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小説家になろう的○○

小説家になろう的 内政チート

作者: 丼 かわず

「私は神だ。一郎よ、そなたには異世界に行ってもらいたい」


「は?」


 突然俺を異世界に召喚しようとした神様の発言に、俺は唯々困惑を隠せなかった。




~小説家になろう的 内政チート~




 俺の名は山田一郎、大学生だ。

 文学部で中国古代史を専攻しており、戦国策に関してならそこそこの知識はあると自負している。


 それで、あくる日学食で安くて不味いうどんを食っていたら、突然召喚されて冒頭に至る。


「えっと、すみません、状況が読めないんですが……」


「実は、異世界のとある国で勇者召喚の儀式が行われておってな。ついては無作為に人類60億人の中から、そなたが見事選ばれたというわけだ」


「は、はぁ……」


 怪しい。怪しさがプンプン臭ってくる。

 言うなれば、家電屋さんの抽選で衛星放送の機材が当たったから衛星放送加入しませんか? と言ってくるくらい怪しい。


 だがしかし、異世界召喚といえば俺には一つ夢がある。


「異世界召喚ってことは、外交チート来たぜ……」


 そう、中国の戦国策といえば諸子百家、あらゆる知恵者たちが知恵を絞りあった時代である。

 俺はその中でも蘇秦・張儀に代表される弁舌によって各国の外交を取り繕う『縦横家』が大好きなのだ。

 願わくば、自身のこの知識を活かして外交チートをしてみたいのである。


「いや、申し訳ないが外交チートは無理だ」


「はぁ!?」


 即答で断られた。しかもこの自称神様、言葉と違ってちっとも申し訳ない顔をしてない。

 蕎麦屋でどや顔で「カレー」と頼んで「うちにはありません」と言ってきたバイトの店員のような、「何言ってんだコイツ」って顔をしてやがる。


「異世界は中世ヨーロッパに似た世界なので、外交は貴族でなければ無理だ。そもそも魔王と対立しているせいで人間は全員連合を組んでいるから、外交の必要性もあまりない」


「いやいや、でも魔王討伐後の事後処理とか、そういうところで外交力が発揮されるんじゃ?」


「いやね、一郎君。考えてもみなよ。魔王討伐した後で、勇者をそのまま外交官にするわけがないだろ? 普通だったら日本に送り返されるか、暗殺されるかだよ」


 さらっと恐ろしいこと言いやがったぞ、こいつ。というか口調が適当になってきてるぞ。

 なんてこった、俺の夢は打ち砕かれたというのか。いや、まだ諦め切れない。


「いやでも、自分で国を興したりすれば……」


「しつこいね、一郎君。ぶっちゃけて言うけど、特に召喚されたからって特別な力持たないから。そもそも魔王だって君じゃ倒せないんじゃないかな?」


「え!? じゃあ人類負けるじゃないか!」


「いやいや、魔王と言っても無敵とかじゃないからね。体に爆弾でも括り付けて突撃すれば倒せるくらいチョロイもんよ」


 あまりにもおっかないこと言い出したぞ、自称神様。


「じゃあ俺は自爆テロ要員ってことかよ!」


「まぁ、普通に考えたらそうだね。だから、君の価値を見せる必要がある」


「どうやるってんだよ!?」


「ふっふっふ、こんなときの『内政チート』さ!」


「内政チート……?」


 内政チート、皆さん一度は聞いたことがあるだろう。


 異世界転生なり召喚された者が、自分の知識を活かしてノーフォーク農法や灌漑、農機具を開発したりして食糧事情改善したり、船やら作ったり、道整備したり、度量衡制定したり、とにかく内政をどんどん良くしていくという、アレである。


「そう、内政チートさえあれば、国の中でも重宝される存在となるだろう。そうすれば特攻兵にならずともドンドン昇格し、ハーレムだって夢じゃないぞ」


 自称神様がハーレムとか言い出した。たしかに男にとってハーレムは夢である。


「日本でも、かつては『三年寝太郎』という灌漑知識チートや『伊能忠敬』というマッピングチート、それに『太田道灌』とかいう築城チートが居たけど、ああいう感じでパパッとやっちゃえば楽勝だよ」


 一応断っておくが、彼らはチートでは無い、と思う。おそらく、努力して結果を生んでいるのだ。

 それに、そもそもの問題がある。


「申し訳ないんだけど、俺内政チートするほどの知識が無いんだけど」


「なんと!?」


 そう、俺は普通の大学生なのである。

 ノーフォーク農業の方法なんて知らないし、灌漑だってどうやってるのか知らない。


「う、うむぅ……それは困ったな、天界からこっそり覗いて楽しむ予定だったのに……」


 聞き捨てならない呟きをしてやがる。


「あ、そうだ! ジャガイモあげるよ、ジャガイモ! これで内政チートでき……」


「無理。ジャガイモって結構繊細らしいし、それに連絡障害だって起きやすいんでしょ。素人には無理だよ。せめてサツマイモにしてよ」


「でも、前に読んだヤツではジャガイモだったんだが……」


 果たして何を読んでいるというのか。ふて腐れた顔でこっちを見るが、俺にどうしろと言うのか。


「とにかく、俺には内政チートなんて無理なんで、やっぱり異世界召喚お断りします」


「うぐぐ、仕方がない。特別にこれを持っていくことを許そう」


 苦々しい顔をしたかと思うと、自称神様は召喚陣のようなものを繰り出す。

 すると、召喚陣から現れたのは一人の老人であった。


「あ、あの、このおじいさんいったい……?」


「ふっふっふ、この者は田吾作と言ってな。牧場経営の傍ら、ジャガイモ農家歴40年の達人よ! 更に、戦時中の経験から灌漑、治水、あらゆる知識を持ち合わせているエキスパートでもあるのだ! どうだ、田吾作の助言さえあれば、無能な一郎君でも内政チート出来るだろう! フワッハッハッハ!!」


 なんということでしょう。

 鉄腕ダッ○ュでいうところの、あきおさん的な人なのか、田吾作さん。

 というかもう自称神様がキャラ崩壊しすぎて魔王みたいな笑い方になっちゃってる。

 たしかに、田吾作さんさえ居れば内政チートも夢じゃないかもしれない。




 でも、一言だけ言わせてほしい。






「それ、田吾作さんだけ召喚すれば良いですよね?」



「……あ」







かくして、俺は召喚されることなく再び学食に戻ることが出来た。

光と共に消えて、光とともに現れた俺は一時的に「三代目引田天功」なんていう不名誉なあだ名をつけられたりもしたが、それ以外は平穏に暮らしている。


召喚された翌日、夢の中に現れた自称神様から魔王が無事倒された旨の報告を受けた。

田吾作さんは無事内政チートによって国の重鎮として採用されたらしい。齢80にして美女たちに囲まれてハーレム生活を送っているとかニヤニヤしながら報告されたので、塩振って念仏唱えておいた。


きっと、二度と俺には召喚なんてあり得ないんだろうと思っている。こういうのは割り切りが大事なのだ。平々凡々な人生を楽しく生きてやろうではないか。

ちなみに、こっそり家庭菜園で野菜を育て始めたのは、別に内政チートが羨ましかったからではない。ないったらないのである。


サツマイモ、美味しいよね。




前作のテーマは『勇者召喚』

今回のテーマは『内政チート』でした。

次回のテーマは『詠唱破棄』で来週末あたりの投稿予定。


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