―黒幕戦2―
大変お待たせしました。
引越しや年末年始などで忙しすぎてかなり遅れてしまいましたがやっと完成しました!
場面をゼロスたちに戻り、部屋の天井を破壊されデビルオクトパスと対峙しており、その間にも船は足に巻き付かれキシミを上げている。
「さて、どうすっか?」
「そうね、とりあえず足止めしといて。私はこの子達を逃がすわ」
そう言ってゼロスは剣を構え、デビルオクトパスの足の攻撃を防ぎ始めた。アイリスは風の魔法で檻を斬り裂き、檻の中にいた子供たちを外に出した。
「ありがとーございます!おねーしゃん、おにーしゃん!」
「………!い~え、どういたしまして~」
メイド服を着た女の子のアウラの満面な笑顔でお礼を言われ、アイリスは頭を撫でながらニコニコと笑っていたが、内心では「お持ち帰りしたい!」と考えていた。
一方、ゼロスは攻めてくる足を受け流したり数度斬りつけて斬り裂いていた。だが、いくら斬り裂かれても足は即座に再生していくためキリがなかった。しかもゼロスが今持っているゴブリン達から入手(強奪)した剣にヒビが入り始めていた。
「おーい、いつまで遊んでんだ?早くそいつら逃がせよ。そろそろ剣がもたねぇぞ!」
いけない、いけない。この子可愛くてついトリップしてしまったわ。とりあえず避難場所としてシエルの家に送り届けようかしら?あそこならそこそこ広いし、結界張っておけばなんとかなるでしょ。
「………というわけで、『ゲート』」
アイリスが何もない空間に手を伸ばすとその先になんの変哲もない黒い扉が現れた。扉が開くとその先は真っ暗で、その先を見ることはできない。転移系の魔法は少数の上位の魔術師や悪魔が使える魔法のため普通の者は見ることもない。そして、それを見た子供たちはいきなり謎の黒い扉が現れ勝手に開いたのだ。扉の先も真っ暗で見ることができないため恐怖しないはずがないのだ。だが、彼女はそんなことなどおかまいなしに扉の先にグイグイと押し込んでいった。
「あ、あの、これは?『まあまあ、大丈夫だから』えっと、『まあまあ、大丈夫~大丈夫~』………は、はい」
1人の子供が扉のことを聞こうとしたがアイリスは強引に背中を押してそのまま次々に子供たちを扉へと押し込んだ。
「―――ふう、これであとはあなただけよ。早く入りなさい」
最後の子供を扉に押し込んだアイリスはアウラに逃げるように言った。だが彼女は首を横に振った。
「私も戦うなの!」
「え、えっと………その気持ちは嬉しいんだけどね、やっぱ危ないことはさせたくないというか………」
「………?大丈夫、私強いの!」
「うーん、そうなんだけどね………でも………」
キラキラとした目にタジタジとしているとパキーンという音が聞こえた。どうやらゼロスの持っていた剣が度重なるデビルオクトパス攻撃に耐えられずに折れたようだ。そして1本の足がアイリスたちに迫ってきた。アイリスはアウラの前に出て障壁を張り、弾き飛ばすようにその足を防いだ。
「………全く、仕方がないわね。アウラちゃん無理はしないでね?危ないと思ったら下がるのよ」
「ハーイなの!」
「おい、俺の心配もしてくれよ!」
「ダゴ?ダ、ダゴォォォォォォォォ!」
2人はデビルオクトパスへと意識を向けた。どうやら獲物が減ったことに怒っているようだ。ゼロスは意識が2人に向いた好きに転がっていた新しい武器を持って斬りかかった。
「オラァ!!」
「せい!………うーん、なんかあんまり効いてないっぽい?」
アイリスはゼロスを援護するように風の刃を放ち、デビルオクトパスの足を攻撃した。しかしゼロスが斬ったときよりもダメージが入っておらず、あまり効果が無いようだった。
「よっと、どうやらあんま効いていないみたいだな。どうする?このままだといつまでたっても終わらんぞ」
「そうね………だったら、こんなのはどうかしら?」
そう言いアイリスは自分の周囲に水で出来た矢や岩で出来た矢など、様々な属性の矢の魔法を出現させデビルオクトパスに向けた。
「さて、どれが一番効くかしらね?………行け!」
放たれた複数の魔法の矢は次々とデビルオクトパスへと向かった。デビルオクトパスは放たれた魔法の数に驚愕し、顔を守るように足でガードした。
様々な魔法の矢が足に当たる中、炎の矢だけは突き刺さった。デビルオクトパスは悲鳴を上げながらすぐその刺さった足を海の中に引っ込み、再び足が出るとその部分だけ焼け跡が残っていた。
「………ふふふ、それが効くのね?」
「ダ、ダゴォォォォォォォォ!!」
するとデビルオクトパスが足を燃やされた怒りで口から黒い墨を吐いてアイリスたちに目掛けて放たれた。前にいたゼロスたちはジャンプして避け、アイリスは右手を前方に出して魔法の障壁を出した。
だが、その時船が揺れてアイリスはよろけてしまい、その墨をモロに浴びてしまった。それを浴びたアイリスは全身が真っ黒になってしまい着ている制服もびしょびしょに濡れてしまっていた。
「ダゴダゴ、ダーゴダゴ!」
「あっちゃー、くらっちまったか。おーい、大丈夫かー?」
「………………………………ゆるさない」
そう呟くと同時にアイリスから膨大な魔力が溢れ、その魔力が上に突き上げた右手のひらに集まる。手のひらに集まった魔力は紅蓮の炎の球体が生み出された。その球体は熱量と共に大きく膨張していく。
デビルオクトパスはアリスが作り出している物が危険であると察知し止めに複数の足を繰り出すが、炎の球体から放たれている炎で近づくことができなかった。
「おいおい、それをここでぶっぱなすかよ!?おい、早くそれを止めろ!」
「ふふ、ふふふふ………アハハハハハハハハハハハ!!よくも、よくもやってくれたわねぇ!」
アイリスはゼロスの声が聞こえていないようでそのまま球体に魔力を注ぎ込み、膨張させていく。彼女の周りからは膨大な熱が発生し、周囲の壁などから火が発生し始めた。
「っち、しょうがねえ。おいガキ、ここから離れるぞ!」
「ふえ?みゅあああああああああ!」
ゼロスはアウラを持ち上げるとデビルオクトパスの反対側に壁を壊しながら走り思いっきり踏み込んで船から飛び出した。
「さあ、地獄の業火に焼かれて消えてなくなってしまえ!『メルトダウン・インフェルノ』」
その炎の球体は直径約10m程まで膨張し、アイリスが腕を下ろすとともにその球体はデビルオクトパス目掛けて頭上に移動しそのまま落下していった。デビルオクトパスは逃げようと移動しようとした瞬間、全身に炎で出来た鎖に縛られた。いきなりのことで焦るデビルオクトパスは再びアイリスの方を見るともう片方の左手を自分にかざしていた。
「………『フレイムチェーン』うふふ、逃がさないわよ?―――――――消えなさい」
炎の球体はデビルオクトパスに接触するとともに大爆発を起こし、巨大な火柱を上げた。デビルオクトパスは悲鳴を上げながら全身を焼き尽くされていく。最後に見た光景がまるで興味が失せたように冷たい目で自分を見下ろすアイリスの姿だった。
そしてデビルオクトパスは灰すら残らず消え去った。
「………ふう、危なかったな。もう少し遅れてたら巻き込まれてたぞ」
「ほわぁ~おねーしゃん、しゅごいのー!」
船から飛び出たゼロスはアウラを抱えて少し離れたところの海上に立っていた。これは足の裏に魔法陣を展開してかろうじて立っている。そして爆心地だった場所は巨大なクレーターができており、底は地獄のような真っ赤になった地面が露出していた。そしてその中に1つの人影だけがあり、その人物は無表情でその中心を見下ろしていた。
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3人がデビルオクトパスと戦っていた頃、上空に逃げて街を見下ろしていたギルラムともう1人の男がいた。ギルラムの表情は芳しくなく、顔から汗がだらだらと流れていた。もう1人の男は腕を組みながら眉をひそめ、かなり不機嫌そうな顔をしていた。
「…………おい、これはどういうことなんだ?」
「ち、違います!こんなはずではなかったのです!」
「ふむ、では今回の作戦の内容を言ってみろ」
「は、はい、まずメイドどもを陸側の誘導隊で釘付けにしているうちに海上からクラーケンとデビルオクトパスと数十のデスバグたちで町を襲い、街の奴らを蹂躙したあと誘導隊と合流してメイドどもを捕縛するという計画でしたが………」
ギルラムの説明を聞いた男は周りを見渡しため息は吐いた。彼らの周りには数匹の虫しかいなかった。
「………メイドどもがあれほど強いとは予想外ではあったが、なぜクラーケンは現れていないんだ?そしてデスバグたちがこんなに少なっているんだ?」
「そ、それは、あのガキどもが邪魔をして!で、ですがまだデビルオクトパスが!」
そう答えた時に膨大な魔力とともに巨大な火柱がたった。その火柱を見たギルラムは開いた口がふさがらず、男は再び溜息を吐いた。
「…………そのガキどもに今さっきそのデビルオクトパスがやられたようだが?この責任どうするつもりなのだ?」
「うぅっ…………!」
するとこちらに何者かが近づいてきたのを感じた男はその先を見る。
「おお………これはこれは、僕が送った手紙を見てやっと会いに来てくれたのですね。もしかして僕の物になる気になりましたかな?」
「………べつにあなた方に会いに来たわけではないですし、あなたの物になるつもりもありませんよ」
「ふふふ、強情ですね。では、どのようなご要件ですかな?」
「それは決まってます。ある御方と会いに来たのですから」
「ある御方?それはいったい……………!?」
男は自分以外に会いに来たと言われどういうことだと思ったとき、いきなり背後から強烈な殺気を感じ振り向くと、何故か全身真っ黒になったエルフの少女がいた。
「ふふふ、みぃ~つけ~たわよぉ~!」
「!?ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
同じように振り向いたギルラムは恐怖する。アイリスの顔は笑ってはいるものの、目の奥は深淵のような深さを感じるほどの殺気を宿していた。
そしてメイドの彼女は左手を胸に当てお辞儀をしながら言った。
「お久しぶりでございます、お会いできて光栄でございます。『破王様』」
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