―入学―
「ゼロスー、アイリスー、もう準備はできたー?」
「はーい、すぐいくー!」
そうやって母さんに急かされながら、俺たちは学園指定の制服に着替え、出かける準備を急いでいた。
今から通う学校は制服があり、男子は茶色のブレザーに黒いスラックスで、ネクタイの色が赤色だ。ブレザーの左ポケットには木を模ったものに1本の線がついた校章が付いている。この校章は特殊で、初等部では学年が上がるにつれて線の数が増えていく。中等部は線から三角に変わり、学年が上がると三角の数が増え、最終的に六角形になっていく仕組みだ。女子は黒いプリーツスカートで、ネクタイではなくリボンになってる。
……あれから1年が過ぎ、俺たちは身長などがそれなりに成長する事ができた。
ついにエルフの学校「アルグリース学園」という場所へ入学することになった。
エルフの村の殆どには学校はなく、エルフの国ナーディナルにあるこの学園へと通わなっくてはならない。小さな寺子屋みたいな物がある村もはあるが、大抵のエルフはこの学園へと通っている。
場所によっては通いづらいと思うだろうが、そこは安心していい。
大抵の村には街へ行くための転移門「ゲート」があり、これのおかげで7歳児でも楽に学園に通うことができる。これはエルフのみの技術で、他の種族が使おうにもやり方はわからない仕様になっている。
……まあ、本当は俺たちには必要ないんだが、周りに合わせるためにあえて使わせてもらうんだけどな。
この学院は、初等部では文字や言葉などの基礎的な知識を学び、中等部からは基礎に加え、魔法付与や武術などの技能を学び、高等部からは生きていくための知識と技術を学ぶ。
初中高等部を3年ずつで、合わせて9年間はこの学園で過ごさなければならない。まあ、数億年生きてきた俺たちにとってはあっという間だから精々楽しませてもらうさ。
そして、更にその上の知識や技術を学ぶためには「カルティア学園」という所へと行くしかない。大抵は卒業後に国内で働く者も少なくないが、より上の職業や冒険者になるためにそのカルティア学園へと行く者が多い。
俺たちは早く冒険者になりたいからその学園へ行くつもりはない。そもそも俺たちにこれ以上の勉学も必要なく、大抵の技術は学校だけで大抵は知ることができる。
知らないことがあってもその時その時に知ればいい。
冒険者になり、ギルドに所属すればそこで発行されるギルドカードもらえる。あれがあればランクによって、ほぼ何処へでも行けるようになる。
そんなこんなで身支度を終え、俺たちはゲートの前に来た。父さんたちは道はわかりやすいだろうから先に行っていい席を確保してくると行って先に行っている。
「いよいよね」
「ああ……行くか」
別に合わせてじゃないが自然と一緒に片足を出して、そのゲートへと入っていった。
ゲートを潜った先は開けた広場に、石造りの建物がたった綺麗な街並みだった。道路も土ではなく、石畳で出来ていた。目の前には大きな城と巨大な大樹「ユグドラシル」が見えていた。
この街は大樹を背に巨大な城を築き、その城の周りに街を作っているような形をしている。大樹の周りは森があり、下手に入ったらいつの間にか入口に戻されている「戻りの森」とも言われている。
周りを見渡すと、さすが国だけあって沢山のエルフがいた。少ないが、中には人間や獣人がちらほらいた。
少し進むと商店が立ち並び、威勢よく客引きをする者や品物に見入る買い物客らなどでごった返していて、活気を見せている。
歩いている中俺たちは周りからの視線が多いことに気づいた。まあ、大体は予想つくけどな。
「……おい、見ろよ。白い髪と黒い髪の子供がいるぞ。今年の新入生か?」
「……本当だ、珍しいな。姉弟か?」
「ばか、よく見ろよ。どっちも一本線だ。男女の双子かも知れないぞ?」
「ねえねえ、男の子の方ちょっと美形でかっこよくない?」
「そうねー、でも女の子の方もちょっとかわいくかも!」
そんな感じでヒソヒソと話しているが、俺たちは特に気にすることもなく学校を目指して歩いた。
学校が近くなると俺たちと同じ歳の子供や登校中の子供が増えてきた。ここでも妙な視線やヒソヒソ声が聞こえる。
しばらくして俺たちは学園へと到着した。学園は貴族街と平民街の境目位にあり、どちらも行きやすい場所にある。俺たちはゲートから来ているから大体徒歩15分くらいで着ける。
建物の作りは街と大差変わりなく石造りのそれなりに大きそうな3階建ての建物である。村から来たエルフが少なくともそれなりの人数が集まっている場所だから、入口にはかなりの人数がいた。
幸いなことにクラス分けは事前に送られた手紙に書いてあったので、保護者が会場に行き、俺たち新入生は教室へと向かった。
ちなみに俺がAクラスでアイリスがBクラスに分かれている。
「ここで別れだな。あんまり暴れるんじゃないぞ?」
「うっ、わ、わかってるわよ」
「「じゃあ、またな(ね)」」
そうお互いに別れを告げ、それぞれのクラスの教室へと入って行った。
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―ゼロスside―
アイリスと別れ、自分の教室に入った。ガヤガヤと会話していた子供たちが俺を見てかなり驚いた顔をし、ざわざわと変わった。
話している内容は大体「あいつのかみくろいぞ」「くろってめずらしいよね?」とか「ねえねえ、あのおとこのこかっこいいよね?」「そうだね、かっこいいね」など予想通りのことを喋っていた。
「よ、ひさしぶりだな!げんきだったか?」
「ん?ああ、ザックスか、久しぶりだな。お前も元気そうだな?」
「ああ、おれはいつもげんきだぜ!」
すると声をかけてきたのが去年魔物化した熊から助けたザックス・イフリードだ。
「まさかおなじクラスになれるんなんてな。これからよろしくな!」
「ああ、これからもよろしく頼む!」
そこから久しぶりに出会ったからしばらくそれぞれ別れた後の話をした。
「そういえばもうひとりのほうはどこになったんだ?」
「ん?アイリスか?あいつなら隣のBクラスだ。会いにいくか?」
「お!だったらきょうおわったらあわせてくれよ、やくそくだかんな!」
「わかった、わかった、会わせてやるって!」
「……だったらぼくもあいたいんだけどいいかな?」
そうやって俺とザックスが話していると横からの男の子が話しかけてきた。
「ん?だれだおまえ?」
「えっと、ぼくのなまえはジャック・ノームランド。だいちのまちノームランドのしちょうのむすこなんだ。ザックスくんはしってるとおもうんだけど……おぼえてないかな?」
「ノームランド………ああ、あのおとなたちのパーティーでおとなあいてとしゃべってたやつか!」
「あはは、あれはしょうらいひつようなことだからやらされてただけだよ」
ジャックは苦笑して俺のことを見た。
「ふたごのきみたちのことはおとなたちのあいだですこしうわさになっているみたいだからあってみたいんだけどいいかな?」
俺は少し考えるふりをした。元々会いにいく予定だったから丁度向こうから来たんだ、これを期に仲良くしておいておこう。
「ふむ、別に大丈夫だぞ?」
「ほんとう?ありがとう!」
「そうだ、俺の名はゼロス・エーデルベイン。シロツナという村から来た、今後も仲良くしてくれるとありがたい」
「うん、よろしくねエーデルベインくん」
「ゼロスでいい、そのほうがいい」
「わかったよゼロスくん、ぼくのことはジャックでいいよ」
そうして自己紹介し、お互いに握手をした。そうして俺たちはしばらく会話をしていると、呼びに来た先生と思われる男性がドアを開け廊下に出るように呼びかけていた、俺たちは先生の指示を聞いて会場に向かうのだった。
―アイリスside―
ゼロスと別れ、自分の教室に入った。周りにはそれぞれ同じ村出身の者同士で会話している。
だけど私が教室に入ったのに気がつき周りの子たちが私の方を見て皆固まっていた。とりあえず窓側に行き、そこに寄りかかって外を見た。
……なんかこのクラスの視線こっちに向き過ぎてない?
髪をかきあげたらみんなワァ~といった感じに見惚れている。
ちらっと見ると男の子たちはだらしない顔をし、女の子たちは目をキラキラさせながらこっちを見ていた。中には頬を赤くした子もいた。
そんな中、見覚えのある子を見つけた。あると言っても私自身が会ったわけじゃない。
私はその女の子のところへ行き挨拶をすることにした。
「ごきげんよう、あなたがゼロスが言っていたシエル・ウンディードさんかしら?」
「ふええええ!?そ、そうです……けど……あなたはもしかして?」
「ふふ、初めまして、私の名前はアイリス・エーデルベイン。ゼロスとは双子の姉弟よ、アイリスって呼んでね」
私が話しかけた髪が水色の女の子は、ゼロスが魔物化した熊から助けた2人の内の1人シエル・ウンディードである。
「あなたのことはゼロスから聞いてるわ、もしよろしければ私とも仲良くしてもらえないかしら?」
そういい私は微笑みながら彼女に手を差し伸べた。彼女はあわあわと顔を真っ赤にしながらその手を握った。
「…………こ、こちらこそ……よろしく……おねがいします///////」
あらやだ、意外と可愛いじゃない。コネ目的なしで普通に仲良くしたいわね。
「ちょっとそこのあなた、あたしのシンユウになにしてんの?」
少し顔を真っ赤にしていたシエルを観察していたら不意に声をかけられた。声のする方を見ると黄緑色のセミロングの女の子がこっちを睨みながら腕を組んで仁王立ちしていた。
「なにって、お友達になっただけだけど?」
「ふーん、そんなのどうでもいいわ。シエルがこまってるからはやくてをはなしなさい!」
彼女は私とシエルの間に入って手を離させた。シエルは少し残念そうな顔をしていた。
「乱暴ね、あなたは?私はアイリス・エーデルベイン。よろしくね」
私はシエルとしたことを同じように微笑みながら手を出した。
「!、ふ、ふーん、あなたがシエルがいっていたふたごのもうひとりね!」
一瞬驚いた顔をしたけどすぐにふふーんと笑った。
「あたしはフレデリカ・シルフィード、シエルの1ばんのシンユウよ!」
フレデリカと名乗った女の子は腕を腰に当てて胸を反らしてドヤ顔をしていた。すると彼女の後ろに居たシエルが服の袖と引っ張る。
「フーちゃん……アイリスさんもわたしとともだちになった……けんかはだめ!」
少しムッとした顔をしたシエルがフレデリカ睨み、彼女は困った顔をした。
「………シエルがそう言うなら、仲良くするわ」
フレデリカは1つため息をしたあと私の方を見て、出していた手を恐る恐る握った。
「べ、べつにシエルのためになかよくしようとおもったわけじゃないんだからね!カンちがいしないでよね!」
「う、うんわかったわ?」
うーん、こういうのをなんて言うんだっけ?えーっと………ツンデレ?
そうやって話していると呼びに来た先生と思われる女性がドアを開け廊下に出るように呼びかけていた、私たちは先生の指示を聞いて会場に向かった。
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