―ドラゴンでメイドです 後編―
後編です
兵士たちとの戦闘が終了したエリーゼは、改めて周りを確認した。山の半分はなくなり、射線上にあった他の山の天辺もついでに吹き飛んでいた。
その後彼女たちは村へと行った。着く頃には雨が降り始めており、村の家の日は沈下されていた。
そんな彼女たちの目の間に広がるのは村人たちの死体だけだった。どうやらリルたち以外は皆死んでしまったようだ。そしてその中にはアウラの親テンペル夫妻やエクレアを逃がすために残ったアドルフもいた。
彼女たちは耐え切れず、その場で泣き崩れた。ロミオは悔しそうに声を殺しながら泣き、エリーゼは眉を潜めならがその光景を見ていた。
彼女たちが泣き続けてしばらくした後、空は晴れ、彼女たちは村人たち全員分の墓を作り、花を添えていた。
ちなみに道具は全て燃えてしまっており、素手で掘るのは厳しいと思っていたがエリーゼがアイテムボックスから4つの棒『シャベル』を取り出した。それをそれぞれに手渡したあと彼女は掘削機のようなすごい速さで穴を次々に掘っていった。村人全員分埋めたあと墓石の代わりを探した。そんなに彼女はどこからか拾ってきた(?)直径約35メートルの岩を片手に持って歩いてきた。
……いや、ありえないからね?どんだけ馬鹿力んだよ!拾ってきたっていう大きさじゃないからね!と言ってロミオはつっこんだ。
墓に花を添え終わったリルたちは彼女の方を向いた。
「……あの、メイドのお姉さんたちはこれからどうするんですか?」
「そうですね………とりあえず目標としては破王様に会うことですね」
そう答えるとリルは少し考えてから答えた。
「……あの!もしよかったら俺……私たちも一緒に連れて行ってもらえないでしょうか!力仕事が必要でしたら任せてください!こう見えても畑仕事を手伝ってそれなりに力と体力はあります!」
「はい、いいですよ?」
リルはおずおずと答えたが、エリーゼは速攻で答えた。彼女はすぐ答えが返ってきたことにびっくりしていた。
「えっと、いいんですか?俺……私は力仕事ぐらいしかできないですよ?」
リルはキョトンとした顔をした。それを見たエリーゼはふふふと笑った。
「大丈夫ですよ、元からあなた達を連れていく予定でしたので。それにあなた達は立派なメイドになるんですから。」
「………?ありがとうございます?俺……私は狼族のリル・フロスト、この子はたぶん鷲族のアウラ・テンペル。そしてこちらが猫族の……」
「はーい、エクレア・シャンシャーです!よろしくおねがいします、メイドのおねえさん!」
「ふふふ、よろしくねリルちゃんにアウラちゃんにエクレアちゃん」
エクレアは笑顔で答え、エリーゼに抱きついた。ロミオは「恐れを知らない子だな……」とつぶやいていた。
「あの、ところでお姉さんたちの名前はなんていうのでしょうか?」
「私ですか?」
彼女はエクレアから離れ咳払いをした後クルンと回っり、少女たちの方を向く。
「私の名前はエリーゼ・バハムート。敬愛する我が主、破王テロス・ディアヴォロス様の忠実なドラゴンでメイドです!」
そう彼女はこの世界に転生したゼロスたちに仕えていたメイドの1人であると共に。かつて神々が存在する世界で生まれ、神以上の力を持っている。終焉をもたらし幾千もの世界を滅ぼした破壊神であり、究極にして唯一無二の存在ある世界最強の破壊竜『バハムート』本人である。
だが、今彼らには彼女がそんな存在であることを知る由もないのであった。そのうち知る事になるとは思うが………
「あ、ついでにこの人は商人見習いのロミオくん。そのうち立派な商人になるためにビシバシ鍛えていくから」
「え、そうなんですか!?てか、僕はなんでついでなんですか!」
「あら、嫌なんですか?」
彼は食ってかかたが一瞬すごい目で見られたのとプレッシャーを感じてものすごいスピードで目を逸らした。
「いや!………そんなことは………ないです………はい」
「そうですか?では、早速出発しましょうか!」
「「おー!」」「お、おー……」
そして彼女たちは出発した。この世界にいる破王を探す旅へと…………
だが、彼女がリルたちを連れて行くのは彼女たちの故郷がなくなったことに対する慈悲の他にもう1つ理由があった。それは今の彼女たちにはわからないが、後に気づくことになるだろう珍しいスキルを持っているからだと…………
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拝啓父上、あなたの息子のロミオです。あの村のできごとから2年が経ちました。現在エリーゼさんと僕とアウラちゃんはとある城が絶賛炎上している中、まだ火の手が届いていない廊下を歩いています。アウラちゃんはエリーゼさんと手を繋いで一緒に歩いていた。僕や彼女たちはあれから少し成長しました。
「いや~今回もあの子達はすごいですね~」
「そうね~、でもまだまだ成長するわよあの子達」
「うわ~マジですか……僕はあんまり伸びがよくないのですが、やっぱ獣人族は成長するのが早いですね~」
そういいながら窓の外を見るとメイド服を着た赤毛の猫耳少女が自分の背丈より大きいハンマーを振りかぶった。あれはエクレアさんですね。
「うにゃあー!吹っ飛べなのー!!」
『うわあああああああああああああああああああ!!』
あ、兵士ごと城にある塔が1本折れました。すごいですよね~今持ってるあのハンマー400キロもするんですけど、軽々と振り回してますね。
最初適正ある属性が稀有な雷属性だったのでスピードタイプの子だと思っていたのですが実は土属性にも適性があったのでパワータイプでもあったなんて、エリーゼさんじゃなきゃわからなかっただろうな……
レベルだけでもちょっと強めのドラゴンとタイマンはれるくらい強くなっている。
まあ、獣人は早熟する種族であるとは言われてはいるが普通の7歳児はあんな強くはなれない。これも教育のたわものなのだろう。あと、一般常識は僕が教えました。だって、僕以外この世界について知っている人いないんで。
「「くそぉぉぉぉぉぉぉ死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」
そんなこと考えてたらここの兵士2人が目の前の横の扉と通り過ぎた横の扉から出てきて斬りかかってきた。しょうがないので僕は後ろの兵士に拘束魔法を無詠唱で唱えた。兵士は出てきた鎖に体を絡め取られ動けなくなり、その場でミノムシ状態で倒れ込んだ。
あ、居たところが悪かったのだろう。倒れたあと崩れた瓦礫の下敷きになった。運が悪かったんだね、安らかに成仏してくれ、ナムー
「うにゅ?『とんでけー』!!」
「は?ぎゃあああああああああああああああああああ!!」
そう呑気になことを言いながらアウラちゃんは口から巨大な炎を吐いた。前にいた兵士はその炎に包まれて灰へとなって消えてしまった。ついでに射線上のモノも全て焼き尽くされた。
「アウラちゃん、そこは『飛んでけー』じゃなくて『燃え尽きろー』ですよ。それを使うのは咆哮か風魔法の時ですよ?」
「そうなの?わかったー!」
「いやいや、何さらっと変なこと教えてんですか!」
そうやりながら再び歩いているとヒヤッと冷気を感じた。どうやら先に行ったリルちゃんですね。しばらく進むと扉の隙間から冷気が漏れている部屋に着いた。扉を開けると部屋中が氷漬けされていて、王座に座っている首以外氷漬けされた男とその男の前に立っていた執事服を着た少女リルちゃんである。
「あ!お待ちしておりましたよ皆さん」
リルちゃんは左手を胸においてお辞儀した。いや~女の子だけど様になりますね~
「守備はどうですか?」
「はい、城に捕らえられていた皆様は先ほど分身の1人が発見して退避完了しました」
「おい、きさまら!私にこんなことをしてただで済むと思うなよ!この俺を誰だと思ってやがる!」
エリーゼさんがリルさんの報告を聞いていると後ろでいる男が喚いている。
「……はぁ、ロミオさん、あのうるさいのを黙らせてください」
「あ、はいはい分かりました。『サイレントドーム』」
「おい、聞いて――――――――!」
そういい男の顔あたりに音を遮断する魔法を唱えた。男はまだ喚き散らしているがこっちからは口をパクパクしながら何も聞こえてこない。エリーゼさんたちは静かになったので報告の続きを始めた。
改めて自分のステータスを見たらとんでもないことになってたのでそっと目を閉じた。ああ、あの地獄の日々が嘘のようだ。何度死にかけた事か……今生きてるのが奇跡のようです。
地獄の日々を思い出して若干落ち込んでいると、僕を元気づけるように頭を撫でてくれる獣魔であるスライムのプヨヨ。はぁ~癒される~。ちなみにプヨヨは初めて僕がテイムした子で丹念に育てたみんなのマスコットだ。
そろそろ報告が終わって仕上げに入るようだ。
「……わかりました、では始めますか。ロメオさんもういいですよ」
「はいはい、分かりました。今から怖いこと始まるからアウラちゃんはこっち来ようね~」
「はーい、わかったー!」
トテトテと僕の方へ着たアウラちゃんと一緒に部屋の外に出た。そしてこの部屋にだけ先ほど男にかけたサイレントドームをかけた。
「……行きましたね。いいですよもう我慢しなくても」
「――――ふざけやがって、ぶっ殺してやる全員なぶり殺しだ!おい、誰か!早く俺を助けゲピャ!!」
まだ喚き散らしていた男の顔をリルは掴んだ。男はまた喚こうとしたが彼女の目を見て顔を青くしながら「ひぃ!?」と情けない悲鳴を上げる。
彼女目は殺気に満ちていた。どうやらかなり激怒しており、徐々に握る力を強くしていく。
「わ、悪かった、俺が悪かった!かね、金をやる!いくら欲しいんだ?それとも――――」
男は自分の命の危機に命乞いを始め、言葉の続きを言おうとしたが、リルの握る力はさらに力を入れてそれを遮った。そして、チリチリと体のあちこちから黒い炎がではじめる。そして男からジュウという音を立てながら掴まれている顔から煙が出ていた。
「…………そんなのはいらない。俺が欲しいのはな……」
「あががががががががががががががががががが!!た、たすけ―――――」
「てめーみたいな屑どもの命だよ!!」
リルの腕から黒いが現れ、男を焼き尽していく。男を捕らえていた氷は消え男はそのまま地面に崩れ落ちた。男は悲鳴を上げながら体の炎を消そうと転がるが一向に消えなかった。リルたちは冷めた目でその光景を見ていた。
エリーゼはアイテムボックスから水が入ったバケツを取り出し、男の前に置いた。男はすぐさまそのバケツを掴み頭から水をかぶった。だが、その炎は未だ消えることはなかった。
それだけではなく、その炎は直ぐに男の体を焼き尽くさなかった。まるでスロー再生のように痛みを与えながらゆっくりと燃やしていった。男は消すことができないと理解し、絶望と痛みの悲鳴を上げながら皮、肉、骨の順に燃えて無くなった。
それから彼女たちは城の外に出て街道へと出て、馬車に乗って旅を再開した。ロミオが運転席で手綱を引いて走っている。彼女たちは車内でそれぞれのんびりしていた。
「そういえば来月あたりにエルフの国の水の都ウンディードって街でお祭りがあるみたいなんだよね。息抜きついでに寄ってみませんか?」
「……ロミオさん、俺たちには破王様に会うっていう大事な目標があるんだぜ?そんな呑気なことしてる暇ないって!」
「ふむ、お祭ですか……」
リルは眉を潜め、エリーゼは片手を顎に当て考え始めた。それを聞いたエクレアとアウラが顔を上げた。
「はいはーい、私お祭り行きたいのです~!」
「あたいもいきたーい!」
2人が行きたい宣言をしているとエリーゼは考えがまとまり終わった。
「……いいでしょう、行きましょか!」
「え?エリーゼさん、よろしいのですか?」
「ええ、ほとんど人族の国は廻りましたし、ちょうどいいかなっと思いまして。もしかしたらエルフのところにいるかもしれないですし」
「なるほど……わかりました、では向かいましょう!」
方針が決まり彼女たちはエルフの国の水の都ウンディードへと向かうのであった。
「はあ、破王様……一体どこにいらっしゃるんですか……」
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