ゴブリンの巣近くで薬草採取
「ギィ!」
「ギギ!」
「ギャッギャ!」
俺は今ゴブリンと戦闘をしている。まあゴブリンというと大体皆が想像している通り、全身緑で棍棒を振り回すという迷惑極まりない奴らである。
そいつらと何故戦闘しているかというと時間は少し遡り、森に入ったところでレミィが
「今日はゴブリンの巣近くにある薬草を取りに行くわ。」
と言ったので来てみれば、案の定巣の近くというだけあってゴブリンがうじゃうじゃいたからである。
「ほら勇、さっさと片付けてよ!早くしないと日が暮れるじゃない!」
レミィが文句をいってくる。
「はいはい、分かったよ。俺もそろそろ飽きてきたからそろそろ倒すよ!」
余裕があるように俺は言う。
なぜなら目の前のゴブリン達は傷だらけだというのに一方の勇はかすり傷すらないのだから...。
その後難なくゴブリンを倒した俺はレミィが黙々と薬草を採取しているのを見ていた。
「このハーブはポーションに使えそうね。あとこっちはあれとあれに...」
採取しているときや何かに集中しているときはレミィって普通に可愛いと思うんだけどな...。
怒ると恐いし、常に笑顔でいてくれないかな~?
といつも怒らせている身でありながら勝手に都合のいい想像をしている勇だった。
日が少し傾き夕方になろうとしていた頃
「よし!これだけあれば足りるわね!」
その横には薬草が一杯になった籠があった。
「流石にこれだけあると重そうだな。俺が持ってくよ。」
と言い持とうとすると
「良いわよ。あんたには護衛してもらわなくちゃならないんだし、このくらい私でも持てるわ!」
―何回同じことやってると思ってるの?―
言いながら籠を手に持つレミィ。
確かに軽々といった感じで持っている。
まあ良いかと思いながら
「じゃあ帰るか。」
と言うと
「ちょっと待って。何か聞こえない?何かがぶつかり合うような音」
とレミィが言うので耳を澄ましてみると
―キン!ガッ!シャッ!―
と確かに誰かが戦っているような音が聞こえる。
レミィの方を見ると
―行ってみよう―
と目で合図してきた。
俺も興味があったので行ってみることにした。
俺達二人がいたところから少し離れたところまで来ると、誰かが泊まっているのだろうキャンプがあった。
その裏、10メートル辺りのところからその音は上がっていた。
そこを見ると、本でしか見たことがないのでよくわからないがおそらく獣人であろう人が二人、剣を持ち打ち合っていた。
1人は猫だろうか?耳がピンとなっている。恐らく女性だろうが細剣を使っており、身のこなしも洗練されている。
もう1人はというとエルフだろうか?これも本で読んだだけなのだが長い耳がピンとなっているから多分そうだろう。こちらは長大な大剣を使用しているので男性だろう。前述に同じく動きが洗練されている。
2人は互いに剣を打ち合い、時折死角から打ち込むといった動きを繰り返している。
俺はその2人の動きを注意深く見ていた。
―あの2人の動き...只者じゃないな―
村の中だけとはいえ、それなりの実力を持っている勇がそんな評価を下すほど目の前の2人の動きは滑らかだった。
「勇どうする?」
そうレミィが聞いてくる。
それを半分ほど聞きながら、勇は2人の元へ歩いていく。
すると2人も気付いたのか剣を打ち合う手を止め、勇を見据えてきた。先に言葉を発したのは男の方だった。
「君、一体何の用だい?先程から見ていたようだが」
警戒も露に尋ねてきた。
すると、猫獣人の女性が
「もう、そんなに警戒しているとその子と後ろの娘に失礼よ?」
溜め息を吐きつつ、そう言った。
「そうは言っても最近は物騒だからな。」
「まったくもう。ごめんなさいね、ここ最近の旅では襲われることも少なくなかったから、少し敏感になっているの。」
と言いながら謝ってきた。
「いえ大丈夫です。それよりも貴方逹は...?」
「人に尋ねる時は自分から名乗るものだろうに。」
エルフ?が呟いた。
「本当にもう。私達は剣の旅をしている者よ。私は猫獣人のシャルン、この無愛想なのがエルフのアールブよ。よろしくね?」
紹介を受けている間に近くに来ていたレミィがそれに反応して自己紹介した。
「私の名前はレミィ、こっちは勇と言います。こちらこそよろしくお願いします。」
「まあ!最近の娘にしてはとても丁寧な挨拶ね。お姉さんレミィちゃんのこと気に入っちゃったかも~」
言い、すぐにレミィに抱きつくシャルン。レミィはというと突然の状況に戸惑っていた。
そこで俺は
「ところでお二人は剣の練習をなさっていたのですか?」
と気になっていた質問をした。
「そうだ。練習をしなければ腕がなまるからな。ところで勇と言ったか?お前剣を習っているな?」
アールブが答えると同時に質問してきた。
「はい、村の剣道場で習ってます。」
「やはりそうか。」
するとアールブは考える素振りをした。
それに気付いたシャルンが驚きながら
「アールブ、貴方まさか!?」
と言葉を発した。
「ああ、そのまさかだ。それに何より、
その方がお互いをよく知れる。」
「だからって..」
何を話しているのか分からない俺とレミィはただ成り行きを見守っていた。
「おい、勇!お前俺と一戦交えないか?」
と言ってきた。