勇の日常
「起きなさい勇!何時だと思ってるの!」
掛け声と共に被っていた毛布を剥ぎ取られた。
「んぅ~、良く寝たぁ~。お早う母さん 」
と毛布を剥ぎ取った張本人である母、鷹目瑠璃に挨拶する。
「まったくいつもいつも夜更かししてないで早く寝なさいな。その所為で寝坊するんだから。」
呆れている母に
「仕方ないだろ~。夜中にやってる悪の手先勇者対正義の魔王が面白いんだから。」
と勇は反論した。
ちなみに魔王が支配するこの世界は比較的魔族の割合が多いため、ある国では人間を奴隷として扱っているのだという。
俺が住んでいる村、涼河村は人間しかいないためそういったことはない。
そして気になっている人もいるかもしれないのでさっきの番組の説明をしよう。
悪の手先勇者対正義の魔王とは魔王が支配するこの世界においての娯楽のひとつである。なんでも正義の魔王と悪の手先である勇者の闘いの歴史を描いたアニメだという。このアニメに夢中になった俺は毎夜見続けている。
だって考えても見て欲しい、ヒーローは子供にとっては憧れである。今現在15歳の俺もその例に漏れずヒーローが大好きなのは道理だろう。
「だからって毎日のように夜中に起きて見なくても良いじゃない。」
録画も出来るんだからと呟いた。
この世界では魔王の力によって雷を電波に変換して各地の基地局に送電することによりテレビが見られるうえに録画機能も完備しているのでいくらでも録画出来る。
だがそれがなんだというのだろうか!
アニメ等は録画で良いという人もいるだろう。
だがしかしリアルタイムで見るから良いのではないか!
まあこれ以上は時間がないので省略しよう。
「まあ良いわ。さっさと顔洗っていらっしゃい?昼ご飯の用意も出来てるわよ?」
ん?昼ご飯?
「今何時?」
「もう1時半よ。いつまでも寝てるから。」
確かその時間には約束があったはず。それもとても大切な...
「あ~!こうしちゃいられない。早く準備してレミィのとこに行かなくちゃ!」
「レミィちゃんと何か約束してるの?」
母さんが質問してくるが答えている余裕などない。
「後で説明する!」
言ってすぐに一階に降り身支度を整え家を後にする。
中から母さんが何か言っているようだが気にせずに走る。
村は山奥に近いところにあり、自然豊かである。ここら辺の説明はまた後日に改めて。
必死に走っていると村外れの森が見えてくる。そこには既に人影があった。
その人影を良くみると淡い水色の髪に白いワンピース、150cm程の身長に小麦色の肌であることが分かる。
その人物の前に着いて呼吸を整えていると
「もう遅かったじゃない!毎度のこととはいえもっと早く来なさいよ!」
と仁王立ちして文句を言ってくるレミィがいるのだった。
勇は心なし小さくなって前を歩く少女の後ろに続く。
「本当にあんたっていつもいつも同じことばかり繰り返すわよね!」
と前を歩く少女、レミィは少し声を怒らせて言う。
「ごめんな、レミィ。急いでたんだが途中で困ってるお婆さんがいてーーー」
「勇、嘘はやめなさい。何年の付き合いだと思ってるの?
あんたが毎日夜中にアニメを見ているのは知ってるのよ?
部屋の明かりがついてるんだから。」
レミィが声を被せて言う。
「大体まだあんなの見てるぐらいなら読書や勉強をしてなさいよ!その方が自分のためにもなるんだから。」
「そんなこと言っても面白いんだからしょうがないじゃないか!」
俺は心からの言葉をレミィに伝えた。
「まったく、この件に関しては何を言っても無駄ね。
良いわ、それで本来の目的だけどあんた覚えてるでしょうね?」
「勿論。森に出掛けるからその間の護衛をすればいいんでしょ?」
俺はこの村にある剣道場で剣の修行をしていてある程度腕が立つ。それもこれもアニメを見て画面のなかで剣を持って闘う二人に憧れを持ったからだ。
「まさかアニメを見ただけで剣を習いたいとか言い出した時にはこいつもう駄目だと思ったけど、才能はあったのね。」
そう俺は剣道場に通うまで一度も剣に触れていないにも関わらず才能だけはあったのか、練習では割といい成果を出した。
そこからは何度も練習を繰り返し、ついには村では敵なしと言えるほどの腕になったのである。
「ま、何はともあれ今日は護衛よろしくね?」
「おう!任せとけ!」
まだまだ序盤ですが思ったことや疑問点がありましたら続々お寄せくださいm(__)m