―反省会―
手に入れた情報を整理したりします
………………どうしよう、ちょっと困ったな。いや、ちょっとどこじゃないかも。凄く困った。今目の前の2人の内、護衛の女性が今もこちらに警戒して剣を向けている。
えー、どうしてこうなった?私普通に助けて、普通に挨拶しただけなのに?
どうしてこうなったか、流れで言うならこんな感じ。
まずは相手に安心してもらえるように笑顔で2人に近づく。
「こんにちは、お怪我はありませんか?」と挨拶する。
すごい顔で睨まれながらいきなり剣を向けられる。なんで~?
護衛「近寄るなバケモノ、お前は何者だ!?」いや、何者って……
「私はこの森に住むただのエルフです」
護衛「ただのエルフだと?嘘をつくな、貴様のようなエルフなどいない!」ええ~………
護衛「私たちをどうするつもりだ、さっきのやつらと同じように殺すのか!」いやいやいや……
「私はあなたたちを助けただけよ、何もしないわ。」ワタシ、ワルイエルフ、チガウ。
護衛「信じられるものか!」
といった感じで私はどうしたらいいのかわからなくなっていた。当の2人はというと……
「……安心してください姫様、あなた様のことは命をかけて必ずお守りします!」
「ダメよ、あれほどいた兵士たちをたった1人で倒した相手なのよ、勝てるはずないわ!向こうもなにもしないって言ってるし、話し合いだけでも……」
「信じてはなりません、姫様!得たいの知らない者がなにもしないわけがありません!こうやって時間を稼いで仲間を呼んでいるのかもしれないんですよ!」
「で、でも………」
…………盛り上がってるな~どうしよう、一層の事殺す?それとも逃げる?
………うん、そうだ逃げよう。別にただ襲われていたから助けただけだし~、王族ぽかったからコネあったらいいかな~って思っただけだし~別にいいっか。
というわけで今現在向かっているゼロスに念話を飛ばすことにした。
(ゼロス、もうここには用はないわ、帰りましょう)
(ん?もしかして何とかなったか?てっきりめちゃくちゃ警戒されて話にならないって状況になってそうなんだけど……)
(うぐっ………そのとおりよ。交渉の余地もないし、面倒になってきたから彼女たちから逃げようと思うのだけれど、いいかしら?)
(…………だよな~、あんな魔力と殺気出せば誰でもやばい奴と思って警戒するって………わかった、とりあえず合流して反省会しないとな。しかし王族とのコネ、惜しかったな……)
(うう~悪かったわよ……はぁ、もう直せたと持ったんだけどな~)
アイリスは自分が行ったことを悔いながら空を見上げ、心の中で涙した。
(…………やっぱり奴らと一緒に殺して情報だけ貰っていこうかな……)
(おいおい……また素が出てるぞ?ったく、なんで短気なお前が魔法得意なんだよ……普通俺だろ)
ゼロスが呆れたような声が聞こえた。私自身もしまったと思った。
…………早く直さないとな~……まあいっか、綺麗なバラには棘があるって言うし。
そう思いながら私は彼女たちを再び見た。
「……話にならないみたいだから私は帰るわ。また会えたらそのときは仲良くなりましょう?それじゃあね」
そう言ってすぐ近くの茂みに入ってそこから飛んでゼロスがいる方向に飛んでいった。
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アイリスが去ってそこにいた2人は安堵の溜息を吐いた。護衛の女性は持っていた剣を鞘に収めた。
「……危ないところでしたね、お怪我はありませんか?」
「ええ、私は大丈夫よ。でも、他の方たちは……」
「………姫様だけでも守れてよかったです、彼らはきっと満足してくれるでしょう」
「うう~……でも~……」
「それでしたら彼らのためにも先を急ぎましょう、またいつ帝国が襲って来るかわかりません」
護衛の女性は馬車の下へ行き、出発の準備に入った。そのあいだ少女はアイリスが飛んでいった方を見た。
「………本当に彼女は一体誰だったんでしょうか……ハイエルフなのかしら?」
「わかりかねますが、少なくともにただのエルフではないでしょう。ですが、あんな魔力量を持っているなんて聞いたこともないです」
「……あの子本当に何もしてこなかったわ。もしかしたら本当に助けてくれたのかもしれませんね」
「………………かも知れないですね。ですが、子供なのにあれほどの力を持っているのです、油断は禁物です。っと姫様、準備が整いました急ぎましょう!」
「ええ……わかったわ」
そして彼女たちを乗せた馬車は先へと進み数日後には自分たちの国へと帰還することができたのであった。その道中少女は彼女とまた会えたら話をしてみたいと思うのであった。
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そしてしばらくしてゼロスとアイリスは合流して2人だけしか知らない隠れ家へと来ていた。見た目は森の中に立つ小さな家だが、その周りには生き物を寄せ付けないための結界が施されている。2人はその小屋の中央にあるテーブルを挟むように立っていた。
「……では、反省会を開くぞ。まずは俺からだな。」
そうゼロスが言い、収納魔法にしまっていた半分になった魔物化した熊を取り出した。
「へ~かなり大きいね?味見はしたの?」
「いや、まだだ。食ってみるか?」
そして台所に一部を持って行き、火の魔法で火をつけてまずは焼いてみた。いくら料理ができなくても焼くことくらいはできる。
焼きあがったのでさっそく試食してみた。結果から言おう、美味しかった。魔物化したものは肉質が変化して食えなくなる世界もいくつかあるが、この世界の魔物化したものはどうやらその心配はないようだ。つい調子に乗って全部食べてしまったが、また狩ればいいので問題はない。
「……げふぅ、つい食っちまったな」
「そうねえ、私も夢中になってしまったわ。他には何かあった?」
「ん?ああ、ザックス・イフリードとシエル・ウンディードってやつと知り合いになった。恐らくだが、4大都市の市長の子供かもしれない」
この国は首都を中心に4つの都市があり、火の都イフリード、水の都ウンディード、風の都シルフィード、大地の都ノームランドという都市がある。
「来年は学校というものに入学するらしいから会えるかもしれないからまた会えるとは思うからそこでちゃんと仲良くしてやればいいコネができるはずだ」
「そうね、あと2人とコネが持てれば、エルフの国を周り放題ね!」
「ああ、そうだな。次はアイリスだが……まあ、コネ作りはできなかったのはわかったからそれ以外な?」
「うぐっ、まだ言うの?悪かったって言ってるでしょ!でも、コネ以外は情報を手に入れたわよ!」
彼女はコホンと咳払いしてから情報を話した。
「まず彼らだけど、どうやら人間の国のイグニドていう名の帝国の兵士で、同じ人間の国のシルヴェンって国の王女を攫おうとしていたみたいよ」
男たちからの情報によると、その2国は大変仲が悪く、度々戦争を繰り返している。彼らは国の有利になるように移動中の王女を拐おうとしていたのだ。
「ふむ、人間同士の争いか……全く、どの世界に行っても人間は争いばかりだな」
「そうね、私は個人的に帝国は嫌ね、あいつら私のこと性欲の対象としか見てなかったんだもの」
「はははは、美人に生まれた者の宿命だな」
ゼロスはニヤニヤと笑い、アイリスはむっと頬を膨らませてそっぽを向いた。
「話が途中だったな、他にはなにかなかったか?」
「そうねえ……リーダーみたいなやつはかなりの腕の兵士で、部隊を持つ隊長クラスの男だったみたいね。帝国としてはちょっと痛いダメージもらったんじゃないかしら?他にも……」
そしてそのまま2人はお互いの情報を共有した。話終わった頃には外はオレンジ色の夕日に包まれていた。
「―――って感じで私の話は終わりかしらね」
「ふむ、そうだな。外もいい感じに日が沈んできたしちゃっちゃと終わりにするか。あまり時間かけるとオヤジ達が心配しちまう。これにて反省会は終了だ。さあ、帰ろう、我が家へ!」
彼らは隠れ家を後にし、本当の我が家へと帰るのであった。
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