―別れた後の2人とその後―
少し時を遡ってゼロスと別れたザックスとフレデリカは上の階へと向かった。
「―――――うぉら!」「ぐへぇ!」
「―――――はぁ!」「はうぅん!」
道中現れた敵は時にボコボコにし、時には男の勲章を粉砕して行った。そしてとある部屋の前に立った。扉の奥からは豚の鳴き声ような男の怒鳴り声が聞こえてきた。
「………どうやらここが親玉の部屋っぽいな」
「そうね、さっさと片付けてシエルのとこに帰りましょ!」
ザックスたちはドアを蹴破るとそこには先ほどの鳴き声から予想した通りのまるまる太った豚男と3人の男たちがいた。どうやらその豚男がここの親玉らしい。
「ぶひゅっひゅっひゅっひゅ、よく来たなのう!よくもわしのアジトをポンポンと潰しおって、この落とし前はきっちり払ってもらうぞ!………ってよく見たらガキじゃないか?」
最初はカンカンに怒った顔をして怒鳴っていた親玉だが、ザックスたちを見て不思議そうな顔をした。当の2人は一体何の話をしているのかわからなかった。
「おかしいのう、情報のやつと違うではないか?確かメイド服を着た獣人という話だったはずなのだが………おいガキども、お前らはメイドどもの仲間か?」
「っは?メイド?何言ってんだおっさん」
「おっさんだと!?このクソガキぃ………まあいい、エルフも売ればそれなりに稼げるからな。おい、出番だぞ!」
親玉は指を鳴らすと部屋の右手にあった扉が開き、ズシン、ズシンと2mもある大男が現れた。
「っへ!なんだよ旦那~、メイドじゃなくてガキが相手か?」
「ぶひゅっひゅっひゅっひゅ、そうだ。残念だがまだ奴らは来てはいないが先にこのガキどもが来たんでな。やれぇ!」
「っち、まあいい。多少はできるみてーだからな、準備運動にはちょうどいいか」
「ぶひゅっひゅっひゅっひゅ、殺すなよ?大事な商品と一緒にこいつらも入れてやるからな」
大男は指をポキポキと鳴らしながらザックスたちの前に立った。
「わりぃな、そういうことらしいんで多少怪我してもらうから覚悟しな!」
「っへ、御託はいい、かかってこい!」
「ふん………じゃあ、くらえやオラァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
大男はザックスに向かって丸太のような腕で拳を突き出したが、ザックスはそれを難なく避けた。大男は避けられた後も連続でパンチを繰り出した。だがザックスは時に受け流しながらその攻撃を回避していく。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………クソっ、ちょろちょろ逃げやがって………」
「どうしたおっさん?そんな攻撃じゃトロすぎてあたんねーぜ!」
「っち、このクソガキがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ザックスの言葉にキレた大男は渾身の一撃を放った。ザックスは横に回避しその腕を掴んだ。そのまま体を大男の反対側に向き、「よっこいせ!」と掛け声と共に大男を投げ飛ばした。
この技はゼロスから教えてもらった『ジュウドウ』の『イッポンセオイナゲ』という投げ技の1つ。なぜこの技を教えたかというと、この世界は投げ技自体が少なく、せいぜい自分より大きな巨体を力任せに投げるといったものしかない。
そのため投げられた大男は受身も取れずに頭から地面に叩き込まれた。少しの停滞の後、その巨体はゆっくりと地面に倒れた。
ちなみにこの技を教えた時、ゼロス自身も知り合いに教えてもらった技らしいなので説明はザックリしていてほとんど感覚のような説明だったが、意外とザックスも感覚派だったため他の3人よりも早く習得していた。
「う、嘘だろ………」「ば、馬鹿な………あの『狂拳』がやられるなんて………」「あ、ありえねぇ………何者なんだこのガキどもは………」
突然のことに驚きザックスたちを除いた豚男とその部下たちの口は開いたままになった。すると「ぶひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」という鳴き声がしたと思うと親玉は顔中色んな液体をまき散らしながら大男が出てきた扉の方へ走っていった。
「あ、待てよおっさん!」
「おっと、ここから先は通さないぜぇ!」
ザックスたちは追いかけようとするが、我に帰った部下たちが2人の足止めをした。そのあとゾロゾロと部下たちが部屋に入ってきた。
「へへへ、いくら『狂拳』を倒せるからってこれだけの数を相手にできまい!」
「っち、しょうがねーな。行くぜフレデリカ!」
「ちょっと、デカ物と戦ったんだから少しは私に分けなさいよ!」
その後数分もしないうちにその場にいた部下たちは全員倒された。最後に1人が「あ、ありえねぇ………」と呟いた。
ザックスたちはその後親玉を追いかけた。道中いろいろ漏れ出た液体が落ちていたので、それを避けながら進んだ。この建物には裏口があり、そちらに逃げたと思っていたがどうやら液体はゼロスが向かった地下へと続いていた。
そのまま地下へ降りていき、そのまま通路を進んでいくと蹴破られたドアがあり、その先にちょうどゼロスが地面を蹴り親玉のところへ駆け寄りその顔を叩きつけ、一緒に転移していたところだった。
「おいおい、マジかよ?あいつらどっか行っちまったぞ!」
「わかってるわよ、さっさとあたしたちも追いかけましょう!」
ザックスたちはそのままその部屋に入り、魔法陣のもとへ向かった。ザックスがバンバンと魔法陣を叩いてみたがだが壊れており、起動することはなかった。どうやら転移したら自動的に壊れる仕組みになっていたみたいだった。決してゼロスが壊したわけではない。
「っち、いけると思ったが全然ダメだったか!」
「当たり前でしょ!どうする?あたしはここの連中縛り上げて引き上げたほうがいいと思っているのだけれど?」
「………そうだな。まあ、ゼロスが行ったから多分大乗だろうしそうすっか」
2人は謎の納得をしてここにいる倒した部下たちを縛った後、警備隊に引き渡したあと怒られながらもシエル立ちがいる場所へと戻った。戻ったあとも先生方や生徒会会長に説教された。ついでに風紀委員会長には注意だけされて慰めてくれた。
説教されているときにザックスは戻ってきた2人は今自分が受けている説教がものすごく長くなりそうであると思った。
だが説教は警報の鐘が鳴ったことで中断された。先生方も何事だとなり生徒たちに「今確認してきますのでここでおとなしくしていなさい」と告げてから外へと走っていった。
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場面は変わって街の見張り台。2人の兵士は今日も平和な1日になると思っていた。
「ふぁ~今日も特に異常はないみたいだな」
「だな、でも明日は祭り当日だし忙しくなるぜ」
「おいおい、それを言うんじゃねーよ。もう今から疲れて来るじゃないか」
そんな2人に突然鳴り響いた警報の鐘が聞こえた。どうやら海側の方から聞こえてきたらしく、海の方を見るとそこには巨大な触手の化物が出現していた。
「おい、おいおいおい、マジかよ!?」
「マズイな、このままだと予言だとあと黒いドラゴンが出るらしいから急いで住民の避難をしないと!」
すぐさま住民の避難をしようとして2人が駆け出そうとした時、もう1人が海とは反対の方へ見てもう足を止めた。
「おい!どうしたんだ?」
「………嘘だろ………何だありゃあ………こんなの予言には描かれてなかったぞ………」
その2人の視線の先は草原一面に広がる大量の魔物の群れだった。2人は呆気にとられていたが、他の見張り台の方から鐘を鳴らす音で気がついた。
「っく、くそ!どうすればいいんだ!海と陸から同時に攻められたら対処しきれないぞ!」
「と、とにかく早く門を閉めて守りを固めるんだ!そうすれば海側の連中がなんとかしてくれるに違いねぇ!」
「あ、ああ、そうだな。それじゃあ急がねぇと!」
2人は守りを固めるため門を閉めようと階段を降りようとした時、頭上に2つの黒い影が門の外へと通り過ぎた。一体何が通ったんだと2人はその影を追いかけその先を覗くと、大きなハンマーを持ったメイド服を着た背の小さい獣人の少女と槍を持った執事服を着た獣人の少女の2人が門の外に着地していた。
「お、おい君たち!そこは危険だ、早く逃げなさい!」
そう少女たちに声をかけている隣でもう1人は少し違和感を感じていた。
「な、なあ………」
「ああん?なんだよ、どうしたんだ?」
「気のせいじゃなければ、今さっき俺たちの頭上を通って地面に着地しなかったか?」
「……………っは?何を言って………おいおい、まさかこの高さの壁を飛び越えたっていうのか!?」
そう、この街の外壁の高さは10mくらいはあるのだ。とてもではないが人が飛び越えるには無理がある高さである。だが、目の間の少女たちは自分たちの頭上を飛び越えて、あまつさえ何ともないように地面に着地したのだ。
当の少女たちはそのまま武器を手に持ち魔物の群れに向かって歩いて行っていた。男たちは戻るように呼びかけていたが、少女たちは聞いてはいないようだった。助けに行こうにも門は既に閉まっており、外に出ることができなくなってしまっていた。兵士たちはもう見てるだけしかできなくなってしまっていた。
そして、少女たちは魔物の群れの目の前まで来てしまっていた。そのうちの先頭にいた魔物が少女たちへと襲い掛かっていった。
もうだめだと諦めた、その時目の前でありえないことが起きた。ハンマーを持った少女がそのハンマーを振り上げると赤い稲妻が走り、思い切り振り下ろした。それを食らった魔物は無残にも潰され、その際に発生した衝撃波で数十体を吹き飛ばした。また、槍を持った少女が目にも止まらぬ速さで突き刺し、目の前の魔物たちを穴だらけにした。
それを見た兵士たちは唖然とした。「あの少女たちは一体何者なのだ?」と。
魔物たちも目の前の仲間がやられたことに激怒し、少女たちへと駆け抜けだした。このことで謎の少女たちの戦闘が開始されたのであった。
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次の更新はリアル事情で少し書く時間が取れなくて更新が送れます。元々不定期更新ですが早めに出したいという気持ちです。