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ゆめうつつ  作者: 椛餅
第1章「魔法王国戦線」
6/7

媚薬バースト



 相手の能力が未知数な上。魔術師との交戦経験もない。戦うべきか迷っていた所に、小さな無数の氷の礫が飛んでくる。相手は、氷を使う魔術師のようだ。

「ちぃッ!」

 避けた先で、慌てて『紫電』を抜刀。相手に斬りかかる。

「えっ?」

 斬ろうとした時には、振り抜いていた。そこに文字通り『紫電』が散る。自分でも意識しない『神速』の斬撃。それに当てられた相手は、

避けることもできず斬られていた。

 まだ、慣れてないためか、斬りこみは浅くなってしまったが手応えはあった。


「・・・・危ないわね」

 女は斬られたと言うのに平然とし、傷口を氷で覆った。数秒もせず、傷口を覆っていた氷は霧散する。


「へぇ、それが噂の治癒魔法ってやつか・・・・」

 聞いたことがある。魔術師の恐ろしさは、その治癒魔法によるしぶとさだと。『魔甲機国』に少ししかいない癒合師が、戦っているとでも言うべきか。


「そっちこそ、圧倒的と呼ばれる『魔甲機国』の神器を持ってるじゃない」

 神器?ああ、『紫電』のことか。確か、クレバーが軍秘蔵の神器とか言ってたっけ?

「でも、神器持ちを殺せば、私は2階級特進で尉官になれるわ」

「そうかい、なら俺は全力で抵抗させてもらう」


 再び肉薄しようとするが、敵も馬鹿じゃない。こちらが近づけないように氷の礫で牽制してくる。が、

「今度こそ、役に立つんだ・・・・!」

 クレアが正確な銃撃で、敵の牽制を牽制で返す。


「うざったい!」

 それに対して、魔術師は氷の壁を盾にし身を守る。

「そんな、魔法モドキの魔銃オモチャで私を倒せるとッ!!」

 クレアも魔弾では、壁を貫通できないと悟り、銃撃を止める。氷の壁は魔術師の周囲を半球を被せたように囲っている。


「魔弾で壊せないなら!」

 『紫電』は紫の雷光を散らし、あっさりと壁を切り倒す。

「・・・・かかったなッ!」

 その先には、矢尻の形をした巨大な氷が───


「くっ・・・・!」

 氷が腹に刺さる直前に、『紫電』の細身の刀身で止めようとするも受けきれず。氷は右の脇腹に抜けてゆく。

 腹を少し持っていかれ、言いようもない激痛に涙がにじんだ。


 媚薬をケチらずに使えばよかったと、今更後悔する。そこに、

「クレイ。お願い、どいて!」

 クレアの声。普段聞きなれないクレアの『お願い』に思わず横に逃げる。


『バースト!』

 クレアのその言葉の直後、銃のモノとは思えない落雷のような音が響く。小柄なクレアは反動のせいか、後ろへ吹き飛んだ。そして、撃たれた魔術師は───


「マジかよ・・・・」

 残っていた氷の壁ごと体が吹き飛び、人の形を成していないその死体に、戦慄が走る。

 今のは魔銃使いの中でも、魔力操作が卓越な者のみ使えるという技だろう。初めて見たが、恐ろしい。


「すごいな・・・・」

「あ、さっきの痴漢魔」

「黙れ」

 イケメンもこれを見て、血の気が引いたような顔をしている。

「できれば、生け捕りが良かったんだが・・・・まあ、いい。コイツについては、俺が報告する」


 イケメンはそういうと通信機で、死体の処理を頼むような内容を伝えていた。


「お前ら軍人だよな?報告に使う。名前と所属を教えてくれ」

「ああ、俺らは南方第2基地(サウスII)のクレイとクレアだ。部隊名は言えない」

 クレバーが表向きには他の隊に入れてあると言ってたし、特殊部隊とは言えないだろう。イケメンも怪訝そうにしたが「わかった」と言ってくれた。


「後処理は俺達がする。腹の傷を治したいだろ?癒合師を呼んだから、少し待っていてくれ」

「ああ」


 任務(休暇)は一週間。初っ端から、戦闘があったし癒合師に治してもらったら、ホテルでも探すか。

「クレア・・・・」

 クレアは壁に寄りかかり、アサルトライフルを抱えて体操座り。実にかわいいが、顔は浮かなかった。

「・・・・初め て、人を殺して……」

「そうか・・・・なあ、後悔してるか?」

 クレアは頭を横に降る。

「隊長を助けられたから・・・・いい」

 ああ、泣けるねぇ。そう言ってもらって嬉しいよ。

「なら、ありがとな」

 それだけ言って、クレアの頭をわしゃわしゃと撫でる。体操座りにより、スカートの無い軍服のガーター付きパンツが丸見えで、興奮してたことは秘密な。


 程なく、癒合師が到着し、傷を治してもらい。その場を後にした。



***



「すみません・・・・未成年の入店はお断りしておりまして………」

 未成年──17歳未満はだめか。だが、

「あー。俺達、17歳ですよ?」

 軍の個人証明書を、俺とクレアの分を提示すると「まあ・・・・」と言いながらも、通してくれた。


 俺達は今、ラブホにいる。








 いやいや、勘違いしないで欲しい。

 仮にもこの辺りは、観光スポット。予約無しだと、ラブホ(ここ)しか無かったのだ。断じてやましいことなどない。


 クレアと部屋こそ同じだが、これはクレアの意志だ。2つ部屋を取ろうとしたら、クレアが震えたのだ。初めて人を殺したし、今夜は独りでいたくないのだろう。


 部屋は幸い、落ち着いた感じの部屋で、ちょっと夜のムード的な演出ではあるが、変なプレイの部屋よりマシだろう。

 当然のように、ベッドはひとつしかないが、これにはもう慣れている。毎日クレアに抱きついて、安眠を得ている俺にとっては、へでもないね!


「ところで、クレアさん。なに、飲んでんですか?」

 背中を見せているため、何を飲んでいるのかはわからんが、ゴクゴクと喉に何かが通る音がクレアから聞こえる。もちろん、飲み物を買った覚えはない。


「ん~? クレイの上着に入ってたピンク色の桃ジュース・・・・だよ?」

「ファッ!?」

 く、クレアさんそれ、媚薬だから!!

 床にはカラになった、媚薬の試験管が2~3本転がっていた。


「おいしぃよ?」

 そういや、購買のとっつぁんが「今回のは、いつもと違う魔法かけた、理性をぶっちぎるヤバイやつだぜ!? 何本飲んでもいいが、女に飲ませりゃ誰でも股を開くってもんさ!!」とか、言ってたっけ?


「あのー、クレアさん。なんで、俺を見つめてるんです?」

「・・・・おいしぃから、おすそ分け」

 何のことかと思っていると、口を塞がれた。

「むぐっ!?」

 クレアの唇で。

 クレアのキスは甘かった。比喩でなく、媚薬の桃味だ。唾液を口に押し込まれているのだとすぐわかる。舌が、自然とクレアの口に吸い込まれそうに・・・・。


「ストォッブ!!」

 少し『狂化』した力で、クレアを引きはがす。

「クレアは媚薬のせいで、俺のことを好きだと勘違いしてるんだ! やめてくれっ!!」

 そう言うと、クレアの目に涙が浮かぶ。それは、俺が初めて見たクレアの涙だった。


「クレイは、私をこと・・・・嫌い?」

「いや、好きだけどっ・・・・」


 俺はバカだから、クレアみたいな可愛い女の子とヤれるなら、本望なのかもしれない。だが、クレアの偽物の『好き』の上で、ヤリたいとは思わない。いや、ヤリたいけど・・・・。


「私は、クレイのこと好き。会った日から・・・・」

 クレアはそこまで言うと、力が抜けたようにバタりと倒れた。

「クレア!?」

 そこで、購買のとっつぁんの言ってたことを思い出す。「でも、欠点があってなぁ。催淫効果以外にも、催眠効果もあってな飲みすぎると、眠っちまうんだ」だったか。それを物語るかのように、クレアの顔は少し赤いながらも、気持ちよさそうな寝顔だ。

 媚薬の入っていたパッケージを見ても、眠くなると説明があった。ひとまず、ホットする。


「クレイ・・・・」

「えぁ?」

 クレアが寝言か、どうかもわからないような声で言う。

「惚れ直した・・・・よ」

 俺は、クレアとヤらなかったことを、つくづく後悔した。

 この夜。俺がムンムンとして、寝れなかったことは言うまでもない。



神器について(飛ばしてもいいです)


魔法と科学。その両方が中途半端に組み合わさった『魔甲機国』が何故、戦争に負けないのか。それは、兵の多さと地形、それに加えて神器の存在もあります。


首都にある巨塔──遠距離射撃装置グングニル。巨塔にはグングニルを初めとした多くの神器(ただし、グングニルが神器と知る者は少ない)が貯蔵されています。


神器の総数は、およそ100あまり。ある程度の階級(ほとんどが佐官以上)と実績等があれば、与えられる場合があります。


神器も格付けがあり、最上位には『グングニル』や『紫電』等の「神殺し」の称号のある神器が含まれます。(「神殺し」は称号であって、ホントに殺したわけではありません)

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