35掘 : 新世紀エルドゥワンゲリオン
今から約230年前、我々の世界は歴史の変換点を迎えていた。
現在に至るまで綿綿と続く偉大なる発明がなされたのだ。
当時、人族とエルフ・ドワーフ・獣人族が未だ争っている最中、
現在の蒸気機関の原型がドワーフたちの手で開発された。
また、エルフたちによって多くの農産物の品種改良が行われ、
今に至る。何と言っても、エルフ・ドワーフ・獣人族の王族と神官
達の力により、この世界創造の女神のご光臨を成し遂げたことが
大きい。これにより、3種族は、人族との和睦にいたり、手に手を
取り合って現在までの発展を築き上げてきた。
この世界全体の発展という意味では、この頃から造られてきた
高速道路の有効性もあげられよう。エルフによって開発された
新たな農産物の大規模栽培による食の大規模供給は、そのまま
各種族の人口増加を引き起こした。当然、各種族の版図は広げ
ざるおえなかったわけだが、ドワーフの開発した蒸気自動車に
より、農産物の移送だけだなく、各種族の移動も従来の数十倍も
速くなっていたため、どのような地域に住もうと生活できる
ようになった。この蒸気自動車による高速移動を成し遂げたのが
高速道路であった。そして、この高速道路の技術は、一般道路にも
いかされ、現在では、未だ、非友好的な魔族が支配する北海道地域
以外には隅々まで張り巡らされ、農業に商業に生活に活かされて
いるのである。
一方、これらの要因による発展には、負の側面もあった。
ひとつは、急激な発展による人工増加による版図の拡大の
限界である。当時、魔族との戦いを避けるため、各種族は西日本
地域にのみ、その版図を広げていたのだが、この急激な人工増加
のため、魔族との接触の可能性もありうる東日本への版図拡大を
余儀なくされてしまった。当然、魔族との戦争に発展して
しまったわけである。
当時の魔族は、少数種族ながらも各個人の凄まじい戦闘力に
よって、我々その他の種族を圧倒していた。しかし、その頃、
女神様は、我々の苦難を見兼ね、各種族の勇者や加護を与えた武器
を賜わされた。その武器が現在の銃火器の原典である。
銃火器の威力は絶大だった。大量に複製された銃火器は、勇者を
先頭に戦場に投入され、下級魔族を軽々と倒して進んだ。しかし、
この銃火器は、あまりの殺傷力とその使用の簡易さのため、犯罪
にも使われることになってしまった。その結果、当時より、個人的
な製造・使用・所持ともに禁止されているがその犯罪使用は現在に
至るまで、あとを絶たない。
では、全ての銃火器を廃棄し、製造も禁止してはどうかという話
にもなろうが、そういうわけにはいかない。我々は未だ魔族と戦争
中であるからだ。東北地方全土から魔族の脅威を排し、魔族を
北海道まで押し戻した。しかし、ここまで進軍するまでに至り、
我々は多くの兵士を犠牲とした。そのため、重火器は更なる高性能
化・高威力化を求められた。更には、それを超える兵器の開発も
急がれた。
版図を東へと拡大するにあたり、徐々に中位そして高位の魔族と
の接触が多発したためである。これらの魔族は、もともとの魔力
保有が多いため、肉体強度がもともと高い上、その高魔力を
もって、更なる肉体強化または魔力障壁を使用してきた。
そのため、その時代の従来の銃火器ではダメージを与えることが
できなかったのである。銃火器は更に大型化による高威力化した
ライフルが開発されたが、これも中位魔族までしか通じず、
高位魔族には対抗できなかった。
そこで、開発されたのが、現代までその後継機が脈々と続く
機動兵器エルドゥワンゲリオンである。4メートル強の巨体にて
常人では扱えない高威力・高重量の武器を装備可能であり、
脚部に内蔵した蒸気機関にて高速移動も可能である。乗員は1名
ないし2名。エルフの開発した魔導筋肉とドワーフの開発した蒸気
シリンダにて各関節を高速・高出力で駆動させることが可能で
あり、その厚い装甲は、魔導被膜との相乗効果により、高位魔族の
攻撃すら耐えることも可能である。共同開発したエルフ・
ドワーフ・狼型獣人族の名を合わせ、この名が付けられたという。
このエルドゥワンゲリオン初号機は、今も首都大阪の通天閣研究所
に保管されているという。この機動兵器エルドゥワンゲリオンの
量産化により、我々は魔族を本州から追い払い東北全土に版図を
広げることができたのである。
そして、現在。我々は魔族との和平を望み、北海道へ調査部隊を
派兵している状態である。しかし、魔王はエルドゥワンが侵入でき
ないようにススキノ地下魔宮を造り上げ、我々の侵入を拒むばかり
か、戦力を蓄えては、時折り、ゲリラ行動にて調査部隊を襲撃して
きている。彼らの調査は、遅々として進んでいないと言えよう。
このように、現在も戦争中であるのだが、西日本を中心に活動
する我々は、それを実感することは少ない。この230年前の歴史
の転換点、その後、新世紀元年とされてより、現在の新世紀233
年に至るまで、我々人族・エルフ・ドワーフ・獣人族の血を受け継
ぐ者たちは、発展とそのために必要とされる魔族との戦争を繰り
返しているのである。
ーーーーー中央政府広報ーーーーー新世紀233年版158号
参考文献『新世紀エルドゥワンゲリオン開発史』
「この胡散くさい読み物はなに?」
あまりの内容に俺はアネットに問う。
「あなたが、いなかったこの200年の歴史のあらましです。
現政府の広報ですし、参考文献からアレですのであなたに関して
は扱いがアレですが」としれっと答えるアネットさん。
「扱いが酷いというどころではなく、扱いが全くないんですけど?
俺がやったこと何から何までパクられてるんですけど?」
「あなたがいなくなって200年。人族とエルフ・ドワーフ・獣人
族は仲良くやってきたわけですよ。混血も大分進んでますしね。
当然、多くの人の頭からは、二百数十年前には、人族が、我々と
敵対していたことは忘れ去られている黒歴史なわけです。
高速道路も蒸気自動車もあなたが持ち込んだ異世界の農産物も
銃火器から今ではエルドゥワンゲリオンと呼ばれるあの兵器も
本当は人族と戦うためのものとは、もはや口に出すわけには
いかなくなったわけです。おまけに、どうしても人族の繁殖力が
強すぎて、混血は進んでますが、やはり人族が占める割合が多い
ので、異世界人とはいえ、外見はただの人族と同じのあなたの
成果で広まってしまうと人族が調子こいた民族主義を掲げ始める
のは困るんで、我々3種族の成果にさせてもらって体面を保たせ
てもらったわけです」
「ひでえ、こっちに残るつもりはないからいいんだけど。
なんか釈然としないものがあるなー」
人とは所詮、こんなもんなのさ。
「そうそう。所詮この世界に根付かないなら、名誉とか
関係ないでしょう?それとも子孫残して、数々の名誉を
引き継がせますか?今なら私もソネットも積極的に
協力させてもらいますよ?」ふたりとも顔が近い近い!
「据え膳は食わぬは何とやらですが、無責任な子作りは
やめとくよ。後味が悪すぎる」
「そうですか、残念ですね。また気が変わったらいつでも
声をかけてください。あなたも、いいでしょ?ソネット」
「はい。それと大丈夫な日とか教えときましょうか?」
「結構です。アラスー女のいうそれは信用できん」
「アラスー?」
「なんでもない」
アラウンド スリー ハンドレッドとは言えん!




