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ゆめうつつ  作者: 椛餅
序章「ゆめうつつ」
3/7

初陣

今回は添削等をしてないので、いつも以上に誤字脱字があるかもですm(_ _)m





 既に戦闘は始まっていた。


 戦場から生くさい鉄の香りが風に運ばれてくる。

 死者が多く出ているのだ。


 場所は違えど、環境は前回と同じ旧市街地だ。

 この旧市街地は軍により、様々な対侵攻の改造──罠や地下通路が作られ、作戦を多様化させている。要は、砦なのだ。ここは。


 そのように、地理的有利・数の有利というアドバンテージを有している我らが『魔甲機国』の軍はそれでも劣勢に立たされていた。


 敵のパワードスーツは硬く、そして重火器を装備しているため火力も高い。接近戦ともなれば、その圧倒的な力でねじ伏せられる。

 それが、10名ほどの束でやってくるのだ。聞くだけでも、恐ろしい。


「さて、どうします先輩?」

「どうもこうも、なあ・・・・」

 頼られるのは嬉しいが、それに応えてやれない。せめて、1体1(サシ)ならどうにかなるかもしれないが、相手もそれを警戒してか常に束で動くのだ。


「1人ずつやれば、いいと思います」

 クレアがアサルトライフルを重そうに、背負いながら言う。下ろせばいいのに・・・・

「でも、1人を誘い込もうとしても・・・・」

「クレイさんには、必殺の一撃があると聞きました。私達が陽動を行い、クレイさんが注意のそれた敵を討って離脱するんです」

「・・・・すごいな」

 クレアの幼い見た目に惑わされてはいけない。彼女は父親から「賢さ」を受け継いでいる。


「だが、大丈夫か? 陽動となるとお前達が危険に・・・・」

「何言ってんすか。先輩は私達の隊長ですが、保護者じゃないんすよ」

 クレアもユウナと同じ意見らしい。止めても無駄だな・・・・。


「わかった・・・・死ぬんじゃないぞ」

 俺達は戦線へと向かった。



***



 先程までよりも血の臭いが強い。激戦区に入ったのだ。


 建物の屋上から、双眼鏡で敵を視認する。

 敵は伝達の通り、パワードスーツ着用者が10人1組と言った編成の小隊だ。パワードスーツを着ていない残りの数千名は、後ろで控えているらしい。


 パワードスーツを改めて見ると、やはりゴツい。2m程ある白い巨体のひとつひとつのパーツは大きく、決してスマートとは言い難い。

 手には、ミニガンのようなもの。肩には大きな砲が担がれている。対人にしては、明らかにオーバーキルだ。


 俺は今、敵が通っている通りの脇の建物の屋上にスタンバイしている。

 陽動係のユウナとクレアは、敵の進行方向先のT字路で時を待っていた。


 ──が、


「な、なんだあれは!?」

 俺はそいつを視認した時、冷や汗を浮かべた。

 報告の通り、確かに敵は10人1組だった。が、その後ろにもう1人。明らかに別格がいた。


 周りよりも、更に大きい3mほどある巨体。装甲は白くなく、黒い。その見た目は騎士の鎧のようで、重火器の類は装備してないように見える。しかし、その代わりと言わんばかりに、手には巨剣が握られていた。


 その目立つ姿が何故報告されなかったのか、それはすぐに理解出来た。報告をしようと、一瞬通信機に目をやったスキにそいつは消えていたのだ。


「イレギュラーを補足した! 逃げろっ、作戦は中止だッ!!」

 気狂いしたと思われても仕方ない冷静でない命令。果たしてアイツらは聞いてくれるだろうか。

『先輩! 後ろです!!』








───後ろを振り返った時には、俺の意識は途絶えていた。









***



「・・・・痛ッてぇ」

 後頭部が痛い。

 ああ、そうか。俺は風呂で足を滑らせて頭を打ったんだ・・・・。


 倒れていた俺の隣には、忌々しい石鹸が落ちていた。


 のどが痛い。


 暖かな春とはいえ、全裸で体を濡らしていれば風を引く。学校の制服を着て、時計を見てみると、既に昼だった。


「今日は休むかな・・・・」

 あれだけ強く頭を打ったのだ。大事を取ってもいいだろう。何より疲れたのだ。


「あれ、なんで疲れてんだ?」

 そういえば、気絶した間も夢を見ていたな。

 どんな夢だっけ? 確か最後に黒騎士が・・・・。


「・・・・助けないと」

 誰をだっけ?


 わからないが、胸には得体の知れない悲壮感。


 衝動的に口に出した。


「死ねば、あっちに行ける・・・・」


 何を言ってるのだろうと、自分でも思う。だが、俺はベランダに出て柵を越え、飛び降りた。


 地上一階のベランダから、落差約2mの地面へと───




***




「・・・・あれを食らって生きてるか」

 俺は瓦礫の上にいた。屋上まで高速移動した黒騎士が俺を屋上ごと吹き飛ばしたのだろう。

「頑丈にできてるんでね」

 体の節々が痛い。が、軽口を叩ける余裕はあった。


 奥のT字路には、ユウナやクレアの姿はない。逃げたのかと思ったが違った。

 ふたりは何故か、パワードスーツ共の所にいた。

「馬鹿が・・・・」

 と、黒騎士から気を逸らしていると、騎士の方から斬撃が来る。


 間一髪で横に避け風を薙ぐ音が、耳を扇ぐ。

「お前と戦っているのは私だ。次は当てるぞ?」

 黒騎士は巨剣の切っ先を、俺の方に向けそう宣言する。

「・・・・怖いねぇ」

 俺は軍刀を抜いた。

 そして、もうひとつ軍服の胸ポケットから金属のケースを取り出し、中から試験管を取り出す。コルクで栓のされた試験管の中には桃色の液体が入っている。

 良かった、割れていない。

「それはなんだ?」

 黒騎士が怪訝そうな声音で問う。

「なに、ただの媚薬さ・・・・」

 俺は媚薬を飲み干した。







 俺には、クレバーが持っているような、特殊能力があった。

 と、言っても特殊能力自体は、この世界の皆もっているものだ。しかし、その能力の99%以上が『魔力操作』と言う能力。言わば、『魔法を使う能力』だった。



 人が先天的に持つ特殊能力はひとつ。故に俺やクレバー。『魔力操作』以外の能力を持つものは、生まれながらにして魔法を使うどころか、魔力の感知すらできない。

 後天的に、ある拍子でもう一つ特殊能力を得る者もいるが、それ例は稀だ。


 俺は魔法が使えない。魔法による身体能力向上も実はできない。だが、俺はそれでも戦える。そんな俺の特殊能力は───




「狂化…」

 魔法によって速効性の増された媚薬はすぐに俺の体を刺激した。

「戦闘中に媚薬とは・・・・正気か?」

 流石の黒騎士さんも、呆気に取られたようだ。


 俺の特殊能力『狂化』は、激情によって戦闘能力を上げる能力だ。戦闘能力は『身体能力・判断力・洞察力・五感強化・第六感の覚醒』を総合的にはね上げる。それは、身体能力1点においても、魔法よる身体能力向上と比較にならないほど高い。

 言わば、人を超えているのだ。


 トリガーは『激情』。『憤怒』にかられるバーサーカーにも似ているだろう。

 『激情』は激しい感情。それが、性的興奮であっても差支えはないのだ。つまり、媚薬は俺を強くさせる薬にもなるわけだ。


「ふーん。お前、女だったのか。声が低く聞こえるのは、鎧のせいか?」

 俺の言葉を聞いて黒騎士がたじろぐ。

「何故わかった」とでもいいそうなので、答えると。『性的興奮』がトリガーになると『狂化』は子孫を残そうという方に働く。♂♀の区別など楽勝だ。


「さて、本気で行かせてもらうぞ・・・・」

 前回これを使ったのは、前にパワードスーツが来た時だ。多分あのあと、ユウナに後頭部を殴られたのは、ユウナに無理矢理ヤろうとしたせいかもしれない。覚えてないけど・・・・。

 もしかしたら、戦いの後に黒騎士さんの鎧を引っぺがして、襲いかかるかもしれない。その時は、その時だ。


 挨拶にと、俺が黒騎士に切りかかると綺麗に流された。でかい割には、丁寧かつ敏捷な動きだ。その上、鎧も切断できないこともないだろうが、前にパワードスーツ切った時に刀身にヒビが入っており、無理に切ろうとすれば、軍刀がお陀仏だろう。


 鎧の関節部から刃を通そうにも、それを見越してか徹底的に弱点を死守してくる。むしろ、俺の攻撃を弱点へ誘導して反撃カウンターを仕掛けてきたりもするのだ。


 このまま敵の攻撃を受けてたら軍刀が折れるし、ここは軍刀を折る覚悟で切りつけるか・・・・。

 敵と俺の身長差の問題上、脇腹からとなるが渾身の袈裟斬りをかま──

「は?」

 ──すことはできなかった。


 目の前から、突然あの巨体が消えたのだ。

──まさかッ!?

 そのまさかで、後ろに振り向くと巨体が剣を振り上げていた。

「・・・・チッ」

 黒騎士の舌打ちが響く。俺は小柄な身体に救われ、ギリギリでしゃがむことで、命を繋ぎ止めた。

 空を切ることとなった斬撃は、瓦礫の山を砕き更に細かくする。防御力の上がっている俺でも、当たればひとたまりもない。


 にしても、なんだったのだアレは? 目の前から突然消えた。いや、屋上で攻撃にあった時も同じだったじゃないか………となると、瞬間移動か。厄介だな。


 軍刀の消耗上の問題もあり、敵の巨剣を軍刀で受けることは出来ず。とはいえ、必殺の一撃を狙わなければならない。

 必然的に防戦一方となる俺。

 俺のスタミナは十分だし、このまま持久戦に持ち込むか? いや、ユウナやクレアが心配だし、出来るだけ早く仕留めたい。

 焦っているわけではないが、俺は一瞬迷った。

 その瞬間。黒騎士の斬撃がそれまで以上に加速する。下の瓦礫ごと抉る斬り上げ。


──避けれないか……。


 避けれないのであれば、とる行動はひとつ。

 俺は下からの斬撃に軍刀を叩きつける。案の定、軍刀の刀身は粉々に、上下の力の反作用により、俺の体は上へと飛ばされた。


 上昇を終えた俺の体は一瞬の浮遊感を覚え、直後落下に転ずる。

 下では、黒騎士が巨剣を腰に引き左手を添えて、切っ先をこちらへと向けていた。そこから出るのは、強く正確な突きだろう。


 俺は諦め、目を瞑る。


 が、俺の『性的興奮』はそれを許さなかった。


 タイミングぴったりに、突き出される巨剣。それに対し、未だ握られていた。刀身の根元だけ残った軍刀を突き出す。

 軍刀はその鍔と、刀身の根元を巨剣の刃を絡めるように這い。俺は、気づけば黒騎士の背中の上にいた。


 本能によるもとも言える神回避に、感謝しつつ。俺は目の前の騎士の兜(チャンス)をもぎり取った。

 そこで、黒騎士の体は力を失う。

 やはり、この鎧もパワードスーツの一種だったのかもしれない。安堵により気が抜けた。鎧の中をのぞき込むと


「ふぁっ!?」


 中から、剣の鋭い突きが飛び出す。鎧の中をのぞき込んでいた体を無理矢理後ろにそらせ、それを回避するも軍服の一部が割けた。

───主に胸ポケットが。


 裂けた胸ポケットから、金属のケースが落ちる。

 鎧の底に落ちたらしいケースは、ガシャンと、ガラスの割る音を立てた。


「あ、やっばい・・・・」


 鎧からは、体をくすぐるような甘い匂いが・・・・。死戦によって萎えたムスコも元気を取り戻す。ケースの中に残っていた残り数本の試験管が割れたのだ。気化しやすい媚薬は、空気中に溶け込んでいた。


「な、なんだこれは!?」

 鎧の中から、可愛い女の子の声が聞こえた。

 マズイ、声だけで欲情しそう・・・・逃げよっと。


 俺が鎧から離れると、鎧の中にいた女が出てきた。いや、女ではあるが女のなかでも美少女が出たのだ。

 やばい、見たら欲情しちまう。見るなっ俺!

 とは、心の中で言いつつも目は、バッチリその美少女を捉えていた。


 ユウナやクレアも可愛い。美少女だ。だが、こっちには大人の淑女になろうかという気品と、その中に女の強さが見られる。可愛いから、美しいへと変わる直前のようだ。

 キリリとした容姿に、金髪碧眼。長い髪はユウナのポニーより長いテールを作り出している。

 そして、何より。


──胸が大きかった・・・・。


 ぐぐぐッ・・・・欲情してはいけない。いくら、日常で豊乳を見ないからって・・・・。


 クレアが微。

 ユウナが掴み切れるくらい。だとすると。


 彼女は頑張らないと掴み切れないくらい、だろう。


 いやっ!俺は貧でも巨でも構わんのだ!! 胸に貧富なしぃ!!!!



「ケホッ、ケホ・・・・。なんだあの煙は?」

「媚薬が気化したものだ」

 直視しないよう。目を逸らしながら彼女の問に答える。彼女はもう戦うつもりはないのか、こちらに歩み寄りながら持っていた細剣を腰に刺した。


「私は投降する。が、これをどうにかしてくれないか? 体が熱くてしょうがないんだ・・・・」

 股をモジモジさせながら、彼女が言う。

 大丈夫。俺も熱いから。

「よく見れば、可愛い顔をしているじゃないか背もちっちゃいし・・・・」

 てか、身長高ッ!? 身長145cmの俺より高い女子って・・・・。クレア以外全員俺より高いけど・・・・。

 顎をクイッと上げられた俺は、少女のように「はっ、はい」と、キョドる。


 ああ。このまま身を任せてみよう。ごめんなさいお母さん。僕は名前も知らない人に純潔を奪われそうです。

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