―黒幕戦3―
時間がかかりましたができました!待たせてごめんね!
「お久しぶりでございます、お会いできて光栄でございます。『破王様』」
そうエリーゼはアイリスに向かって言った。それを聞いた悪魔の2人は驚きながらアイリスとエリーゼを交互に見た。
言われた当のアイリスは最初怪しむように睨んだが、少しして目を見開きながら驚いた顔をした。そして段々と顔色が悪くなっていった。
「え、えーっと、もしかしてあなたエリーゼ?ひ、久しぶりね~?まさかこっちに来てたなんて思わなかったわ~」
「はい、本当にお久しぶりでございます。破王様に任せていただいたあの件以来でございます」
「あ、あら~?そんなに経っていたかしら~、時間が経つのは早いものね~アハハハハハハハハ!」
「うふふ、そうですね。時間が経つのは早いものですね…………………何か言うことはありますか?」
「…………………………はい、すっかり忘れてました」
そうアイリスが言うとエリーゼから尋常じゃないほどの威圧が放たれた。それを感じたアイリスは反射的にその場で正座した。※ここは空中です
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
な、なんなんですかこの状況は?
先ほど現れた少女が殺気を出していた少女が彼女を見た瞬間顔色を悪くなり、ニコニコと終始笑顔のまま話す彼女に対して少女は視線をあちこち泳がせながらダラダラと顔から汗が流していた。
そして彼女が薄ら目を開けた瞬間、尋常じゃないほどの威圧が放たれた。僕たちは間近にいたがなんとか意識を保ったが、周りに居た虫たちは彼女の気に当てられ何匹か気を失い地面に落ちていった。
その後は少女は正座しながら彼女に叱られていた。※空中です
彼此1時間は経った頃、ギルラムがしびれを切らしたようだ。
「おい、キサマら!いつまで話して―――」
「―――うるさいです、静かにしてください」
そう殺気を向けられギルラムはその口を開けたまま言葉が出なくなった。彼はきっと一瞬で自分の命を取られたような錯覚を魅せられたのだろう。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「―――――ということで分かりましたね?」
「………はい、申し訳ございませんでした」
一度ギルラムに話を中断されてからさらに1時間が経ち、ようやくエリーゼからのお説教が終わった。
ぐぬぬ………なんで私がこんな目に………後でゼロスにも説教食らわせてやる!
「さて、それではお体の汚れを落としますね」
「あ~そういえばそうだったわね」
そこで自分が全身真っ黒であることに気づいた。そういえばあのタコに真っ黒にされてキレてたけどエリーゼのせい………げふんげふん、彼女のことでつい忘れていたわ。
エリーぜは一礼をしたあと、右手をアイリスの方にかざすと頭上に魔法陣が現れ、そのまま下降していきアイリスの体を通過したそばから墨で黒くなっていた体がまるで新品のように綺麗になっていった。
「………ふう、さっぱりしたわ。ありがとうエリーゼ」
「いえ、これくらいのことどうということはありません………しかし、今回の御体は随分お綺麗ですね?」
「あら?ふふふ、それはありがとう。ちなみに今の私の名前はアイリスよ」
「なるほど、アイリス様ですね。わかりました、ではこれからはそうお呼びしますね?」
「……………うおっほん、ごほん!あー、そろそろよろしいかなお嬢さん方?」
お互いにキャッキャウフフしていると後ろにいた男がアイリスたちに聞こえるようにわざとらしく大きな咳払いした。アイリスは不快そうに男のほうを向いた。男は一瞬怯んだが、すぐに笑顔に戻った。
「そこのお嬢さんははじめましてかな?僕は『七つの大罪』が1人『強欲』のマモンと言います。どうぞよろしくお願いしますね」
そう言い軽く一礼して、変わらずニコニコと笑っていた。だが彼の目の奥からは欲望に満ちた目でこちらを見ていた。その視線はアイリスにも向けられており、全身を舐め回すように見ていた。
「話を聞く所によると、恐らくあなたはそちらのメイドの彼女の主人であると認識でよろしかったですかな?実はその彼女に僕のところに来ないか『お願い』していたのですよ」
「あら『お願い』?人質を取って助けて欲しかったら自分の物になれだなんて言ってませんでしたか?それは『脅迫』の間違いではなくて?」
「おやおや怖いですねー、脅迫だなんて………あなたが素直にこちらに来てもらうための1つの手段ですよ?」
エリーゼはギロリと睨めつける。マモンはニコニコと笑っていたが、少し顔が引きつっていた。
「ふーん………っで?要件はそれだけかしら?ないならあなたたちを消し炭にしたいのだけれど?」
「はっはっは、気が短い方ですね?先ほど彼女が言いませんでしたか?こちらには人質がいるんですよ?」
「その人質ってあの船にいた子供たちのことかしら?それならさっき逃がしてあげたけど?」
「そうですね、本来はその子供が人質でしたが、部下の失敗で逃げられてしまいました。ですが、もしもの為に人質は他に用意しておいたんですよ」
そう言いマモンが指を鳴らすと黒い空間が現れ中から薄黒い球体が現れた。その中には1人の少女が入っており、その姿を見たアイリスは驚いた顔で叫んだ。
「シ、シエル!」
そう、中にいたのは先に戻っていたはずのシエルだった。彼女は丸まりながら眠らさせていた。
「ふふふ、実はこの混乱に乗じてコレクションになりそうな子を探している時にちょうど彼女が歩いていたところだったので催眠の魔法で眠らせてから結界の中に閉じ込めさせていただきました」
「………お前、シエルになにかしてみろ。お前がしたことがどれだけ愚かだったか後悔させてやる!」
そう言いアイリスから強烈な殺気が出て、マモンの隣にいたギルラムや周りに飛んでいた虫たちは恐怖した。
「は、はははは、凄まじい殺気ですね。そこで提案なのですが、取引しませんか?」
「………取引?」
マモンはポケットから見せびらかすように2つの首輪を取り出した。
「この子を解放する代わりにこちらの首輪をつけて頂けませんか?」
「………なるほど、隷属の首輪ですか」
隷属の首輪とは着けたものを奴隷へと変えるマジックアイテムで、効果として主人の命令に逆らうことが出来なくなるという効果がついている。無理に命令に逆らおうとすれば全身に痛みが走り、最悪の場合は死に至る。
本来奴隷は奴隷商で奴隷を購入し隷属契約を行うことで首に首輪が自動的に着くものであるが、この首輪は特殊な魔法を使える者が作るかダンジョンの深いところで入手するしか手に入れる方法はない。
「ふふふ、どうしますか?こちらをつけてこの子を開放するか、この子を犠牲にして私と戦うか………」
「…………」
「お嬢様…………」
アイリスは難しそうな顔をして考えている。そんなアイリスを不安そうにエリーゼは見ていた。少しの沈黙のあとアイリスは口を開いた。
「…………本当にその子を開放してくれるのよね?」
「ええ、もちろんですとも。僕は嘘を付くことなどいたしませんとも」
そう聞いてアイリスはまた少し考えたあとまっすぐマモンの方を見た。
「………わかったわ、着けてあげる」
「………よろしいのですかお嬢様?」
「うん、全然問題ないよ。エリーゼもそれでいいかしら?」
「………かしこまりました、破王様がそうお望みでしたら私から言うことはございません。では私も着けましょう」
エリーゼは納得したように頷き、そう答えるとマモンは一瞬目が開き、嬉しそうな顔をしたがすぐさまニコニコ顔に戻した。
「わかりました。では、着けて下さるということでよろしかったな?」
「そうだと言っているでしょ?いいから早く寄越しなさい」
そう言いアイリスが近づこうとするとマモンは左手を前に出してアイリスを止めた。
「ちょっと待ってくださいね。このままお渡ししても良いのですが、近づいたその隙にこの子を連れ去られてしまうかもしれないので………これを彼女たちに渡しに行きなさい」
「は、はい、わかりました………」
そうマモンから隷属の首輪を受け取ったギルラムはビクビクしながらアイリスたちのところに持っていきそれぞれに渡した。アイリスたちは受け取ったあとお互いに目を合わせたあと自ら首に隷属の首輪を着けた。
「さあ、着けたわよ?早く彼女を解放しなさい」
そうアイリスはマモンに催促した。だがマモンはニコニコと笑っているだけだった。
「……………まさかあんた―――騙したわね?」
「ふ、ふふ、ふふふ、ふははははははははははははは!ついに!ついに手に入れたぞ!」
「こ、このぉ!―――――っち!」
アイリスはマモンに向かって魔法を放とうとしたが魔力が霧散してしまい攻撃できなかった。
「ふふふ、元々竜人のであるあなただけを手に入れる予定でしたが、君はかなりの上玉で私のコレクションに加えるに相応しい!まさかこんな簡単に手に入るとは飛んだ嬉しい誤算でしたよ」
「おお!おめでとうございますマモン様!」
マモンはアイリスたちに近づき、アイリスの顎を掴んでいろんな角度から彼女の顔を覗き始めた。その際横に居たエリーゼからものすごく殺気の篭った視線を向けられた。
「さて、ではそろそろこの街にもお別れをしておきましょうか………ではあなたに命令です、この街を焼き払いなさい!」
「…………」
マモンはエリーゼにそう言うと彼女は無言のまま右手を上げその手の平から膨大な魔力とともに巨大な炎の玉を出し、その玉を大きくしていく。
「ふはははははははははは!街もろとも消え去り、我らが魔王様復活の生贄となるがいい!ふははははは「そいつは出来ない相談だな」!?だ、誰だ!」
突然声が聞こえたマモンは周りを見渡したが見当たらなかったが、背後にあった薄黒い球体が半分に斬り裂かれた。
それは下から急上昇してきたゼロスがすれ違いざまにシエルを閉じ込めていた球体を半分に斬り裂いた。ゼロスの背中にはアウラがしがみついており、ゼロスはそのままマモンたちの上に通り過ぎたあと下向かってゼロスは叫んだ。
「あとは任せたぞザックス!ちゃんとキャッチしろよ!」
「いきなりすぎるんだよこん畜生ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
そう叫んだその先では建物の屋根を伝って助走を付け足の裏に火の魔法を発動させて飛んできたザックスだった。
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