9掘 : 火竜の襲撃
阿蘇のドワーフ王都への帰還中のことだった。
俺達は、オカメインコな女神様に向かえにきてもらい、
今はニ〇スのようにその背に乗って、上空より地上の景色を
眺めていた。
さあ、不思議な旅にでかけようぜ?
最近ゆっくりと滑空して飛ぶことも覚えた女神様のおかげで
飛行中に景色を眺める余裕もできた。
速度はジェット旅客機以上だけどね。
海が終わり、鹿児島の桜島上空を飛行中のことである。
こちらの桜島は煙がでいてないなー と眺めていると
桜島から何かが、こっちに向かって高速で飛んでくる。
気付くのが遅れた女神様は、そいつの接近を許してしまった。
首長7m、胴体部12m、尾長15mで全長34mの
赤いドラゴン、赤竜。
女神インコよりも長い。
細く引き締まった筋肉質の躰に手足。
人間でいうと8等身のようなシャープな頭と顎、
何より、赤く燃えるように見え、光を眩しく反射する全身を
包むその鱗は何か生物というより、機械的なもの、まさに輝く全身鎧
のボディースーツように感じられた。
赤竜は息を飲む間もなく接近し、女神インコ胸めがけて
襲いかかってきた。
やばい、がっちゃんが怪我をする。女神はどうでもいいが。
「私の女神様ーー! 抱ーーいーーてーーーーー!」
と抱きつこうとする。
よかった、ただの変態だ。安心できないけど、安心できる変態だ。
お約束であろう変態ドラゴンで展開が読めるなら、
がっちゃんに危険はない。許容しよう。
赤竜の急襲に気づいた女神インコはさらっと躱した。
飛べないころから、小屋に戻りたがらず、毎日追い掛け回し、
飛べるようになったら、更に追い掛け回すようになった
うちのオカメインコの機動性の前に、羽が生えた大トカゲなど
敵ではないわ!
うちーーのオカメは、世界いっち一ーー!
「あっち行ってーー!」
と女神インコは、赤竜の背後にまわり、首の後ろをカプリと噛んだ。
音が聞こえてくるようだった。
俺もときどき、がっちゃんをモフり過ぎて怒らせ、
指とかカプリと噛まれている。
あの小さなサイズでも簡単に指に穴を開けて出血させてくれる。
巨大なドラゴンといえ、今は、女神インコと同サイズ。
そもそも頭のでかいインコと嘴はやつの頭の倍はある。
女神補正もあり、強固な鱗も貫通したようだ。
「あふん!」
微妙な悲鳴を上げて、変態は、桜島へと逃げていった。
別の意味で危険を感じた俺は、そうそうに逃げてもらいたかった
のだが、オカメインコのオス闘争心に影響をうけたのか、
女神様は、ドラゴンを追っかけた。
喜んでいるのは、
「これで私もドラゴンスレイヤーに?」
とボケるソネットぐらいである。
赤竜は、桜島火山にある大きな横穴に逃げ込んだ。
女神様が諦めず、歩いて突入しようとするので、
尾羽を引っ張って止めた。
「いろいろな意味で危険な気がする。放置して帰ろう。
深入りしたくない。変態の仲間はいらないから!」
「今までは、この世界で力を使える体もなく、
あやつの気味の悪いさえずりを延々と聞かされ続けました。
今が復讐のチャンスですから一度お仕置きさせてください。
いうこと聞いてくれないとここに置いて帰りますよ?」
ナニをされていたのやらと思いつつ、がっちゃんが女神から
変な影響を受けていないか心配だったが、本当に置いて帰られ
そうだったので、穴の中について入ることにした。
うわ、熱いなにここ。
ゲームの火山ステージさながらです。
そこら中に溶岩溜りに引き出す火山性ガス。ホント帰りたい。
気にせずズンズン入っていく女神インコ。
穴の奥なんかもう溶岩の池ですよ。
温泉みたいに壁から新鮮なのが湧き出てるし。
溶岩池もボコボコ泡立ってる。
でも、行き止まりなのに、ドラゴンがいない。
出口はどこにもないのに。
突然、溶岩池が盛り上がり、ドラゴンが飛び出してきた。
『溶岩竜〇〇ドラゴン出現!』とか緊迫した重低音の音楽が
聞こえてきそうな迫力だったが、第一声が、咆哮ではなく、
「女神様、抱いてーーー!」
だった。どうやら、このドラゴン、雌の変態であるようだ。
雄ならもっと嫌だ。見た目は変わらんとしてもだ。
あの赤くメタリックの鱗が、SMの全身ボディースーツに
見えてきたぐらいだ。
女神様を信仰しているというよりこじらせて
ストーカーみたいである。女神様は、当然女性だ。
しかし、憑代であるがっちゃんは男の子なのである。
恐竜の子孫とも言われる鳥類のオカメインコと
でっかいトカゲのドラゴン。
まあ、交尾できないこともないか。
「寄るな--!」
女神インコはジャンプ一発、連続空中前蹴りをくらわせた。
荒ぶる鷹のようなポーズを取ろうとしてこけた。
止まり木ないと無理ですよ、そのポーズ。
赤竜は喜んでいるようだ。やはり、効いてはいるが
気持ちいいみたいだ。やはり、そういう性癖だったか。
女神様は肉体的接触は初めてだったのでご存知なかったようだ。
そもそもドラゴンに苦痛を与える存在がいないだろうから、
誰も気づかないだろうよ。Mどら とは。
いくらかダメージが通っても、
ドラゴンは溶岩池に潜って傷をいやしている。
なんか泡風呂に打たせ湯みたいに見えてきた。
「クドウ、もう帰りましょう。キリがありません。
銃であやつの頭を吹っ飛ばしてください」
また、置いて帰ると脅されたので、仕方ないので眼鏡犬をだして
ライフルで狙いをつける。
あの頑丈さなら、死なないんじゃないかなーと
軽く考え、頭を狙い撃つぜ?
ぷっしゅ!と赤竜の頭が消えました。どうしましょ。
女神インコはお気楽に、
「心配ありません」
と溶岩池に沈みゆく、赤竜の死骸に近寄っていく。
ドラゴンの死骸が沈みきって、しばらくすると、
白いくてデカい玉がひとつ浮いてきた。
女神様は、それを待っていたかのように咥え、
こっちに持ってくる。
「これは、あの赤竜の転生体です。こいつは死にませんから。
こいつは、この世界で神を騙る厨二病の雑用係2名の同僚です。
この通り私に刃向ってこそいませんでしたが、
仕事もせずに、私に四六時中語りかけてくれやがりました。
こいつのうざい性格もこれでリセットされたので、
あとは、この卵をもって帰って、ドワーフたちに預けて
ドワーフの巫女として押し付けましょう」
俺としてもありがたい。新メンバーが加わって間がないのに、
アホの子ソネット、影の薄いアネットというメンバー管理で
手がいっぱいなのだ。
クドウPとしては、よくあるM美女やババロリなどは、
今はプロデュースしてる暇がない。
押し付けられるならありがたい。
フラグだけ残して、余裕ができたらころに、回収しよう。
ちゃっちゃっと阿蘇の王都に帰り、ドワーフ王に
押し付けました。
ありがたい巫女ですよーと言っておいた。
今日中にもう一本の予定です。
短いですから、一話が。