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雪月花  作者: ふうや
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一ノ二 秘められた力

こんな力持つなんて


誰も望んでないのに。


出来るなら、消してしまいたい――




神社に響き渡っていた笑い声もいつしか無くなっていた。


「なぁ、月榮」

「…なんだ」

「知ってる?うち、すっごい力持ってるらしいんよ」

「え?な、なんだ其れ」

「まだ正体はわからんのやけど…。もし其れを解放したら、世界が危ない事になるねんて」

「本当か、それ」

「うん。…其れ抑えるために、このペンダントがあるんやて」


そう言って飛椴は首にぶら下げてあったペンダントを首から外し手のひらに置いた。

勾玉がいくつも連なっているペンダントだ。


「これが力抑えとるんやて。もし、このペンダントが首から一週間離れたら、力解放されてしまうらしいわ」

「――辛くないのか、お前」

「え?」

「そんな辛い状況で花月家を引き継ぐことになって、辛くないのかって事だ」

「…辛いよ、ものすごい、辛いよ……でも、でもな。『花月家を存続させる』…それがうちに任された使命やから…。どれだけ辛い状況に立たされても、うちはやっていかなあかんのや」


(飛椴…)

悲しそうに地面ばかり見つめる飛椴に掛けてあげる言葉が月榮は全く見つからなかった。

今の自分も同じ立場に立たされているはずなのに。


「…月榮」

「何だ?」

「このまま、死んでしまいたい思う時があるんよ」

「な!?お前、何で」

「こんな力秘めて…それに、こんな無力なうちが、花月家を支えるなんて…無理や」

「…諦めんなよ」

「え…?」

「諦めたら、其処で終わりだろ。…その、お、応援してるし…俺だって」

「月榮…」

「だから諦めんな。先の事は分からないし」

「――そうやな」


そう言うと飛椴はようやく笑顔を見せた。

それにつられて、月榮の頬も自然と緩んだ。


「ありがと、月榮。助かったわ」

「べ、別に」


そう言うとふいっと顔を逸らす。

その背後でくすっと笑う声が聞こえた。


「な、何がおかしいんだよ!」

「え?月榮って…優しいんやな、って」

「は!?俺の何処が優しい!ありえねー事言うな!」

「あり得るから言うてるのに!信じひんの!?」

「当たり前だ!俺の何処が優しい!」

「心の中、かな?」

「――え?」


まともに答えられ月榮は声が少し上擦った。


「いっつも口悪いけど、心は優しいと違うんかな?ってうちは思てん」

「…知るかよっ」

「いつか分かる日、来るやろな…。…さてと、お姫さん待たしとるから、急ご!月榮!」

「わーったよ」


そう言って一歩踏み出した瞬間。

飛椴と月榮を取り巻くように黒尽くめの忍者があらわれた。

見たところで十人は軽く越えている。


「…なんだ、此奴等」

「わからへん。ただ、うち等をねろうて来たのは間違いあれへん」

「だろうな。…しゃーね、面倒だが運動ついでに」

「そうやね…。行くよ、月榮」

「任せとけ」


そう言うと、砂塵を残して月榮と飛椴の姿は消える。


その数秒後には黒尽くめの忍者の数人が地に伏せていた。

残されたのは二人。

この二人は後の数人とは違う強さを持っていた。


一人の男に飛椴が刀で応戦するが、それでは済まないのだ。


「な、何なん!強すぎるわ!」


そう叫びつつ、男から来る攻撃を防御する。

反撃に出ようにも相手が素早く、中々出れない。



刀で応戦し続けている飛椴の体力が底をつきそうになった時。


「飛椴!伏せろ!」

「え!?」


月榮に言われるがままにその場に一旦伏せる。

数秒たって目を開けると、昨期いたはずの男の姿は地面にあった。


「げ、月榮?何かした!?」

「取り敢えず手裏剣投げておいた」

「え?て事は…月榮もう一人倒したん?」

「あ、あぁ。一寸苦戦したけど」

「そうなんや…。はぁ…疲れた。妙な体力、使つこうてしもたわ。………ありがと」

「え?」

「うちを…助けてくれたから」

「あ、あれは別に助けるためにやったんじゃねぇっ。ただ一人倒したからもう一人もついでにと思っただけだ!別にお前を助ける為じゃねぇんだからな!」

「そうやったとしても…ホントありがとう」

「礼言われるような事なんてしてねぇよ…」


(ま、事実そうなんだけど…。此奴だけは…守ってやりたいし…)

視線を逸らしつつ、月榮はそう心で呟いた。


いつも強気だが、本当は凄く脆くて…

直ぐにでも壊れてしまうんじゃないかと思ってしまうぐらいだ。

だから、そんな飛椴を――

(ずっと…守ってやりたい。あの笑顔を、消させはしない)


そう思った後、空を仰ぐ。

何もなかったようにずっと流れていく。


「空、綺麗やね」

「――そうだな」

「…なぁ月榮」

「何だ」

「この力、解放せんように頑張る。…力解放して、人傷つけたないから…」

「…あぁ」

「もし、うちが力に飲み込まれそうになったら…その、昨期みたいに飛椴って呼んでくれへん?」

「――え?」

「いつもお前お前言うてるけど…昨期は飛椴って呼んでくれたから。…そうしたら、意識戻せるような気がしたんよ」

「…分かった。絶対、現実に引き戻してやる」

「頼むわ」


そう言うと月榮に向かって飛椴は微笑んだ。


「じゃ、そろそろ帰るか?雪姫心配してるぞ」

「そうやね」


そう言った数秒後にはもう二人の姿は遙か彼方にあった。

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