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ヤンキーVS魔法少女  作者: 平良野アロウ
第五章 フォアグラ教団編
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第83話 妖精騎士団VSフォアグラ教団

 拳凰の前に現れた第四使徒。司令室は騒然となっていた。

「第四使徒……七聖者の一人ではないですか! 彼には荷が重過ぎます! 至急救援を向かわせましょう!」

「いや、このままでいい」

 ザルソバの提案を、ビフテキが蹴る。

「何を言っているんですか!? 相手は七聖者ですよ!?」

「このままでいい……彼に戦わせてやれ」

 静かに威圧され、ザルソバは引き下がる。

(ビフテキは何故そこまで彼を……)


 妖精騎士団がそれほどにまで恐れる相手と対峙した拳凰。相手の実力は、本能で察していた。

「いいぜ、てめーのような奴とやりたかったところだ。かかってこいよ」

「生憎戦いは趣味じゃない。俺はテロが趣味でね。まあお前が俺のテロを邪魔するってんなら……容赦はしない」

 そっぽを向いたままそう言うと、プルコギの姿が消えた。拳凰は次の瞬間、後ろに飛び退く。眼前に現れたプルコギは空中から拳を振り下ろすも、間一髪で拳凰は避ける。空を切った拳は、そのまま地面を殴った。

 その時、殴られた地面がまるで地雷でも埋まっていたかの如く爆発した。燃え上がる爆炎と、強烈な爆風。拳凰は目をやられぬよう眼前で両腕をクロスするも、大きく後ろに吹き飛ばされる。プルコギは素早く切り返して駆け出し、再び拳凰へのパンチを試みる。拳凰は砕けた地面の破片を一つ手に取ると、それを試しにプルコギへと投げた。プルコギがそれを殴ると拳と破片の間で爆発が起こり、破片が砕けて四散。

「俺は爆弾魔にして拳法家。殺戮爆殺拳はテロに特化した拳法。即ち、俺の拳は爆弾だ!」

 鋭いストレートが拳凰の眼前に迫る。拳凰は素早く体を傾け、間一髪で避けた。そしてそのままカウンターを狙うも、もう一方の拳が迫ることに気付き斜め後ろへ大きく跳んだ。

(何かを殴れば爆発を起こせる魔法か……一発でも喰らったら終わりだな。これが上級幹部の実力……)

 間近に迫る死の恐怖。だがそれ以上に、これほどの強敵と戦えることに拳凰は胸を躍らせていた。



 洗脳兵士に気を遣って本気を出せずにいた騎士団の面々は、デスサイズの勝利で洗脳兵士が無力化されたことによりいよいよその本領を発揮し始めた。

 大剣使いである第十三使徒・不吉のソーメンと戦うソーセージ。二人に分身した状態で挑発し、ソーメンを洗脳兵士から引き離す。

「さいたまさいたま!」

 振り下ろされた大剣を、意味不明な言葉を叫びながら余裕で回避。

「さいたまさいたまさいたま!」

 そしてまたもバンザイしながら意味不明な言葉を叫んで隙を晒す。ソーメンはそれにまんまと乗せられ、建物の中へと誘い込まれた。

「さいたま~~~~!」

「この……舐めた真似を!」

 頭上から振り下ろされた大剣がソーセージを真っ二つにするも、そちらは分身。斬られると同時にドロンと消えた。

「たん♪た♪たらりらたん♪」

 突然、ソーセージの謎の歌声が屋内に響く。ソーメンが聞こえた方向、即ち上を向いた時――その場の天井が崩落した。驚いたのも束の間、ソーメンは瓦礫の下敷きとなる。直後、ソーセージはその瓦礫の上に着地。瓦礫の隙間から、赤い血が滲み出した。

「あぼーん」

 敵の死亡を確認してそう言った後に手で印を結び、ソーセージはドロンと姿を消した。

 双子座(ジェミニ)のソーセージ。素顔不明、本名不明、経歴不明、全てが謎に包まれた覆面の騎士。唯一言えることは、騎士団に在籍できるだけの確かな実力を持っているということである。普段はおどけているが、一度敵が現れたならあらゆる手段を用いて容赦のない戦いをする。その得体の知れなさは、騎士団内でも恐れられているほどである。


 王立競技場のステージ上では、ポタージュと第十六使徒・死の道化師ジャンバラヤが戦闘中。

 ジャンバラヤの武器は、ジャグリングの玉である。その一つ一つに魔法がかけられており、触れた相手の肉を抉る恐ろしい凶器である。

「死んじゃえ! 虐殺ボールだ!」

 ジャグリングで惑わせながらボールを投げ、相手に回避のタイミングを悟らせないという高等技術。しかし、戦いのセンスに関してはポタージュの方が一枚上手だった。

 ポタージュの得物は投げナイフ。握り拳を広げると、指と指の間にまるで手品のようにナイフが現れた。まずは敵の玉に向けて軽く投げ、更にそれを魔法で複製。一つ一つ相殺して潰してゆく。不規則に動き回るかのように見えたボールだったが、ポタージュにとってその軌道を読むのは容易いことであった。

 更にジャンバラヤのボールが数に限りがあるのに対し、こちらはいくらでも複製できる。手数に圧倒的な差があるのである。空中で数を増やしながら、変幻自在に軌道を変えて襲い来る無数のナイフ。ジャンバラヤはそれを目で追うことすらままならず、ただ一方的に攻撃を受け続けていた。

「こ、これは私のショーだぞ!!」

 ジャンバラヤはポタージュを無視し、斜め上へと玉を投げる。本来の目的である観客への攻撃をどうにか試みるも、虐殺ボール程度の威力では結界を破ることはできない。魔法少女バトルの余波で観客を傷付けることがないよう、ステージに張られた結界は非常に強固である。悔しさに顔を歪ませたところで、背中、肩、脇腹へとナイフが突き刺さる。遂には体力も尽き、前のめりに倒れた。

 同じ投射武器使いでも、実力差は歴然であった。血まみれに地に這い蹲るジャンバラヤと、その横で汗一つかかずすまし顔で立つポタージュ。

「なーんか弱すぎて全然手応え無かった的な?」

 ポタージュはナイフを一本取り出すと、手首だけ動かして下に投げる。ナイフはジャンバラヤの背中に深く突き刺さり、その一撃でジャンバラヤは気を失った。

「観客のみんなー、見てくれた的なー? これが天才的ぃ~で最強的ぃ~な僕の実力的な?」

 牡羊座(アリエス)のポタージュ。本名、ポタージュ・アルビレオ。若干十六歳で妖精騎士団に名を連ねる天才であり、少女のような顔立ちの美少年である。

 アルビレオ家は所謂旧王族五家の一つ。旧王族五家とはかつて妖精界が六つの王国に分かれていた時代の、ゾディア以外の五国の王の末裔である。そのいずれも現妖精王国においては貴族として扱われている。中でもアルビレオ家はゾディアの同盟国であるキグナス王国を祖としており、妖精王国に併合された後も引き続き旧来のキグナス王国領を治めることを許された立場。現在でこそ五家はいずれも先祖の居城を返還されているが、当時は唯一の待遇であった。

 ポタージュはそのアルビレオ家において、当主の甥という家督を継ぐには遠い立場にあった。それ故に貴族の礼節や責任に関心が無く、自由奔放に振舞う少年であった。しかも何をやらせても人並み以上に上手くできる天才肌。彼が自分を鼻にかけるのも無理はない話であった。

 彼が十四歳の時、その言動さを快く思わなかった当主が、彼を士官学校に入れて鍛え直そうと画策。それに反抗したポタージュは、たまたま牡羊座の騎士試験がやっていたのを見つけて参加。軍に所属していない身ながら、持ち前のセンスだけで優勝し騎士の座を掴んだのである。

 慢心と怠惰は悪い癖だが、若くしてそれだけの才覚を持つ彼は紛れもなく将来の妖精界を背負って立つ男。彼に期待を寄せる者は非常に多いのだ。


 王国軍王都司令部前において交戦するのは、山羊座(カプリコーン)のミソシルと第十二使徒・霧雨のターメリック。体から霧を噴出して敵の目を晦まし、迎撃にかかる軍人達を翻弄していたターメリック。ミソシルが駆けつけた時、既にその場所は濃霧で何も見えないほどであった。

「こいつはまた厄介なものぜよ」

「ミ、ミソシル様! お気をつけ下さい! 敵は霧に紛れて襲ってきます!」

「そんなことはわかっとる!」

 ミソシルはそう言うと左目の眼帯に手を掛け剥ぎ取った。

「わしに任せい! 陛下のおわす王都に攻め入った愚かなテロリストに、天誅を下してやるぜよ!」

 仁王立ちして槍を構える甲冑の騎士。その左目は、翠の宝珠であった。

 何も見えない霧の中から、鋭い短刀で襲い掛かるターメリック。この戦法に軍人達は成すすべなく倒されていったのだ。だがミソシルは、相手の位置を的確に捉え槍を突き刺した。

「ぐえっ!?」

 悲鳴を上げるターメリック。槍は腹にしっかりと突き刺さっていた。

「な、何故わかった……」

「教えてやる義理は無いぜよ」

 ミソシルは槍を押し込み、ターメリックは口から多量の血を吐く。

「お、愚かな王に仕える者どもめ……我らは正義の革命軍だ……フォアグラ様は常に正しい! フォアグラ様いる限り我らに敗北は無い……天誅を下されるのは……貴様らの方だ……!」

 最後の力を振り絞り言い放つターメリックだったが、ミソシルは何も言わず更に槍を押し込む。ターメリックは再び多量の血を吐き絶命した。

「けしからん……陛下を愚弄したこと、あの世で後悔するがよい」

 槍を引き抜き血を掃うと、ミソシルはその場を立ち去った。

 山羊座(カプリコーン)のミソシル。本名、ミソシル・アルデバラン。アルデバラン家はゾディア大陸東部の山岳地帯に領地を構える田舎貴族である。ミソシルの左目の正体は、覇者の宝珠。アルデバラン領でのみ発掘される特殊な鉱石に、当主の血液を染み込ませて球状に加工したものである。アルデバラン家の者達は、一人一個ずつこれを所持することとなっている。

 覇者の宝珠の効果は、武器に填め込むことによってその性能を強化するというもの。ただし、アルデバラン家の血筋の者でなくてはそれを扱うことはできない。たとえ戦いに敗れ宝珠を奪われても安心である。

 だが宝珠にはもう一つの効果がある。肉体に直接埋め込むことによる肉体強化、とりわけ埋め込んだ部位を目覚しく強化するというものである。王宮への暗殺者侵入をみすみす許した自分自身への戒め、そして一生消えない傷を顔に負った主君の痛みを分かち合うため、ミソシルは左目をくり抜きそこに宝珠を移植したのだ。これによりミソシルはあらゆる物を見通す眼を手に入れた。あまりにもよく見えすぎる故に日常生活に支障をきたすため、普段は眼帯で封印している。

 全てはこの国と妖精王のため。忠義の騎士ミソシルは、その眼を以って敵を討つ。



 続々と勝利を重ねてゆく妖精騎士団の面々。そんな中、騎士団最弱の男は因縁深き相手と対峙していた。

「……久しぶりカニな、ピクルス・アクベンス少佐」

「昔の肩書きで呼ぶのはよしてもらおうか。今の私はフォアグラ教団第九使徒・蟹座(キャンサー)のピクルスだ」

 赤と青の混ざった髪に、赤と青のオッドアイの若い男。上半身裸の服装で、その身には幾つもの痛々しい手術痕がある。

「随分と変わったカニな……」

「全て貴様が悪いのだ。貴様さえいなければ、俺はこのような醜い姿になることもなかった。俺はこの二年間、貴様を殺すことだけを考えて生きてきたのだ」

 ピクルスは鬼の形相となり、背中から六本の触手が皮膚を突き破って生えた。

「王国軍時代の私と一緒だと思うな……幾多の改造手術に耐えて得たこの力……全ては貴様を殺すためのものだ!」

 全身に血管が浮き上がり、湯気が立ち上る。異形の姿に変貌したピクルスを見てカニミソは動揺するが、深呼吸して覚悟を決める。

「できることなら穏便に解決したかったカニが……やるしかなさそうカニな」


 王立アンドロメダホテル。第十使徒・飛翔のアブラーゲとの空中戦を繰り広げるホーレンソーは、光の矢を変化させた足場を空中に固定して立ち回っていた。

「どけぇ! 俺に人間を殺させろ!」

 窓に向けて銃を撃つアブラーゲだったが、ホーレンソーはそれに合わせて矢を放ち弾を防ぐ盾とする。アブラーゲの撃つ弾は、一つとしてホテルには届かない。

 片や一方的に攻めることができるが、もう片や魔法少女を守りながら戦わねばならない。一見するとホーレンソーに不利な戦いに見えるが、実際はホーレンソーが圧倒していた。銃の連射速度を遥かに上回る弓の連射で、守りつつ攻める。ホーレンソーの攻撃は百発百中であり、全て狙った先を的確に射抜く。体中に矢が刺さりながら、アブラーゲは息を切らしていた。

「く、くそぉ……」

「所詮下級幹部の実力などこんなものか。今頃私の仲間達が、貴様の仲間達を倒している頃だろう」

「それはどうかな……お前の友達で騎士団最弱のカニミソは確実に死ぬぜ。何故なら第九使徒ピクルスは元七聖者の実力者だ。俺より遥かに強い……そしてあいつはカニミソを何よりも恨んでいる。カニミソを殺すために全てを捧げた男なのだからな」

 そう言い放つアブラーゲだったが、ホーレンソーは眉一つ動かさない。それが動揺を狙った苦し紛れの精神攻撃でしかないことは分かっていたからだ。

「フッ……馬鹿を言うのはよしたまえ。カニミソは君が思っているよりよほど強い」

 鼻で笑うホーレンソー。その表情には、確かな自身と信頼があった。



<キャラクター紹介>

名前:第十八使徒・暗殺のネギトロ

性別:男

年齢:28

身長:159

髪色:黒

星座:魚座

趣味:小説を読む


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[一言] 第9使徒の名前がジャンバラヤとピクルスの2つ出てきてます
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