―黒幕戦1―
戦闘描写をうまく書ける人ってすごいセンスだと思うんですよね・・・
ギルラムはゼロスたちから距離を取り指を鳴らした。すると地面にいくつかの魔法陣が現れ、そこから子供サイズの全身が緑色の肌の人型の魔物『ゴブリン』を20体近く現れた。その両手には槍や盾と剣など、様々な武器を持っていた。
「ふふふふふ、これだけの数を相手するのは大変ですよ?さあ、お前たちやっておしまいなさい!」
「「「「「グギャアアアアアア!」」」」」
ギルラムが合図をすると20体近くのゴブリンたちは一斉にアイリスとゼロスに襲いかかった。ゴブリンは1体ずつは弱いが、集団戦においては普通の冒険者でも苦笑いになるほど相手はしたくない存在である。ましては1人で複数人を相手するのはかなり厳しい戦いになる。
「ふむ………なあ、こいつら全部貰っていいか?」
「ええ、どうぞ。私は後ろで待ってるから早く片付けなさいよ」
だが、そんなことなど関係ないようにゼロスが右手に掴んでいた親玉を横にぶん投げてゴブリンの集団に高速で突っ込んだ。ゴブリンたちはバカが突っ込んできたと思ったが、それ一瞬で違うものへと変わった。まずゼロスが先頭にいたゴブリンたちが突き出した槍を飛んで避け、避けた先にいたゴブリンの頭を踏んで鉄の剣を持っているゴブリンの目の前に接近した。まるで一瞬のように目の前で現れたことでそのゴブリンは目が点になった。
「グ、グギャ――――」
「よう、それ借りるぞ?」
そうゼロスがゴブリンに声をかけると、一瞬で手首をねじ切った。そして宙に浮いた鉄の剣を取ってそのまま振り下ろすようにそのゴブリンの頭に振り下ろして体を半分に叩き斬った。
「………まずはひとーつ!」
武器を手に入れたゼロスはニヤッと笑いそのまま後ろに横薙ぎをし、近くにいたゴブリン2体の首を斬り裂いた。ゴブリンたちは一瞬で仲間が3体死んだことに開いた口が塞がらず、目の前の子供に恐怖した。
「みーっつ!」
「グギャ!?ギャギャギャ――――」
ゴブリンたちは慌てているが、その間にもゼロスはまた1体、また1体と彼らの首を撥ねていく。それをギルラムもその光景を見て殲滅が終わるまで空いていた。なお殲滅に10分もかからなかった。
「ふ、ふふふふふ。な、なかなかやりますねぇ。でしたらこれでどうです!」
ギルラムはあご髭を撫でたあと指を鳴らした。すると大きめの先程と同じ魔法陣が現れた。そこから頭に2本の角に腕が4本生え、その両手には巨大な棍棒を持っている2mもある巨体を持つ大男が現れた。
「ふふふふふ、こいつは私がオーガをベースに改造した最高傑作『フォーオブアーム・オーガ』です!さあ、行きなさい!」
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
フォーオブアーム・オーガは咆哮を上げながらゼロスに向かって突進し手に持っている棍棒を振り下ろした。ゼロスはその攻撃を難なく横に避けた。フォーオブアーム・オーガは攻撃を避けられたことに怒り、暴れるように4本の棍棒を振り回し始めた。ゼロスはその攻撃も難なく避けていく。
「へぇ、こいつは少し厄介そうだな………しかも、硬いな!」
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
ゼロスは攻撃を避けながらも1本の腕に斬りかかった。だが、斬りつけた剣はパキンという音を立てて真っ二つに折れてしまった。
「ふふふふふ、どうやら武器を失ってしまったようですね。そいつは刃をも通さない強靭な肉体を持ち、どんな壁も粉々に粉砕できるほどの怪力を持っているのですよ。さあ、どうしますかな?ふふふふふ!」
どうやら武器を失って一気に不利になって調子に乗っているようだが、さてどうしようかな?
「………ねえゼロス、ちょっと交代しない~?そろそろ暇になってきたわ」
「はぁ?っち、これからがいいところだったのに」
どうやらアイリスの方も暇になったみたいだから交代することにした。俺は攻撃を回避しながら大きくバックステップして後ろにいるアイリスにタッチして交代した。
「おやおや、今度はお嬢さんですか?確かに物理攻撃が駄目なら魔法が有効と判断するでしょう。ですが残念!『フォーオブアーム・オーガ』は魔法耐性も完璧です!お嬢さんは見た様子では魔法が得意と伺いますが、この!『フォーオブアーム・オーガ』は上位魔法でもビクともしない魔法耐性!どうです、素晴らしいと思いませんか?最高とは思いませんか?まだ量産するにはコストもかかり時間がかかってしまいますが、この作戦で私の『フォーオブアーム・オーガ』が評価されれば世界を私の『フォーオブアーム・オーガ』が―――!」
「話が長い」
ギルラムが興奮しながらフォーオブアーム・オーガについて解説しているとアイリスが手のひらから無数の風の刃を放ち、フォーオブアーム・オーガの体を細切れにした。ついでに火の魔法でその肉塊を焼き払った。
「…………………は?え、え?」
「ふう、あと名前も長すぎ、名前もそのまんまでつまらないわ」
「ええええええええええええええええええええええ!?」
ギルラムは肉塊になったそれとアイリスの顔を交互に見て最後に叫んだ
「ば、馬鹿な………いくら上位以上ならダメージは入るとは言えこんな簡単に肉塊に変えることが出来るなんて………まさか、最上位魔法を使えるとは予想できませんよ………しかも無詠唱なんて………まるで化物ですね」
あら、失礼なやつね。確かに転生前も散々『化物』だの『悪魔』だの言われたけど、女の子にそれはないんじゃないかしら?でもまあ、さっき使ったの1番この世界で最初に覚えた初級魔法『ウインドカッター』なんだけど………
「ふ、ふふふふふ、なかなかやりますねぇ。ですがお遊びはここまでです!少し早いですが、その子供たちを生贄に魔獣を召喚させていただきますよ!」
ギルラムは子供たちに手を向けて魔法を発動させる。すると檻の中の地面から魔法陣が浮かび上がった。中にいる子供たちはそれに驚き小さな悲鳴を上げた。
「ふふふふふ、その魔法陣は発動するとそこからその者の魔力や魂を奪い魔獣を召喚します。言っておきますが檻を破壊しようとしても無駄ですよ?その檻はS級の魔物でも完全に破壊することができない特別製の檻になっております。ふふふふふ、どうですか?手も足も出ないでしょう?ふふふふふ………ふ?」
ギルラムが子供たちを見ながら得意げに解説してたが、ゼロスたちがあまりにも静かすぎると思いそちらを見ていると2人は暇そうにこちらを見ていた。
(な、なぜだ?今まさに複数の命が消えようとしているというのになぜ動きもしないのですか!?しかも私の話にまるで興味がない、そもそもこの2人は本当に子供なのですか?10歳くらいの子供にしては落ち着きすぎている。一体何ものなのですか?)
疑問が飛び交う中、また子供たちに視線を向けると魔法陣は光ったままだが、子供たちには特に何も起きないようだった。するとアイリスは笑いを堪えきれずにクスッと笑ってしまった。ゼロスも釣られて大笑いしていた
「な、何がおかしいのですか?ま、まさか………」
「うふふ、ええそのとおり。あなたがゼロスと遊んでいた間にもう壊しておいたわよ。ちなみに光っているのはただの演出よ」
「な、なんですって!?そんな………あ、ありえない………」
ギルラムは恐怖した、目の前にいる2人のエルフの子供を………いや、そもそも本当に子供なのか?本当にエルフなのか?
「さて、他には何かないのかしら?もったいぶらずに全部出しなさいよ」
「っく、いいでしょう、こうなれば………奥の手です!」
ギルラムは右手を上にかがげ、指を鳴らし魔法を発動させた。すると先ほどゼロスが掴んでいて、邪魔だったので壁の端っこの方に放り投げておいていた親玉が突然苦しみだした。
「ぐ、ぐるじい………だ、だずげで………!」
「ふふふふふ、こんなこともあろうかと保険としてそこにいる彼らに仕掛けておいたのですよ。さあ、現れなさい!」
ギルラムがそう叫ぶとズシンという音が聞こえ、船全体が揺れた。窓の外を見ると巨大な触手が生えた赤色の肌をした化物が見えた。その触手はゼロスたちがいるこの船を絡め始めているようだ。ゼロスたちはそれを見て驚愕していた。
「「あ、あれは!」」
「ふふふふふ、どうです?恐ろしいでしょう?あの大型船をも容易く締め上げることができる巨大な8本の触手、見たものを恐怖に陥れる凶悪な瞳、すべてを飲み込みどんな物でも噛み砕ける口。そう、これの名は!」
「「タコじゃないの(じゃねーか)!」」
ゼロスたちのセリフでギルラムはその場でズッコケた。そう、1番近いイメージとしてイラスト風に描かれたタコみたいな見た目をしていた。
「ち、違います!こいつはクラーケン!決してタコなのではありません、れっきとしたイカの魔獣です!」
「ダゴー!」
「いや、今コイツ『タコ』って言ったぞ」
「そんなことは………………ん?」
「ダゴー!」
ギルラムは再びそのクラーケン(?)を見た。ギルラムはそれを見て「あっ!」っとなった。
「しまった、彼らに仕掛けていたのはクラーケンの召喚ではなくデビルオクトパスの召喚を仕掛けていたのでした!本当はその2体で街を滅ぼす予定だったのですが………仕方がありませんね、これで何とかしましょう」
ギルラムは「こほん」と咳払いしたあとゼロスたちの方へ振り向いた。
「では無事に召喚できたことですので私は他にも行くところがございますので離れさせていただきます。それではごきげんよう!」
そう言うと手から火の玉を出して壁を破壊し、背中からコウモリのような羽を出し、外へと飛んで逃げていった。それと同時に船のあちこちから虫の形をした魔物も出て行くのが見えた。
「逃げたわね、まあいいわ。まだまだ暴れ足りないし、とっととこのタコぶっ飛ばしてあいつの悪巧みごとぶっ飛ばして明日の祭りを無事始められるようにしなきゃね!」
「そうだな、それにこのタコ焼いたら美味しいかも知れないしな!」
「ダ、ダゴー」
ゼロスの発言と獲物を見るような目にデビルオクトパスは一瞬体を震わせたあと大きく咆哮した。
一方街では突然海の上に咆哮と共に現れた化物に彼らは予言の事が起ころうとしていると。その中で1人のメイドがその海の方を見つめ口角を上げてこう呟いた。
「やっと、見つけましたよ。破王様」
よろしければコメント・評価の方もお願いします。また、誤字脱字がございましたらご報告お願いします。