表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンキーVS魔法少女  作者: 平良野アロウ
第四章 本戦編Ⅰ
79/157

第78話 ヤンキーで魔法少女

 恋々愛が無傷の連勝を重ねているのと同刻、王都球場ではDブロック一回戦第一試合が行われていた。対戦カードはチーム・幼馴染VSチーム・ハリケーンである。

 チーム・幼馴染は名前のとおりの幼馴染四人組。最終予選でも早々に合流し、四人のコンビネーションで勝ち上がった。そしてこの本戦においても、当然真っ先にチームを登録していた。

 二点先取の一戦目。暗殺者風の衣装を着た山野清美は、自身の発する音を全て消した上で相手の死角に回り込んではナイフで切る攻撃を繰り返し勝利。単純な隠密性能で見ればは姿も消せる駿河透子に劣るが、身体能力の基礎スペックではこちらが勝る。

 続く二戦目は、ウェイトレス衣装を着た向井舞が登板。彼女は斬った物の魔力を打ち消す刀で相手の魔法を悉く無効化、危なげなく勝利した。こちらも同じ魔力無力化だと歳三に大きく劣るものの、刀という強力な武器を用いた近接攻撃は侮れない。

 チーム・幼馴染が二連勝したことにより、大将戦を待たずしてこの試合は決着。幼馴染の四人はステージ上で両手を上げて喜んでいた。

「いかがでしたかカクテルさん、今回の試合は」

「ええ、面白い試合でした」

 口ではそう言うカクテルであったが、内心では。

(やれやれ、何も見所の無い退屈な試合でした。今日は王立競技場の方が面白そうな魔法少女が揃ってますし、どうやら貧乏くじ引いちゃったみたいですね)

 などと考えながら向こうの会場に思いを馳せていたのである。



 所変わって王立競技場。いよいよ追い詰められたチーム・烈弩哀図は、リーダーの竜崎大名が出陣。そして対するチーム・ウルトラセクシーは未だ一人目の古竜恋々愛がほぼノーダメージで立っている。

「おっ、あいつはこの前俺に絡んできた奴じゃねーか」

 大名の姿を見て、拳凰は以前の一件を思い出した。

 ここから烈弩哀図が逆転するには、恋々愛に勝利した上で更に三人抜きしなければならない。無理難題と言わざるを得ない状況だったが、当の大名には勝つ自信があった。

(うちは勝つで。なんせうちはケンカで負けたこと無いんやからな)

 まっすぐ見据えた先にいる相手は、何を考えているのかわからないような表情でぼーっと空を見上げている。

「果たしてこのままストレート勝ちとなるのでしょうか、チーム・ウルトラセクシー、古竜恋々愛! 絶体絶命からの逆転はあるのでしょうか、チーム・烈弩哀図、竜崎大名! 優勝候補同士、二体の竜が今まさに激突です!」

 見合う二人。注目の選手同士の対決とあって、会場は否が応でも盛り上がる。

 大名はステージ上でヤンキー座りをし、恋々愛にガンつけた。

「まさかうちの仲間三人も潰してくれるとは。ま、うちはここからそれを超える四人抜きしたるさかいな。覚悟せえや」

 少しして、恋々愛は大名の方を向き「何か言った?」とでも言いたげな表情をした。頭にきた大名は立ち上がり、腕を伸ばして人差し指で恋々愛を指す。

「ええ度胸やないか。潰したる」

 竜崎大名は、関西最強と恐れられる不良少女である。中学生ながらバイクを乗り回し、圧倒的な強さで無敗伝説を築き大阪中の不良を纏め上げた豪傑。畏怖を籠めて付けられた異名は浪速のダイナソー。

 最早誰も彼女には敵わない。そんなある時彼女の前に現れたのが、わけのわからないことばかり喋る自称妖精の謎の忍者であった。この不審者から招待され、大名は魔法少女バトルの世界へ足を踏み入れる。

 参戦の決め手は優勝すれば何でも願いが叶うということの魅力。叶えたい願いならいくらでもあった。

 元々喧嘩慣れしていたこともあり、試合は連戦連勝。無敗伝説に更なる箔が付いた。そして最終予選も難なく突破。竜崎大名の名は妖精界にも轟くこととなったのである。


 試合開始の合図。大名の目の前の床に魔法陣が現れ、そこから黒いドラゴンを模ったバイクが出現する。

「どや、うちのブラックドラゴンは。かっこええやろ」

 恋々愛は首を傾げる。

「このセンスがわからへんとはガキやな。オラオラ! 轢き潰したるでーっ!」

 バイクに跨った大名は、早速エンジンを吹かし恋々愛へ突撃。恋々愛は脚を開いて腰を落とし、バイクごと真っ二つにせんと斧を構えて正面から迎え撃つ格好。

「大名さん!」

 ぶつかり合う瞬間に、陽子が叫ぶ。だがその時、ブラックドラゴンの口が開き斧に喰らいついた。恋々愛の剛力から放たれる豪快なフルスイングを、見事に受け止める。

「噛み砕け! ブラックドラゴン!」

 まさかのギミックに観客が驚く最中、竜の口内から黒い炎が噴出し熱で斧を溶かす。そして柔らかくなった斧を、鋭い牙で噛み砕いた。腑抜けた様子だった恋々愛もこれには流石に目を覚まし、斧を手放して後ろに飛び退く。ブラックドラゴンはそのまま斧を完全に焼き尽くした。

「まだまだ行くで!」

 今度は黒い炎を球体にしたものを発射。恋々愛は跳んで避けつつ、斧の再生成を始める。だがそこにバイクがドリフトしながら突っ込んできた。撥ね飛ばされた恋々愛を更に追尾し、体当たりをもう一撃。

「つ、強いです竜崎選手! 古竜選手が手も足も出ません!」

 恋々愛は空中で体勢を変えて着地するも、大名は更なる追撃へと迫る。恋々愛は今度は素手で掴もうとどっしり構える体勢だ。

「無駄や! また吹っ飛ばしたる!」

 ハンドルを握ってアクセルを吹かし、大名は加速。竜の口から炎を迸らせながら突っ込む。

 ぶつかり合う瞬間に、恋々愛は手を伸ばし大名本体に掴みかかった。そのまま腕力に物を言わせて薙ぎ倒し、バイクから降ろす寸法だ。

「そうはさせへんで!」

 大名は横転しながらもハンドルをしっかりと握り、バイクを手放さない。そして竜の口から発射した火炎弾を近距離の恋々愛にぶち当てた。爆発炎上する黒炎に吹き飛ばされ、恋々愛は背中を結界に打ち付ける。

「まだ終わりやないで!」

 相手を壁際に追い詰めた大名は、いよいよとどめとばかりに突貫をかける。バイクと結界で恋々愛を挟み潰すつもりなのだ。

 絶体絶命の危機。だがその時、恋々愛は全身に力を入れ手首足首に付いた黄金のリングを吹き飛ばした。そしてぶつかる寸前に瞬間移動。相手を見失った大名のバイクは、そのまま結界に正面衝突した。

「のわっ!?」

 声を上げる大名。バイクの前面がひしゃげ、大名は投げ出される。恋々愛はすかさず大名の近くにワープし、腕を掴んだ。

「ブラックドラゴン!」

 と、その時。破壊されたブラックドラゴンが大名の叫びに呼応して再生、火炎弾を発射した。恋々愛は瞬時にその場から消えて避ける。解放された大名は、すぐさまバイクに跨った。流石魔法のバイクだけあって、大名のMPが尽きない限りは再生が可能なのだ。

「ようやく本気ってことかいな。舐めた真似しとった間に減ったHPが命取りにならんとええなあ」

 バイクの両サイドが展開し、そこからミサイルが次々と発射。空中にワープして様子見する恋々愛を狙う。地上へとワープした恋々愛だったが、ミサイルは空中では爆発せずに軌道を変え落下。地上で爆発してステージ上へ黒炎を撒き散らした。

「っ……!」

 恋々愛の声が漏れる。腕輪の封印を解く前は大して感じなかった黒炎の熱さを、肌に直に感じ取ったのだ。

 そしてその黒炎だらけのステージ上を、全く気にせず走行するブラックドラゴン。再び体当たりをかまそうとしてきたところで、恋々愛はワープして避ける。

「どこに逃げても同じやで!」

 大名の後ろに回り込んだつもりだった恋々愛だが、足元の黒炎にHPを削られ身を焦がされる。大名はバイクをUターンさせ、またしても体当たりを狙う。

 だが体当たりは恋々愛の行動を縛るための囮であり、本命の攻撃は黒炎やミサイルであることを恋々愛は理解している。次に恋々愛のワープした先――それはブラックドラゴンの頭の上であった。

「なんやて!?」

 不意を突かれた大名は思わずブレーキ。その拍子に、恋々愛は大名に思い切り抱きついた。先程は片手で腕を掴んでいただけのため簡単に反撃を許したが、今度は全身を使ってしっかりと押さえ込む。

「お、お前何がしたいんねん!」

 突然の奇行に慌てふためく大名を抱き抱えたまま、恋々愛はバイクの上からジャンプ。空中で回転を加えながら、勢いをつけて一気に床へ投げつけた。

 床に体を打ちつけて怯んだ大名に、恋々愛は更なる追撃。再生成した斧を構え、落下のエネルギーを籠めて一気に叩き割る。

「ぐあああああ!!」

 ステージの床をかち割るほどの衝撃。吹っ飛んで空中に投げ出された大名だが、まだ変身は解けない。

「ブラックドラゴン! 轢き潰せや!!」

 ピンチになっても衰えぬ闘志で、大名は叫ぶ。だが次の瞬間、突っ込んできたブラックドラゴンを恋々愛の斧が粉砕した。その間に大名は着地し、息を切らしながら恋々愛を睨む。

「うちは最強無敗の竜崎大名やぞ。こんな所で負ける女やあらへんのや……」

 満身創痍の大名が最後に取った行動は、素手で殴りかかることだった。やけっぱちに見えるが、結局最後に頼れるのは己の拳。彼女はそれで大阪中の不良を纏め上げた実績があるのだ。

 呻る鉄拳。迎え撃つ恋々愛は斧を地面に突き立て丸腰となる。ここは素手の方が対応し易いという判断だ。

 左手で手首を掴んで攻撃を逸らし、右手を相手の腋の下に入れて体を空中にひっくり返す。そして最後は背中から投げ伏せる。華麗な投げが見事に決まり、大名の変身は解除された。

「き、決まったあああああ!」

 なだれ込む大歓声の中、タコワサが叫ぶ。

「勝者、古竜恋々愛!!」

 無敗伝説に終焉を告げる、ザルソバの声。

「さあ古竜さん、勝利を祝って、今こそウルトラセクシーなポーズを!」

 ベンチから珠子が声をかける。恋々愛は暫くきょとんとしていたが、少しして段取りを思い出した。前かがみになって両腕で胸を挟むおっぱい強調ポーズ。またしても会場は沸き立った。

「ヒューッ、相変わらずエロいじゃねーかあの女」

 セクシーポーズに喜ぶ拳凰の傍ら、幸次郎は口をあんぐり。

「どうした幸次郎、エロすぎて放心でもしてんのか?」

「あっ、い、いえ」

 我に返った幸次郎は、焦って誤魔化す。

 恋々愛がステージから降りた後も、大名は暫くステージ上に大の字で寝転がったままであった。

(うちが負けた……今まで一度も負けたことがなかったうちが……)

 先程まで鼻の下伸ばして恋々愛を見ていた拳凰だったが、そちらに目線を向けると急に表情が険しくなった。

「あいつ、これからきっと強くなるぜ。この前は他に用事があったから戦うの拒否しちまったが、今更あいつと戦いたくなっちまったぜ」

 過信していた己の力が通用せず打ちひしがれる姿に、拳凰はかつて智恵理に一撃で倒された時とハンバーグに完敗を喫した時の自分を重ね合わせていた。敗北は強さの糧。無敗伝説の終わりは決して悪いことばかりではないのだ。

「だ、大名さん……」

 三人のチームメイトは、恐る恐る大名に近づいた。大名はまるで死体が生き返ったように起き上がる。三人はびくりとした。

「落ち込んどる場合やないでお前ら! ホテル戻ったらすぐ特訓や!」

「は、はい!」

 背中を向けたまま袖で目を拭い、大名は改めて仲間を叱咤する。

 改めてステージに上がったウルトラセクシーの四人は、またも思い思いのセクシーポーズで観客にサービスしていた。

 両チームが整列したところで、ザルソバはチーム・ウルトラセクシーの勝利を告げる。恋々愛は先程のショート同盟VS桜吹雪戦を真似て、対戦した四人それぞれと握手をした。

「いやー凄い試合でしたねザルソバさん」

「ええ、あの胸の揺れっぷりといったら本当に……ゴホン。魔法少女バトルに長い歴史はありますが、たった一人で四人抜きというのはなかなか見られないもの。古竜選手は本当にどこまでも規格外と言わざるを得ません。勿論、その古竜選手にここまで渡り合った竜崎選手もまた凄まじい実力を持つことは言うまでもありません。どちらか一方がどうしてもこの本戦で脱落してしまうのが非常に惜しいものです」

 二人の戦いを称え、観客達からは自然と拍手が上がった。

「さて、本日のバトルも、いよいよ残すところあと一試合となりました。Bブロック一回戦第二試合、対戦カードはチーム・パラダイスVSチーム・余りものⅠ。中でもチーム・余りものⅠは期限までにチームを組めなかった魔法少女同士で結成することとなった急造チーム。果たしてどんな試合を見せてくれるのでしょうか?」

 ウルトラセクシーと烈弩哀図の面々が下がると、次の試合に出る両チームがステージに上がる。

 丁度その時、拳凰のポケットの中で携帯が鳴った。妖精界では人間界のスマートフォンは基本的に通信不可だが、現在拳凰が所持している携帯電話はビフテキから手渡されたフェアリーフォンである。拳凰自身のスマートフォンは人間界に置いてきている。

「もしもしー」

 電話に出たところで、すぐに拳凰の目つきは精悍になった。

「わかった。他の二人にも伝えとくぜ」

 手早く話を終えて、拳凰は通話を切る。

「幸次郎、デっさん、ようやく俺達の出番が来たようだぜ」

「つ、遂に来たんですね……」

「さて、仕事に行くとするか」

 これから次の試合が始まろうというのに三人は席を立つ。

 妖精界を蝕む不穏な気配が、いよいよこの地に迫ってきていた。



<キャラクター紹介>

名前:大和(やまと)(こずえ)

性別:女

学年:高一

身長:166

3サイズ:100-60-93(Hカップ)

髪色:茶

髪色(変身後):黄緑

星座:牡牛座

衣装:マーメイドドレス

武器:指輪

魔法:磁力を操る

趣味:アクセサリー集め


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ