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ヤンキーVS魔法少女  作者: 平良野アロウ
第八章 最終決戦編
138/157

第137話 ベスト8決定!

 決勝トーナメント一回戦は、いよいよ後半戦となる第五試合が始まろうとしていた。

「プリティマジシャン、二宮夏樹!」

「どーもどーも!」

 観客席に向けて笑顔で手を振る夏樹。

「神速のスプリンター、悠木小梅!」

「よっしゃー! 姉ちゃんの分まで勝つぞー!」

 対する小梅は力強く叫んで気合を入れる。

 今回は元チームメイト同士の対戦であり、レオタード状の衣装を纏った魔法少女同士の対戦でもある。

「それでは……試合開始!」

 小梅はクラウチングスタートの体勢を取ったかと思うと、ワープしたかの如き超速ダッシュで夏樹に接近。夏樹がトランプを出すより先に、小梅の拳が夏樹の鳩尾を突いた。

「ぐえっ!」

 吹っ飛んで結界に叩きつけられた夏樹だったが、すかさずシルクハットから大量のカードを放出し自身の周囲に漂わせた。小梅が突っ込んでくればカードが刺さってダメージを受ける、攻防一体の戦術だ。

(これで防御して時間を稼ぎつつ、ロイヤルストレートフラッシュを揃え……)

 そう思った夏樹であるが、小梅はカードにぶつかるのを厭わず突撃してきたのである。

「ひぇっ!?」

 ソニックブームでカードを吹き飛ばしながら、追撃の一発。再び吹っ飛ばされた夏樹は、小梅にはこの手の防御手段は通じないと悟った。反撃に出ようにも一度掴んだカードを先程の一撃で手放してしまい、また集め直しである。

(や、やば……)

 そこから小梅は怒涛の畳み掛けである。息もつかせぬ連続パンチに、とどめの大開脚ハイキック。結局一回もダメージを受けることなく、小梅の圧勝となった。

「あっはは……またいいとこ無しで終わっちゃった」

「ありがとな夏樹!」

 がっちり握手をしての別れ。

(これで蓮華さんに続いて夏樹ともお別れか……寂しくなるな……)


 続く第六試合。

「ヴァンパイアアイドル、小鳥遊麗羅!」

「みんなー! 応援よろしくー!」

 大歓声の響く中、元気に可愛いアイドルポーズ。

「飛翔のアメリカンレスラー、レベッカ・シューティングスター!」

「会場を盛り上げるのはミーの方デース!」

 負けじと目立とうとばかりに、空中ジャンプの魔法で派手に空中を跳び回るパフォーマンスを見せるレベッカ。

「それでは……試合開始!」

「さあ、かかってくるデース!」

 星条旗ビキニ姿で手招きするレベッカに対し、麗羅は遠距離から蝙蝠の大群を飛ばす。

「オー! これは強烈デース!」

 レベッカは相手の攻撃をあえて受けるスタイル。蝙蝠に噛み付かれながらも、麗羅へと足を進める。

 一方の麗羅はマントを翼に変化させ、空中へと飛び立った。それに対しレベッカはジャンプからの空中ジャンプでそれに追いつく。

「空中戦はミーの独壇場! お次はミーの攻める番デース!」

 麗羅より更に高く跳び上がり、フライングボディアタックで襲い掛かる。

「この程度余裕で避けられるのよ!」

 翼を羽ばたかせヒョイと避けた麗羅であったが、レベッカは更なる空中ジャンプでそれを追う。両腕でがっしりと麗羅にしがみ付いたレベッカは、そのまま体勢を反転させて麗羅の頭を下に向けた。

「喰らうデース! ハイパーメテオインパクト!」

 逆さまにした麗羅をホールドし、隕石の如く急降下。このまま脳天を床に打ちつけるつもりだ。

「そうはさせない!」

 が、麗羅はその身を無数の蝙蝠に変えレベッカの腕の中から脱出。そしてレベッカの後ろに回り込んで合体し、再び姿を現した。

「後ろデスか!?」

 振り返ったその瞬間、鞭に打たれたレベッカは床に叩きつけられる。

「こ、これはマズいデース!」

 ダウンしたレベッカに、上空から突撃してくる蝙蝠の大群。猛攻撃を喰らって吹っ飛ぶレベッカであったが、咄嗟に空中ジャンプで上空へと切り返す。

「ここからが大逆転デ……」

 が、その動きは読まれていた。そこを狙って放たれた鞭の一撃により、あえなく変身解除。

「勝者、小鳥遊麗羅!」

「オーノー……完全に持ってかれたデース……」

 会場の空気が麗羅一色に染まり、アイドルの圧倒的なパフォーマンス力を見せ付けられた。


 第七試合は、熱い炎と熱い温泉のバトルである。

「炎のカンフーマスター、真田玲!」

「玲さん、頑張ってー!」

 既に自分の試合に勝利した寿々菜からの声援を受けて、玲はきりっとした表情を崩さぬままそちらに顔を向けた。

「熱々温泉ガール、湯乃花雫!」

「うちの温泉のために、勝つからね!」

 試合開始早々、雫は温泉を噴出させ大量の熱湯で攻撃。玲は握った両手の拳に炎を纏わせて構えていたが、観客達にはこの程度の魔力でこれを防ぎきれるとは到底思えなかった。

 だが玲は熱湯をしっかりと見切り、そよ風の如き動作で避けながら雫本体へと接近。炎のパンチを打ち込み先制攻撃を決める。

 魔法少女が十歳から十五歳の女性に限定されているのは、それが人間に魔力を与える上で最も適しているからである。言うなれば「両方付いている」身体である玲は、それ故に他の魔法少女よりも魔力量では劣っている。だがその格差を格闘の技術で補うのが、玲の戦い方なのである。

「っ……なかなかやるじゃない!」

 次に雫が放ったのは、熱湯の水流を操り大容量で叩きつける攻撃だ。玲が魔力を節約するような戦い方をしていると見るや、雫は大技で攻め立てる。

 だが玲はあえて炎を熱湯にぶつけ、白い湯気でステージ上を包み込んだ。

「え!?」

 玲の姿を見失った雫は、動揺しながら真っ白な空間をキョロキョロと見回す。次の瞬間、炎を纏ったキックを喰らって結界に叩きつけられた。

 そこからは、一方的な試合展開であった。

「勝者、真田玲!」

「あんたは強かったよ。この試合を糧にして俺はもっと上に行く」


 ここまで七試合が終わり、次はいよいよラスト一戦。出場する智恵理は、緊張を解こうと深呼吸した。

(ヤバい……いかにも強い方が勝つばかりだし、あたしみたいな中途半端な実力の子は案の定完敗してるし。どうすんのこれ)

 そう思いながらもステージに上がると、対戦相手は完全にこちらを舐め腐った高笑いをしていた。

「オーッホッホッホ! わたくしの金の力で瞬殺してさしあげますわ!」

「うっさい痴女! 乳丸出しで恥ずかしくないわけ!?」

 珠子の衣装は下半身はゴージャスな装飾が散りばめられたロング丈のドレススカートだが、上半身は胸に一枚ずつ紙幣を貼り付けただけという変態仕様である。

「オーッホッホッホ! わたくしの巨乳が羨ましいんですの? そんな貧相な胸ですもんねぇー!」

「ぶっ殺す!」

 しょっぱなから煽られて、不安よりも怒りが勝る。あっという間にやる気が出た智恵理は、杖を握る手に力が籠った。

「ゴージャスクイーン、黄金珠子! 不屈のマジカルスター、鈴村智恵理! それでは……試合開始!」

「えーい! 喰らえーっ!」

 杖の先端から星型の魔法弾を発射し、珠子を狙い撃つ。対する珠子は、大量の紙幣を竜巻のように飛ばす。単発の魔法弾では大量の紙幣を相殺しきれず、それが智恵理の方に飛んできた。

「だーっ! あたしだって決勝トーナメントまで来たんだ! あたしだって強いんだーっ!」

 己を鼓舞するように叫びながら大型の魔法弾をぶちかまし、残りの紙幣も纏めて焼き払う。そして再び杖の先端に魔力を溜めながら、珠子へと駆け出した。

 大量の札束を盾にした珠子であったが、魔法弾を纏った杖での打撃はそれをもぶち抜く。吹っ飛んだ珠子に、智恵理は追撃の魔法弾を撃とうとする。

「そうはさせませんことよ!」

 その途端、智恵理の目に紙幣が貼り付いた。

「これぞ金に目が眩むですわ!」

 相手の視界を封じる、珠子の得意技だ。

「さあ、これで後は一方的に甚振るだけですわ!」

 意気揚々と次の攻撃に出ようとする珠子であったが、智恵理の方を見た途端に愕然。

「目が見えないんなら、こうするまでよ!」

 智恵理が頭上に掲げた杖から上空に向けて発射された巨大な星型魔法弾は破裂して拡散し、流星群の如くステージ上に降り注ぐ。智恵理自身をも巻き込んだ、ステージ全土への絨毯爆撃。どこにいるかわからない珠子にきっちりダメージを与えつつ、自身のHPを多少犠牲にしても視界を塞ぐ紙幣を焼いて取り除いたのである。

「まさか! わたくしが負けっ……!」

 珠子がそう思ったのも束の間、視界が戻った智恵理の連射する魔法弾が眼前に迫っていた。変身解除させられてバリアに包まれた珠子は、信じられないとでも言いたげな表情であった。

「勝者、鈴村智恵理!」

「や、やったー!」

 両の拳を天に掲げ、盛大に勝利を喜ぶ智恵理。


(おめでとう智恵理。貴方がちゃんと強いこと、私は知ってたよ)

 親友の勝利に、梓も微笑む。智恵理の特訓する姿を、梓はちゃんと見ていた。本戦では初見殺しに負けて以降たまたま出番が無かっただけで、決して彼女は弱い魔法少女ではないのだ。


「やったカニー! 智恵理が勝ったカニー!」

 システムルームでハラハラしながら見守っていたカニミソも、智恵理の勝利を喜ぶあまり大人気なく大声を上げていた。

「カニミソうるさい的な」

「だって俺の担当する魔法少女が勝ったんカニよ! 嬉しくて当然カニ! この喜びをホーレンソーにも伝えたいカニ!」

 本日ホーレンソーはどういうわけか欠席である。

「ホーレンソー、カクテルから何か仕事頼まれてるそうカニが……三日月さんの勝つ姿を見られなかったのは口惜しいだろうカニな……」

「あいつら仲悪いと思ってた的なのに、カクテルがホーレンソーに仕事頼むのもホーレンソーがそれを受諾するのもなーんかヘン的な」

「それでいてカニミソの野郎は陛下に付きっきりか……」

 ハンバーグがそう言うと、ムニエルは俯き目を瞑った。



 決勝トーナメント一回戦の全八試合が終わったことで、次は各試合の勝者八名がステージ上に顔を揃えていた。

 三日月梓、白藤花梨、美空寿々菜、古竜恋々愛、悠木小梅、小鳥遊麗羅、真田玲、鈴村智恵理。いずれもここまで勝ち上がるに値する実力者ばかりだ。

 この面子をざっと眺めて、梓は思う。

(次の試合の組み合わせは明日抽選されるそうだけど……また智恵理と対戦することになる可能性もあるのよね)

 予選の際には思わぬ偶然に助けられ、決着がつくことなく終わった梓と智恵理の対戦カード。再び親友同士で戦うことは、できれば避けたいのが心情であった。




 魔法少女達をホテルに転送した後、妖精騎士団は騎士団会議室に集められていた。

 そこには先程の大会中姿を消していたホーレンソーの姿も。

「あ、ホーレンソー。頼まれていた仕事は終わったのカニ?」

 カニミソが尋ねても、ホーレンソーは返事どころか振り向きもしない。虚ろな目をしたまま椅子に腰掛け、人形のようにピクリとも動かず正面を見つめていた。

「おーい、ホーレンソー?」

 カニミソが目の前で手を振っても、反応は無い。

「一体どうしたカニ!? 何か魔法にかけられたのカニ!?」

「仕事中で出られないホーレンソーの代わりにそっくりの人形でも置いたんじゃない的な?」

「それに何の意味があるカニ!?」

「それにしてもこのタイミングで緊急会議だなんて、陛下は一体何を考えているのでしょうね」

「何にせよ陛下の命令ならば従うのみぜよ」

「本当この堅物はそればっか的なー」

 ザルソバが尋ねるとミソシルが答え、ポタージュが茶化す。

「ムニエル様、先程から体調が優れない御様子ですが……」

「心配はいらぬ。いや……父上の前でみっともない姿は見せられぬな。指摘してくれて感謝する」

 ハンバーグから心配されたムニエルは、背筋をピンと伸ばし無理して険しい表情を作ってみせた。

 だがそうしていると、会議室内に転移の魔法陣が出現。そしてその中から、仮面の男が姿を現したのである。

「諸君、よくぞ集まってくれた」

 この世の全てを治めし王、妖精王オーデン。騎士達は揃って跪いた。そしてその後から、騎士カクテルこと大賢者ガリも同じ魔法陣から姿を現したのである。

「どうやら全員揃っているようですね」

 さながら自身も跪かれる対象であるような形になるタイミングを見計らったかように現れたことで、ミソシルが顔を顰めた。

(あやつは何様のつもりぜよ)

 それに愉悦を感じているが如く、ガリはにやけ面を浮かべる。

「さて陛下からの大事なお話です。皆さん席につきましょうか」

 勝手に仕切りだすガリに騎士団の面々は不信感を抱くが、オーデンの手前渋々従う。

「さて諸君、単刀直入に言おう」

 全員が席についたところでオーデンが話し始める。仮面の奥の表情は窺い知れないが、その声色にはどこか高揚している様子を感じさせた。

「これより我々は――人間界に侵攻する」


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