称号などは見れないが、ステータスと装備の名前を見ることができるのだ。


 そんな彼が見たステータスが以下のとおりだ。


エリーゼ・バハムート

レベル:不明 種族:ドラゴン

体力:計測不可 魔力:計測不可 以下ステータスも計測不可

装備

・???作メイド服 ・エリーゼ専用特製モップ


 彼は逃げたい気持ちでいっぱいだった。こんなバケモノと戦って勝てるはずがないのだから。今ここで狩る側と狩られる側が逆転した瞬間である。


 そして黒髪のメイドさんであるエリーゼは出てきたモップを掴み、少しくるくると回りてから構えた。


「………では、これより目標の殲滅を開始します」


 彼が持っていた剣が落ち、カーンという音が鳴った。それがこれから始まる狩りの始まりの合図のように一瞬のうちにエリーゼの姿が消えた。まばたきの瞬間には一番前にいた兵士の目の前に両手でモップを肩に構えたエリーゼがいた。


「よいしょー」


 そんな気が抜けるような掛け声と共に手に持っているモップをそのまま横に薙ぎ払った。目の前の兵士は一瞬の出来事過ぎて反応できなかった。次の瞬間にはブォンという音を鳴らしながらそこにあったはずの頭が無くなった。頭はグチャッと遠くの壁に衝突して徐々に地面へと崩れ落ちた。首がなくなった体は血を噴き出しながらしばらく立った後後ろに倒れ込んだ。


「……まずは1人目」

「うわああああああああああああああああああ!!」


 一番後ろにいた彼の隣にいた兵士が悲鳴をあげ、一目散に逃げ出した。だが、そんなことをしても無駄なのだ。彼女はすぐさまその兵士の前に先回りした。


「あ、た、たすけ……」


 命乞いをしようとした兵士のことを無視してモップを振り下ろした。そしてその兵士はトマトが潰れたように地面にめりこみながら絶命した。


「これで2人目」

「く、くそこのバケモノめ!!」


 そして残っていた兵士たちは自分たちはこのバケモノを倒さないと逃げれないのだと瞬時に悟った。そして一斉に彼女に突撃した。そこからはただの虐殺でしかなかった。彼女は一瞬で兵士たちのそばに近づき1人ずつ確実に殺していった。


 ある者はモップ反対側に突かれ四肢を吹き飛ばされ、最後に頭を吹き飛ばされ死んだ。ある者は持っていた剣ごと薙ぎ払われて壁まで吹き飛ばされた。1人が後ろから彼女に斬りつけたがモップによって防がれた。だが、同時に手薄になった前をもう1人が斬りつけた。


 その刃が彼女に届くことはなかった。空いていたもう片方の腕でその剣を素手で受け止め、そのまま砕いた後その腕をまっすぐ伸ばし振り下ろした。前にいた兵士に1本の線が出てきた後真っ二つに割れた。そして後ろに居た兵士の剣を弾き、そのまま振り下ろしてその兵士は地面にめりこんだ。


 そして周りに居た兵士たちは皆死んだ。ただ1人武器を落とし、その場で座り込んでいるだけを残して。


 彼女はそのままゆっくりと彼に向かって歩く。彼は瞬時に悟った。ああ、このまま僕もみんなと一緒に死ぬんだなっと。


 彼女は彼の目の前まで来るとそのままモップを振り上げた。彼はなんの抵抗もせず、そのまま目を閉じた。


「まって!」


 そう叫ぶエクレア。彼女の声を聞いて2人は彼女の方を見た。すると彼女はそのままタタタと彼の目の間に行き顔を覗くように屈んだ。


「……おにいさん、わたしのことたすけようとしてくれたひと?」

「……ああ、そのつもりだったけど、結局見つかってしまった。すまない」


 彼はそのまま頭を下げた。だが、彼女はそのまま横に振った。


「それでもわたしのことたすけようとしてくれた。やさしい。いっしょにいたこわいひとたちとはちがうの」

「し、しかし!」


 そのまま何か言おうとしたが何も出ずにただ俯いた。彼女はエリーゼの方を向いた。


「メイドのおねえさん、このおにいさんのことみのがしてほしいの!」

「…………ふむ」


 エリーゼはしばらく彼を見ながら考え、モップを下ろした。


「えっとロミオ・カーストンさん」

「え?あ、はい!」

「あなたをを雇おうと思うのですが、雇われてみませんか?」


 彼は驚いた。いきなりこちらを獲物としてみていた彼女がころっと表情を変え笑顔で雇おうとして手を差し伸べていた。


「いいのですか?僕、そこにいる人たちと同じ兵士ですよ?」

「大丈夫ですよ。あなた元は商人さんだったのですよね?それに面白いスキルをお持ちなのでもったいなと思いまして」


 彼はさらに驚いた。彼女は自分の称号にある『商人見習い』という称号があることを見抜いたようだ。どうやら『魔眼』というスキルで自分のステータスを見たのだろう。彼は兜と篭手を外して彼女が差し出した手を握った。


「……分かりました、あなたに雇われましょう。よろしくお願いしますねエリーゼさん」

「ふふふ、はい、よろしくお願いしますね。必ずあなたを立派な商人さんにしてみますからね」


 その言葉を聞いて彼は何故か背筋に寒気を感じた。すると祭壇の後ろで隠れていた少女リルが彼女の下へと来た。


「……助けてくれて、ありがとうございます。俺たちは……」


 その続きを言おうとしたその時、入口の方から次々と先ほど戦っていた兵士たちと同じ鎧を着た者たちが続々と現れた。そのうちの1人が一歩前に出た。


「貴様、何をしているんだ?」

「……エリオヌス隊長」


 そう眉を潜めながらその男の名を呟いた。やつを一言で表すならクズだ。部下の手柄を自分のものにし、自分の失敗を部下に押し付けてくる。だが、国ではある程度の資産家で、今回の部隊には箔を付ける為に参加している。隊長となっているが、ほとんどが副隊長などに作戦などを丸投げしている。そんな男が見ていたが、すぐさまその近くにいるエリーゼたちを見る。


「おい、そこのメイドと小娘ども!俺の奴隷としてもらってやる、おとなしく捕まるが良い!お前たち、そこにいる裏切り者を殺し、女共を捕えろ!」

「な、なんだと!クソ、この子達を好きにさせないぞ!」


 兵士たちは次々と剣を抜き彼らに近づいていく。彼はリルたちを自分の後ろに隠し、自分が落とした剣を拾い構える。


「……手間が省けましたね。丁度この方角に全員いますしちゃっちゃと終わらせますか」

「はぁ?何を言っているんだ貴様?」


 男がそう呟いた瞬間彼女は背中の翼をバサっと広げ、目の前に巨大な魔法陣を出現させた。それは誰も見たことのない魔法陣だ。それはところどころ炎が漏れ出し、正面にいる彼らは強烈な熱気を感じさせる。


「おい、メイド!貴様一体何を――――」

「『ドラゴンブレス』」


 彼女がそう呟いた瞬間大きく息を吸って光線を吐いた。吐いた光線は魔法陣に触れると巨大な光線へとなって目の前にいた男共々兵士たちを包んだ。その勢いのまま山ごと吹き飛ばし、残るのは黒焦げになった地面のみである。


「……よし、殲滅完了」

「あ、あははは。こりゃすげーや………」


 彼女は満足した顔をしながらふふーんと鼻息を鳴らした。

誤字脱字がございましたらお願いいたします。

つぎで後編です。

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