―黒幕登場―
お待たせしました!更新ですよ更新!
―アイリスside―
「―――――ぐぎゃぁぁぁぁぁ!」
「ひぃぃぃぃぃぃ!ぁ―――――」
「………ふう、これで3つかしらね」
アイリスはゼロスにマップの情報を送ってから少しずつ南下して今ちょうど3つ目を潰したところである。何故そのくらいの数しか潰せていないかというと、いくつか向かったところが家具もろとも焼き尽くされた状態だったり、壁に埋まって殲滅されている状態になっているところが多いからである。
ふむ、これは私やゼロスたち以外の何者かが潰している可能性があるわね。これじゃあ獲物が少なくなってしまうわ。急いで片付けて次のところへと行かないとね
そんな彼女のいる部屋はいたるところに男たちの血や肉片と思われるものがいたるところに付着していた。部屋のいたるところには死体が転がっており、中には頭部がまるでトマトを握り潰したようになっている者や体が鋭い刃物でバラバラに切り裂かれた者などがいた。
そしてその死体をむしゃむしゃと美味しそうに食べている黒い狼や蜜のようにちゅーちゅーと血だまりを吸う蝶がいた。
そんな場所に立っている彼女の服には返り血はなく、男たちが身につけていたと思われる武器や防具などが宙に浮かび、片っ端から彼女が出したアイテムボックスに入っていった。
「ガウガウ!」
「よし、片付いたわね。それじゃあ次に向かいますか」
アイリスは片付けが住むと次の獲物を求めてその扉を開けた。後に警備隊がその建物に入ったときには彼女が訪れた建物には壊れた家具以外何も残っていないのだった。
そんな彼女はしばらく南下して行き、複数の船などがある港についた。いくつかの船が停まっており、今の時間は積荷を移動させている人たちでそれなりに多い。アイリスはその中でかなりの大きさの船を見つけていた。
あれが奴らが逃げるための船ね。かなり大きいけど中にはどれほどの物が積まれているのかしらね………ん?
人が近づいてくる気配を感じアイリスは近くの木箱の陰に隠れた。するとその船から数人の格好は普通のエルフの男たちが降りてきた。どうやらこの港で働いている積荷を運んだりしてくれる人たちのようだ。
「おーい、この船もうそろそろ出発だから終わったか?」
「ああ、あとサインもらうだけで終わるから先に他の所に行ってくれ」
「はいよ、じゃあ先に失礼するぜ~」
そうして喋りながら男たちが通り過ぎたのを確認したアイリスは魔法を唱え、1人残った男の影に潜んだ。男はそのまま船の上に乗り人が良さそうなエルフの男に近づいた。
「それじゃあここにサインお願いしますね」
「はい~かしこまりました~」
「しっかし、この時間から船を出すなんてかなりお急ぎみたいですね?」
「そうなんですよ~私の主はかなりせっかちで『早くしろ』ってうるさいんですよ~」
そうやって世間話をしている間にアイリスは男の影から離れ、そのまま船の中に忍び込んだ。
さてさて、無事侵入できたみたいだし船内を探索しようかしら?まずはこの部屋からね。
そう思いアイリスは一番近い部屋の扉の前に立った。中にはいくつかの生命反応があり、全部が敵性反応を出していた。アイリスはその扉の下から影を忍ばせ中で召喚獣を召喚した。
中で『キシャァァァァァァァ!』という鳴き声が聞こえたあと静かになった。扉を開けると人の形をした虫の魔物が数十匹倒れていた。
なぜ魔物がこの船に乗っているのかしら?なんだかきな臭くなってきたわね………
疑問に思いながらもアイリスはその部屋から出て船内の探索を開始した。途中からガコンという音が聞こえたので外を覗くと船が港から出港したところだった。だが、アイリスは気にせずそのまま探索を再開した。
ちなみにその虫の魔物は全部蜘蛛が美味しく食べました。狼の方は同じ雑食でも虫は嫌みたい。
いくつの部屋を探索してたまに最初に入った部屋と同じく人の形をした虫の魔物がいる部屋を見つけたりした。そんな中とある部屋に着くと中には数人の生命反応があり、どれも敵性反応はなかった。中に入ってみると多くの荷物があり、奥には檻に入ったエルフや獣人の子供たちがいた。
アイリスはその檻に近づくと子供たちは檻の奥へと下がってしまった。だが、その中で1人だけ部屋に入ってからずっとこっちを見ていた女の子がいた。その女の子はメイド服を着ており、アホ毛が2本ぴょこんと生えている金髪ツインテールで翡翠のような綺麗な瞳をしていた。するとメイドの女の子はおもむろに口を開いた。
「………おねーしゃんはハオーしゃまなの?」
「………はい?」
ハオーシャマ?もしかして覇王様って言いたかったのかしら?そんなやつがこの世界にいるのかしら?まさか私じゃないよね?
「えっと、ごめんね。私は覇王様じゃないわ。私の名前はアイリスっていうの。あなたのお名前は?」
「うにゅ?ハオーしゃまじゃないの?あたしはアウラですの!よろしくおねがいしますの!」
「………かわいい、お持ち帰りしたい(ボソッ)」
なんだろう、この子すっごいかわいい!しかもこの子小さいのにメイド服を着ているなんて………グッジョブよ見知らぬ覇王さん!この子の保護者に会ったら無理矢理にでも引き取っちゃおうかしら?
「ごほん、アウラちゃんっていうのね、よろしくね。いくつか質問したいのだけれどもいいかしら?」
「んにゅ?いいですよ!おねーしゃんはいいひとっぽいからなんでもこたえるの!」
あ、危ないわこの子!しっかり教育しておかないと知らない人に付いていってしまいそうだわ!
「そう、ありがとうね。じゃあ最初の質問なんだけど、どうしてこんなところに捕まっているのかしら?」
「はいです!えっとね、おさんぽしてたらへんなおじさんたちにつかまったの。あたしだけでもにげれたんだけどほかのこたちがいたからあえてつかまってあげたの」
へ~そうなのね。強い子みたいだったからなんで捕まっているのか気になっていたけどそういうことね。
「ふーん、そうなのね。じゃあ次の質問なんだけど、アウラちゃんが言っていた覇王様ってどんな人なのかな?あとどうして私だと思ったのかしら?」
「うんとねー、とってもつよくてかっこいいーかたってエリねえがいってた!あとあたいたちはそのハオーしゃまをさがしてたびしているの。おねーしゃんはなんとなくそうだとおもっただけなの」
……………ふ、ふーんそうなのね。え?やっぱ私じゃないこれ?覇王じゃなくて破王じゃないかしら?私のこと知ってる人って今はあっちの世界にいるはずなんだけど…………まさかね?
「へ、へー、そんな人がいるんだね。ありがとう、いろいろわかったわ。とりあえずここから出よっか?危ないから少し離れてね」
「はーい、わかったー!」
アウラが檻から離れたのを確認したアイリスは檻を目掛けて風魔法で開けようとすると後ろから違和感を感じたので一度中断した。
「………誰かしら、レディの背後を取るなんて感心しないわよ?」
「おやおや、気づかれてしまいましたか。わたくしが最も得意とする透明化の魔法を見破るとは、お見事でございますね」
アイリスは後ろを振り向くと何もない空間からフードをかぶり、仮面をつけた見た目が人間の男が現れた。だが私にはそれが隠蔽されている姿であるのはわかっている。
「あなたは何者かしら?とりあえず人間じゃないっていうのはわかるわ」
「………ほぉう、まさか隠蔽魔法も見破るとは………子供にしてはいささか優秀すぎですね。お嬢さんこそ何者なのですか?」
仮面越しで顔は見えないが男は驚いた顔をしているのだろう。一瞬だけだが体が強ばったのが見えた。
「ふふふふふ、いいでしょう、バレてしまったは仕方がありません。特別に教えてあげましょう!」
男は仮面とフードをつかみバッとそれを取り外した。そこには肌は褐色で頭に2本の角と背中にコウモリのような翼と尻尾を生やした男がいた。
「わたくしは上級悪魔のギルラムと申しまして、我が主マモン様『一番』の忠実なる下僕でございます!どうぞ、お見知りおきを」
「ふーん、上級悪魔………ねぇ」
こいつが上級かぁ………こっちの世界のは初めて見たけど………なんかすっごく弱そう。
「おや?あまり驚かれないのですね。私の階級を聞くと大抵はガタガタと震えるですがねぇ」
「あぁ………まあ、あなたより強い子知っているせいじゃないかしら?こっちではあなたが初めてだけど」
(わたくしより強い?こっちでは初めて?一体何を言っているのでしょう?)
「まあいいでしょう。それはともかく、であってそうそうですが、我が主の大事な計画のためにお嬢さんにもそこにいる方々と共に生贄になってもらいますよ」
「生贄?それで何か呼び出す気なのかしら?」
「おやおや、随分冴えるのですね。そのとーり!この船に乗っている者たちを生贄にし、強力な魔獣を召喚し、あの街の住人の命をすべて我が主の計画の為に捧げるのです!」
な、なんですって!こんな可愛い子たちを生贄にですって!
「そんなことは許さないわよ!この子たちには指一本触れさせはしないわ!」
「ふっふっふ、お嬢さんお一人で何ができるのですかな?」
うわ~ムカつくわ~………ってこの気配は………
アイリスはギルラムの後ろにある扉の方からいつもの気配を感じ、扉の車線上からずれるように右に移動した。すると扉の奥からドドドドドドドドドドと何かが走ってきた。
「――――――ゥゥゥゥゥゥゥゥエントリィィィィィィィィィ!!」
「っへ?ぷげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
扉を粉砕してそのまま車線上にいたギルラムの腹にゼロスのドロップキックが直撃した。彼はその場で宙返りをして着地し、ギルラムはそのまま奥の檻に向かって吹っ飛んで衝突した。幸い中にいた子たちはいつの間にかアウラが檻の端っこ移動させていたので被害はない。
「おっすアイリス。今どんな状況?」
「ええ、あの悪魔が黒幕でこの子使って魔獣を呼ぼうとしていたから止めようとしていたところかしら?」
そう言いながらギルラムの方に指を向けた。ゼロスはそいつを見てすぐ納得したようだ。
すると吹っ飛ばされたギルラムは立ち上がり顔を真っ赤にしながら怒りを現わにしていた。
「ふ、ふふふふふ。よくもやってくれましたね………もう容赦しませんよ!」
容赦しないのはこっちのセリフよ。そんなふざけた計画ぶっ潰してやるわ!
「「遊んでやるからかかってこい!」」
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※12部の文章で『人間どもが』を『人が』に変えました。